日本橋高島屋で志鎌猛展、プラチナプリントで日本の四季を表現

【銀座新聞ニュース=2024年7月10日】国内百貨店業界売上高3位の日本橋高島屋S.C.(中央区日本橋2-4-1、03-3211-4111)は7月10日から29日まで本館6階美術画廊Xで志鎌猛さんによる個展「観照-雪月花 Platinum Palladium Prints」を開く。

日本橋高島屋で7月10日から29日まで開かれる志鎌猛さんの個展「観照-雪月花 Platinum Palladium Prints」に出品される「観照 Contemplation-雪 Snow」。

2008年よりプラチナパラジウムプリントに取り組んでいる写真家の志鎌猛さんが、美術画廊Xでは2回目となる個展を開く。今回は日本の四季の風雅を象徴する「雪月花」をテーマに、国内外で取材した新旧作品で構成する。

精霊が息づくような深い雪の森、夜の街の片隅で見上げる月、小さき世界たちを包摂する叢の花。志鎌猛さんはそれら現場の中に身を置き、自然と一体となった瞬間に一期一会のシャッターを切る。その時、雪、月、花、それぞれの奥にひそんでいた“花(宇宙の摂理)”が、凍結された詩となって刻印される、としている。

また、今回はサンディエゴ写真美術館名誉館長のデボラ・クロチコ(Deborah Klochko)さんをゲスト・キュレーターに迎え、志鎌猛さん作品の魅力をさらに引き出す。

「PGI」によると、プラチナパラジウムプリントは鉄塩の感光性を利用して、もっとも安定した金属のプラチナやパラジウムで画像を形成する印画技法で、主に紫外線域の光に感光するが、極めて感度が低いため、実際のプリント作業は太陽光や紫外線光源を使った密着焼きとなる。大きいサイズのプリントを作るためには、そのサイズのフィルムで撮影するか、拡大ネガを作る必要がある。

ただ、健康を損なう恐れのある薬品を使用するので、薬品を吸い込んだり、触れたりしないよう、適切な装備が必要となる。

「デジカメ Watch」によると、プラチナパラジウムプリント(白金印画法)は1873年に誕生、同じく1873年に誕生したゼラチンシルバープリント(銀塩印画法)と比べて耐久性が高く、強制劣化テストで500年もつと言われている。見た目の印象は、黒が濃く、潰れそうで潰れないシャドー部の階調性が特徴になっている。用紙の自由度が高いほか、現像液を反復使用できるなど環境負荷が少ない点もポイントとしている。

一般的にアナログプリントというと、真っ暗な部屋に赤いセーフライトを小さく灯しながら暗室作業を行う銀塩写真のイメージがあるが、プラチナプリントは紫外線で露光するため、太陽光を遮れば白熱灯のもとで作業できる。手元や足下が見えにくいといった不安感がない。

三菱王子紙販売の「PICTORICO」によると、プラチナパラジウムプリント用のネガ作りもフィルムからOHP用に開発された透明フィルムを使用してパソコンとインクジェットプリンターとスキャナーの組み合わせで明室で作れるとしている。また、ピクトリコはプラチナパラジウムプリントラボサービスを開始している。

志鎌猛さんは1948年東京都生まれ、1968年から1970年に青山学院大学に在籍し、その後、デザインの世界を経て写真家となり、1990年に山梨県明野村の森の一隅に土地を購入し、1992年から10年間、夫婦自らの手で南アルプスと八ヶ岳を望む小さな家を建て、その経験を通して、日本人としての遺伝子に潜んでいた自然への憧憬、畏怖の念が覚醒し、森の写真を撮りはじめる。

2002年より日本各地の深い森に分け入り、目に見えている風景の、その奥にある目に見えない世界を撮影し、2007年に写真集「森の襞(ひだ)-Silent Respiration of Forests(サイレント・レスピレーション・オブ・フォレスト)」を出版、2008年に新たなシリーズ「うつろいーEvanescence(エヴァネセンス)」を、森、野、蓮、庭園、ランドスケープの5部作として展開し、すべての制作過程を手作業で行う「プラチナ・パラジウムプリント」への取り組みをはじめる。

2009年に「うつろい」シリーズの5部作目として「ランドスケープ(Landscape)」に着手し、デンマークで個展、2010年よりプラチナ・パラジウムプリントの制作に手漉きの雁皮紙(がんぴし)を用いている。同年にアメリカの典型的風景の取材に着手、2011年にニューヨーク・セントラルパークを撮影、2012年にオランダ各地を取材し、オランダの「The Noorderlicht Photo Festival(オーロラ・フォトフェスティバル)」で入選、2013年にスコットランドの「第1回Jon Schueler Scholarship(ジョン・シューラー・スカラーシップ)」を受賞、スコットランド・スカイ島を撮影し、スペイン・ガリシア地方、フランス・フォンテーヌブロー、ノルマンディー地方を取材した。

2014年にスペインのア・コルーニャ現代美術館で個展、写真集「都市の森 Urban Forest」、写真集「美の谷 Valley of Beauty」、写真集「秘密の庭園 Il Giardino Segreto」などをまとめ、2019年に「Paris Photo」に出展、パリの蚤の市にて、アンティークのフィンガーボールに出会い、その100年前の丸いガラスの器の魔法により、シュールリアルな作品の制作をはじめる。2022年に写真集「観照 Contemplations(コンテンプレーション)」がフランスで出版されている。

開場時間は10時30分から19時30分(最終日は17時30分)。入場は無料。