ポリネシア文化を背景にもつ監督を起用した「モアナ2」(409)

【ケイシーの映画冗報=2024年12月19日】「モアナと伝説の海2」(Moana 2)は美しい太平洋の島モトゥヌイで、かつては危険とされていた外洋に漕ぎ出して、島の危機を救った少女モアナ(声の出演はアウリイ・カルヴァーリョ=Aulii Cravalho、吹き替え版は屋比久知奈=やびく・ともな)が前作から3年後、彼女は海に出て、かつては交流があったとされる他の民族の痕跡を求めていました。

12月6日から一般公開されている「モアナと伝説の海2」((C)2024 Disney. All Rights Reserved.)。ウイキペディアによると、製作費が1億5000万ドル(1ドル=145円換算で約218億円)で、12月15日までの全世界興行収入が7億1700万ドル(約1040億円)。

そんなモアナは、島の民を率いる父から、後継者となることをもとめられます。幼い妹のシメア(声の出演はカリーシ・ランバート=ツダ=Khaleesi Lambert-Tsuda、吹き替え版は増留優梨愛=ますとめ・ゆりあ)や家族、一族の祝福のなかで父の立場を引き継ぐモアナでしたが、突然の嵐が巻き起こり、雷にうたれたモアナの意識のなかに、メッセージが伝えられます。

それは、神の怒りにふれて、分断されてしまった他の部族たちとの航路を復活させるというのもので、つなぐことでした。

島の仲間とともに大海原へ漕ぎだすモアナは、かつての冒険で一緒だった、風と海をあやつる半神半人のマウイ(声の出演はドウェイン・ジョンソン=Dwayne Johnson、吹き替え版は尾上松也=おのえ・まつや)とも合流し、失われた航路を見い出す冒険の船出となるのでした。

現在のアメリカは人口約3億3000万人の超大国ですが、1870年ごろの人口は3144万人とされています。1868年、明治維新のころの日本も3455万人とされているので、両国の人口規模はほぼ、一緒でした。

興行通信社によると、日本では6日から8日の初週1位、13日から15日の2週目2位、累計で観客動員が135万人、興行収入が18億4957万円だった。

その後、日本は朝鮮半島や中国、アメリカは南米地域や太平洋に勢力を拡大していくことになります。15世紀後半の大航海時代から世界各地に植民地をもったヨーロッパの国々からみれば、両国は新参者だったのです。

とうぜん、少なくない軋轢も生じていますが、異なった文化圏や民族が持つことになったのは事実なのです。

本作「モアナと伝説の海」シリーズは、南太平洋のポリネシア文化をベースとした“海洋の民”の世界と伝承をモチーフとしており、前作は世界興収で6億9000万ドル(2016年の為替相場1ドル=110円で換算すると約760億円)、日本でも51億円の大ヒットとなりました。

そして、単なるアイディアとしての扱いではなく、舞台となる南太平洋の自然や文化への尊敬、ポリネシアの伝統や文化への敬意や理解が全編にちりばめられています。

これは、主人公を助ける勇者マウイの声を担当するドゥエイン・ジョンソンをはじめ、本作に関わるスタッフ&キャストに、ポリネシア系のルーツを持つサモア系のメンバーが少なくないことも、強く影響しているのでしょう。

本作は3人の共同監督による作品ですが、サモア系をルーツに持つダナ・ルドゥー・ミラー(Dana Ledoux Miller)監督(共同脚本も)は、本作の原点について、
「太平洋にあるいろいろな言い伝えによると、さまざまな島から船乗りが集まる場所があったそうなんです。つまり、人々がわざわざ遠くからお互いを探しに集まっていたんですね。その概念から想像が膨らんでいきました」と語っています。

同様にサモア系であるデビッド・デリック・ジュニア(David Derrick Jr.)監督はモアナの冒険への気持ちについてこう述べています。
「古今東西、人はいくつになってもどこにいようと、常に成長と変化を続けるものだと思うんです。(中略)きっと島の外のどこかに民がもっといる。そう思いながら、ついにその証が見つかると、自らの問いへの答えを求めて、先祖が成し得なかったほどの大航海へと旅立たずにはいられなくなるんです」(いずれもパンフレットより)

ディズニーのアニメ映画の多くは、公開される国や地域に合わせて各国語での吹き替え版が製作されます。音源を製作する日本サイドではなく、アメリカ本国でのオーディションにより決定されるのです。

本作のようなミュージカル作品ですと、歌唱力も必須となりますから、通常のアニメ作品とは異なった選抜要素や判断基準があるかもしれません。さらに前作では、ディズニーのアニメとしてはじめて、タヒチ語の吹き替え版もつくられています。このあたりにも、南太平洋の文化圏に対する意識の高さが感じられるのではないでしょうか。

そして、第1作目の実写化作品も、2026年の公開予定で撮影されていて、こちらでもマウイ役には、アニメとおなじドゥエイン・ジョンソンなのです。これだけの大作の主役としてアニメと実写を同一の人物が演じるというのは、記憶にないことです。

こちらの実写作品の仕上がりも楽しみですが、本作を観るかぎり、アニメの3作めも、期待がふくらんできます。次回は、「ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:ウイキペディアによると、「モアナと伝説の海2」はハワイ語、マオリ語、タヒチ語、サモア語の4つのポリネシア言語で特別吹き替え版が制作された。今回は前作のハワイ語、マオリ語、タヒチ語のほかに、サモア語版が初めて制作された。