【銀座新聞ニュース=2024年11月23日】書店やレンタル店、フランチャイズ事業などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(渋谷区南平台町16-17、渋谷ガーデンタワー)グループの銀座 蔦屋書店(中央区銀座6-10-1、GINZA SIX、03-3575-7755)は11月23日から12月10日までアートスペース「FOAM CONTEMPORARY」「『天地以順動』河内國平・ヤノべケンジ 名匠たちの至高の共創」を開く。
河内國平(かわち・くにひら)さんという最高峰の技術を持った刀匠との出会いから気づきを得た美術家のヤノベケンジ(矢延憲司)さんが壮大なコンセプトを描き、匠の技を結集して生み出したコラボ作品を発表する。
蔦屋書店によると、現在、本物の刀剣をつくる刀匠やそのための材料、鍛刀場(たんとうば)は減少しており、大陸から伝わり、日本で洗練された1000年以上続く文化を失い、過去の名剣の技を深く見る眼を失うことにもなるという。
今回は、蔦屋書店としては「刀匠の技が現代においても人々の魂を揺さぶるものであることをお伝えする試み」としており、「日本の優れた技と精神性を継承していくための取り組みとして企画」したという。
タイトルにある「天地以順動(てんちいじゅんどう)」は「易経」(ウイキペディアなどによると、儒教のもっとも重要な5つの経典が五経で、漢代の紀元前2世紀に「詩」(詩経)、「書」(書経)、「礼」(礼記)、「楽」(楽経)、「易」(易経)、「春秋」の6つの経書があり、早くに失われた「楽」を除いた5つの経書をいう。孔子(BC552-BC479)以前に編まれた書物を原典とし、孔子の手を経て現在の形になったとされている)の一節で、「天地は順を以て動く」ので日月や四季が循環するように、聖人もまた道理に順(したが)って、動けば万民も悦服するという意味を持っている。
蔦屋書店は「二人の匠によってつくられた刀剣は、天と地、過去と現在を結び、世界の災いを払う願いが込められて」いるとしている。
また、今回、出品される「太刀《天地以順動》」は旅をして福を運ぶ「SHIP’S CAT(シップスキャット)」シリーズ、さらに生物のDNAやRNAに含まれる核酸塩基といった「生命の種(sperma、スペルマ)」が、地球外から隕石などによって飛来してきたという「パンスペルミア(panspermia)説」を元にし、GINZA SIXで展開している巨大インスタレーション「BIG CAT BANG(ビッグ・キャット・バング)」の世界観を、刀剣と漆工芸によって表現した。
刀身は深山に湧き立つ雲海のような刃文に光が差し込んでいるようで、それはまるで、河内國平さんが鍛刀場を構える、奈良県東吉野村に発生する雲と朝日のようでもある。刀身彫刻は、1000年の刀剣史上においても随一とも称される金工作家、柏木重光さん(1960年生まれ)によるもので、地球に降り立ち、「生命の種」を授け、人類の誕生を見守った「宇宙猫」が彫り込まれている。
「mugenkan.com」によると、河内國平さんは1941年大阪府で第14代刀匠の河内守國助の次男として生まれ、1964年に考古学者の末永雅雄(1897-1991)に師事し、1966年に関西大学法学部を卒業、人間国宝の宮入昭平(後に行平に改名、1913-1977)に入門、相州伝を習い、1972年に独立し、奈良県東吉野村平野に鍛刀場(たんとうじょう)を設立、1984年に人間国宝の隅谷正峯(すみたに・まさみね、1921-1998)に入門、備前伝を習う。
1988年に日本美術刀剣保存協会から最高位の刀匠の証、無鑑査認定を受け、以後、無鑑査で出品、1989年に短刀小品展の審査委員、1997年に東京藝術大学にて特別講義「日本刀製作」を行い、2005年に東京藝術大学大学院美術研究科非常勤講師、同年3月に奈良県無形文化財保持者に認定される。
2007年に伊勢神宮第62回式年遷宮で大刀・鉾を制作、2010年に厚労大臣卓越技能表彰(現代の名工)を受け、2013年に関西大学文学部非常勤講師(博物館実習)、2014年に「新作名刀展」で出展した「國平河内守國助(くにひらかわちのかみくにすけ)」で、刀剣界の最高賞と言われる「正宗賞」(太刀・刀の部門)を受賞、黄綬褒章、2015年に関西大学日本刀研究会が発足し、会長に就任、2016年に奈良新聞社文化賞、2017年に奈良県文化財保護功労者表彰、2019年に平成の名刀・名工大賞、旭日双光章を叙勲されている。
ヤノベケンジさんは1965年大阪府茨木市生まれ、1989年に京都市立芸術大学美術学部彫刻専攻を卒業、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートに短期留学、1991年に同大学大学院美術研究科を修了、1994年から1997年にドイツ・ベルリンに滞在、2008年に京都芸術大学教授兼ウルトラファクトリーのディレクターに就任している。
1990年に京都のアートスペース虹で、生理食塩水を入れたタンクの中へ鑑賞者が浸かり瞑想する、体験型作品「タンキング・マシーン」(現・金沢21世紀美術館所蔵)を発表、第1回キリンプラザ大阪コンテンポラリー・アワードで最優秀作品賞に選ばれ、1993年に五島記念文化財団の美術新人賞、1999年に咲くやこの花賞、2006年に第21回日本現代彫刻展で宇部興産賞、2009年に大阪文化賞、2011年に第21回公益信託タカシマヤ文化基金でタカシマヤ美術賞、2012年に京都府文化賞功労賞、2017年に第29回京都美術文化賞、2022年に第57回大阪市市民表彰(文化功労)などを受賞している。
23日はレセプションを開くため、17時に閉場する。
開場時間は11時から19時まで(最終日は18時)。入場は無料。月曜日は休み。