【銀座新聞ニュース=2024年11月5日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・日本橋店(東京都中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は11月6日から12日まで3階ギャラリーで「京絞り寺田展-京絞りの手技と四季彩」を開く。
「有限会社 京絞り寺田」(京都市下京区新町通綾小路下る船鉾町391、075-353-0535)を運営する4代目京絞り作家の寺田豊さんはこの数年、植物染料を用いて草木染め絞り作品を制作してきたが、今回は新たに国産糸の「小石丸」や「岡谷絹工房」(長野県岡谷市中央町1-13-17、0266-24-2245)が手織りした生地を使って作品を作っている。希少な国産の絹の風合いと、本匹田(ほんびった)、帽子絞り(ぼうししぼり)、叢雲(群雲、むらくも)絞り、桶絞りなど、京絞りの技との「共演」を発表する。
また、今回は西陣織の帯会社で、「かはひらこ(大和言葉で蝶)」ブランドを主宰する「西陣坐佐織(にしじんざさおり)」(京都府京都市北区紫野西藤ノ森町12ー21、075-441-3007)が「西陣帯かはひらこ」を出品する。
「綾の手/綾の手紬染織工房」によると、「小石丸(こいしまる)は、蚕の品種のひとつで、宮中の御養蚕所(ごようさんじょ)における皇后御親蚕(こうごうごしんさん)に用いられる品種で、ひじょうに細く上質の糸を産みだす。蚕の中でもっとも細い糸をはき、艶があって張力が強く、けば立たないなどの優れた特性を持っているが、あまりにも小さく、繭糸量が少ないため、経済性にかけるとの理由で姿を消し、「幻の絹」と伝説化された。
現在の養蚕と絹製品のほとんどを占めているのは交雑種で、収量を増やすことを目的に育種されたもので、繭は大きく、糸は太くなる。絹は重さで取引されるため、ほとんどの養蚕家が交雑種を選んでいる。
「着物nuiとりどり」によると、本匹田(疋田)絞りは絞り技法の1つで、布目に対して45度の方向に、鹿の子の目を全体にびっしりと隙間なく詰めて染めたものをいう。鹿の背中のまだらに似ているところから、鹿の子絞りと呼ばれ、疋田鹿の子絞りとも呼ばれている。京都の絞りならではの最高の技術と熟練の技が発揮される絞り染めで、江戸時代には贅沢品として、奢侈禁止令で使用を禁じられたといわれている。
「きもの用語大全」によると、「帽子絞り」は絞りの技法のひとつで、絵模様を描くときに使われる。模様にする部分に、染色液が染み込まないように、芯を入れてビニール、竹皮、などで帽子のように覆って糸で巻き付ける。帽子絞りは、作る模様の大きさによって、小帽子絞り、中帽子絞り、大帽子絞りに分けられる。
小帽子絞りは模様の直径が2センチから3センチまでの極めて小さい部分を染め分けるのに用いられ、芯は使わずビニールを、麻糸で括り防染する。中帽子絞りは模様の直径が3センチ以上の部分を染め分けるのに用いられ、柄が正確に出なかったり、生地の裏側から染液が入るので、芯を裏側に入れて浸透を防ぐ。小帽子絞りと同じようにビニールで覆って防染する。現在では、芯に樹脂製のものが多いが、以前は木芯や新聞紙を細く硬く巻いた紙新が用いられた。大帽子絞りは中帽子絞り以上の大きな模様を染め分けるのに用いられ、ビニールで覆い、防染する。芯には木芯、樹脂製が多く用いられている。
「小杉染色」によると、「叢雲絞り(染め)」は伝統的な絞り柄の一種で、柄が筋雲のように見えることからこの名前が付いた。筒状にした生地をパイプに詰めてシワを作り、シワの山部分に色が付き、谷部分には色がつかないので白く残るといった染色技法で、シワの感覚や強弱で柄の大きさをある程度コントロールする。
「京都絞り工芸館」によると、「桶絞り」は染め分け技法の一種で、模様を大きく染め分ける時に用いる。特殊なヒノキ製の桶を使用し、染色する部分を桶の外に出し、防染する部分は桶の中に入れ、染め分けする。
「京絞り寺田」は1813(文化10)年に初代井筒屋治助(いづつや・じすけ)が京都寺町仏光寺で木版彫刻美術出版業として創業、1923年に6代寺田熊太郎が京鹿の子絞り製造卸「寺田商店」を設立、その後現社名に改称している。
寺田豊さんは1958年京都府京都市生まれ、1994年にフランス・パリ市主催フランスオートクチュール組合後援により「バガテル城美術館」の「燦功工房展」に招待出品、東京で個展を開催、1996年にフランス・パリ国立ギメ美術館が「雪に萩」を買い上げ、2002年に「布結人の会」を設立した。
イタリア・ミラノの美術学校と交流、2007年に歌舞伎役者の中村芝雀(しばじゃく)さんの「人魚の恋椿」の衣装を制作し、2008年に京都絞工芸展で知事賞と近畿経済産業局長賞、源氏物語千年紀「夢浮橋」の几帳を作成している。
9日14時から寺田豊さんと和文化コンシェルジュの古谷尚子さんが列品を解説するとともに、絞りを識るトークショーを開く。定員は30人で丸善・日本橋店の3階ギャラリー(03-6214-2001)まで予約する。
古谷尚子さんは1988年に世界文化社に入社、「Men’s Ex」編集部でメンズファッションを担当、書籍編集部で美容家のIKKO(イッコー)さんの単行本を3冊手がけ、その後「MISS Wedding(ミス ウエディング)」と「NEXTWEEKEND(ネクストウィークエンド)」の編集長を歴任し、「きものSalon」の編集長を10年担当し、「家庭画報」編集部部長も兼務し、2018年10月にスペシャル編集部の部長に就任、2021年に世界文化社を退社している。
開場時間は9時30分から20時30分(最終日は15時)。