和光で石田知史、江里朋子、佐故龍平、室瀬智彌「工芸」展

【銀座新聞ニュース=2024年11月28日】国内時計業界第3位のセイコーホールディングス(中央区銀座1-26-1)グループの百貨店、和光(中央区銀座4-5-11、03-3562-2111)は11月28日から12月8日まで6階セイコーハウスホールで石田知史さんら4人の工芸作家による「Kogei Crossroads-過去、現在、そして未来へ」を開く。

和光で11月28日から12月8日まで開かれる「Kogei Crossroads(コウゲイ・クロスロード)-過去、現在、そして未来へ」に出品される石田知史さんの鋳込み硝子筥(はこ)「光、それは追憶の中にⅠ」(左)と江里朋子さんの截金絲綢飾筥(きりがね・しちゅう・かざりばこ)「天漢路」(撮影はいずれも野村知也さん)。

ガラスの石田知史(さとし)さん、截金(きりがね)の江里朋子(えり・ともこ)さん、金工の佐故龍平さん、漆芸の室瀬智彌さんの4人がそれぞれの道を進みながら現代の工芸の在り方と真摯に向きあい、時代と共鳴しあう作品を展示する。

和光によると、石田知史さんは古代メソポタミア(BC3500年の都市文明の始まりからBC539年の新バビロニア王国の滅亡までをいう、今のイラクの一部にあたる)が発祥の地とされるガラスの技法「パート・ド・ヴェール(フランス語でPate de verre、英語でPaste of Glass Technique)」(ガラスの粉末を型の中で熔融して成型するガラス工芸の技法の1つ)という技を用いて、かたちと文様が一体となった柔らかな趣きの「和のパート・ド・ヴェール」と言われる「鋳込み硝子(いこみがらす)」の継承とその新たな発展をめざしている。

江里朋子さんは仏教伝来(6世紀半ば)とともに伝えられたとされ、金箔やプラチナ箔を細長い線状や小片に切って文様をほどこす「截金」という仏教美術として認識された技を工芸の分野に取り入れ、器物の表面に優美で荘厳な世界を創作している。

佐故龍平さんは江戸時代に刀剣の鍔(つば)の装飾として考案され、色彩の異なる金属板を重ね合わせて接合し、表面を削っては打ち延ばす工程を繰り返すことで有機的な景色を呈する「杢目金(もくめがね)」を用い、表層の文様と造形との関係性を追求している。

同じく出品される佐故龍平さんの「杢目金打出縞鶴首壺(もくめがね・うちでしまつるくびつぼ)」(左、撮影は加藤雅俊さん)と室瀬智彌さんの蒔絵合子(まきえごうし)「内なるもの」(撮影は野村知也さん)。

室瀬智彌さんは漆芸の伝統的な技法の蒔絵や螺鈿(らでん、貝片を器物などの木地や漆面に装着して施す装飾法)、平文(ひょうもん、金、銀、錫などの金属の薄い板を文様の形に切って貼り付け、さらに漆を塗り平坦に研ぎ出す技法)を駆使して、漆という素材の持つ生命力、美しさを大切にし、自身の心象風景や生命の循環をテーマに、繊細かつ抒情的に表現している。

石田知史さんは1972年に京都府指定無形文化財「鋳込み硝子」保持者の石田亘(1938-2023)と、ガラス工芸作家の妻、征希(1943年生まれ)さんの長男として京都府京都市生まれ、1994年に東京ガラス工芸研究所を卒業、2001年に伝統工芸第七部会展で朝日新聞社、2003年に日本伝統工芸近畿展で新人奨励賞(2005年に京都府教育委員会教育長賞)、日本伝統工芸展で朝日新聞社賞(2006年に日本工芸会総裁賞)、2006年に第24回京都府文化賞で奨励賞を受賞した。

2007年に京都府美術工芸新鋭選抜展(京都府京都文化博物館)の工芸部門で最優秀賞、2008年に日本伝統工芸近畿展の鑑査委員(2009年、2010年、2012年にも鑑査委員)、2011年に日本伝統工芸展の鑑査委員、2013年に第33回伝統文化ポーラ賞で奨励賞(ポーラ文化財団)、「日本伝統工芸展60回記念 工芸からKOGEIへ」に選定出品し、2022年に英国・ウルバーハンプトン大学のインターナショナル・フェスティバル・オブ・ガラスにてマスタークラスの講師を務め、2023年に紫綬褒章を受賞している。現在、(公社)日本工芸会正会員。

江里朋子さんは1972年に父親の仏師の江里康慧(こうけい、1943年生まれ)さんと母親の截金の重要無形文化財保持者(人間国宝)の江里佐代子(1945-2007)の長女として京都府京都市生まれ、1992年に京都芸術短期大学美術専攻日本画コースを卒業、1994年に同短期大学専攻科日本画コースを修了、江里佐代子に師事し、2011年に第58回日本伝統工芸展で工芸会新人賞(2024年に工芸会奨励賞)。

2013年に第48回西部伝統工芸展で九州朝日放送賞(2019年に朝日新聞社大賞、2021年と2022年に日本工芸会西部支部長賞、2024年に福岡市長賞)、2019年に第27回伝統工芸諸工芸展で日本工芸会賞、2020年に京都府文化賞で奨励賞などを受賞している。現在、日本工芸会正会員。

佐故龍平さんは1976年岡山県玉野市生まれ、1999年に広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科を卒業、2002年に同大学大学院芸術学研究科博士前期課程を修了、2001年に全日本金銀創作展で日本商工会議所会頭賞、2003年に第50回日本伝統工芸展で東京都知事賞、2004年に岡山県芸術文化賞でグランプリ、2005年に福武文化奨励賞、2007年に岡山県文化奨励賞、伝統工芸中国展で広島県知事賞(2012年に岡山県知事賞、2018年に山陽新聞社賞)。

2008年に伝統工芸日本金工展で文化庁長官賞(2011年に特別記念賞、2012年に東京都教育委員会賞、2016年に朝日新聞社賞)、2009年に岡山県美術家育成Ⅰ氏賞で奨励賞、2013年にエネルギア美術賞、2016年に佐藤基金淡水翁賞で最優秀賞、2017年に「いまからまめさら2017」でアンスティチュ・フランセ日本賞などを受賞している。現在、日本工芸会正会員。

室瀬智彌さんは1982年東京都生まれ、父親が蒔絵の重要無形文化財保持者(人間国宝)の室瀬和美さん(1950年生まれ)、2000年に国際ロータリー青少年プログラムにてフィンランドに留学、2006年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業、2008年に石川県立輪島漆芸技術研修所専修科を卒業、漆芸家の小森邦衞さん(1945年生まれ)に師事し、2009年に目白漆芸文化財研究所にて漆工制作、文化財修理の仕事に従事した。

2013年にフィンランド・ヘルシンキにて個展、2017年に第34回日本伝統漆芸展で新人賞、第64回日本伝統工芸展で新人賞、現在、日本工芸会正会員、目白漆芸文化財研究所(新宿区下落合4-23-5)代表取締役。

開場時間は11時から19時(最終日は17時)まで。入場は無料。期間中は休みなし。