【銀座新聞ニュース=2024年11月11日】ART FOR THOUGHT(中央区銀座8-10-4、和孝銀座8丁目ビル、03-6228-5922)は11月12日から30日まで小野海さんによる個展「FELT SENSE」を開く。
2022年に東京藝術大学大学院を修了した彫刻家の小野海(かい)さんは、画廊によると、今回は「滲(にじ)み合う色彩とホッチキスで繋ぎ合わされたフェルトによる本作は、精神と身体の曖昧さや拡張性を感じさせ、言語化の困難な身体感覚(FELT SENSE)を立ち上げる新作シリーズ」としている。
小野海さんはこれまで、立体的に知覚の存在を立ち上げてきた。「Prism(プリズム)」シリーズでは、不可視や知覚を彫刻的に構築し、かつそこに虹色の糸を張り巡らしていくことで、その知覚の多彩さや構築の無限性を、あるいはほつれや儚(はかな)さを表現し、それらを総体的な「知覚」としてきた。
キュレーションの田尾圭一郎さんは「FELT SENSE」シリーズで小野海さんは「Prism」との共通点として「知覚を立ち上げる」ことをめざしながら、そこに複数性と拡張性の共在、そして血肉のうごめく身体性に迫ることを試みたとしている。
「複数の色が滲んだフェルトと、それをぶっきらぼうに繋ぎ止めたホッチキス。ここに境界の曖昧さと拡張性が共在しており、現代に生きる私たちが複数の曖昧な分人を内包しながらも、IoB(Internet of Bodies=インターネットオブボディ)に象徴される身体拡張を試みていることを想起させる。事実、『FELT SENSE』とは心理学の分野で”言語化の困難な身体感覚”を指しており、不可視の知覚を立ち上げてきた小野が、その関心の対象を知覚主体としての身体へとフォーカスしていることもうかがえる」としている。
タグボートによると、小野海さんは主に人の暮らしに関わる動物をモチーフとした塑像による具象彫刻を制作し、その後はアクリル毛糸を使った作品「Prism Series(プリズムシリーズ)」を展開し、学部卒業時には視覚効果を用い、錯覚を引き起こすことで立体が平面に見える作品「Prism-Rainbow Mountain(プリズム・レインボー・マウンテン)」を制作した。さらに、日常生活の中で自然と人が交わる瞬間に着目し制作した巨大な彫刻として、大学院修了制作である「Prism-Aureola(プリズム・アウレオラ)」などを発表してきた。
小野海さんは1995年兵庫県生まれ、2014年に第39回こうべ市民展で神戸市民文化振興財団賞、2020年に東京藝術大学美術学部彫刻専攻を卒業、同年にAAC立体アートコンペで入選、2020年にアーツin丸の内で三菱地所賞を受賞、2022年に同大学大学院彫刻専攻を修了、同年から個展を開いている。
12日17時30分から19時まで、小野海さんも来場してオープニングレセプションを開く。冒頭30分ほど、小野海さんのトークがある。
開場時間は11時から19時(土曜日と最終日は17時)まで。日・月曜日と祝日は休み。