【銀座新聞ニュース=2025年3月26日】国内最大手の百貨店グループ、三越伊勢丹ホールディングス(新宿区新宿5-16-10)傘下の三越伊勢丹(新宿区新宿3-14-1)が運営する銀座三越(中央区銀座4-6-16、03-3562-1111)は3月28日から4月27日まで新館7階催物会場などで「帝国劇場展ーTHE WORLD OF IMPERIAL THEATRE」を開く。
1911(明治44)年3月1日に開場した帝国劇場(帝劇、千代田区丸の内3-1-1)は1964年に解体され、1966年に2代目(国際ビルヂングとの一体型複合ビル)が開場し、以来、59年目となる2025年2月28日をもって一時休館し、共同所有する出光美術館、「国際ビル」を所有する三菱地所と共同で一体的に建て替えることになった。
三越ではこの歴史ある日本演劇界の殿堂「帝国劇場」の歴史を振り返るパネルや映像を展示し、実際に使用された看板や座席を使ったフォトスポットを設置(オーケストラピットが設置されるため観覧席として使用されることが少ない1階XA列の座席を展示)するほか、オリジナルグッズを販売する。また、出演者などの着到板の展示、帝劇にあった貴賓室や座長の楽屋「5-1」を再現する。
「Applause&Future(アプローズ&ヒューチャー)」のブースでは、帝劇で上演された演目で実際に着用された衣裳を展示する。また、最後の公演となった「CONCERT(コンサート)『THE BEST New HISTORY COMING(ザ・ベスト・ニュー・ヒストリー・カミング)』」の出演者から寄せられた、帝劇への直筆メッセージを公開する。
また、「フォトブース」ではオリジナルデザインの背景とフレームで写真を撮影し、来場の記念として持ち帰れる。
貴賓室を再現したコーナーでは、「帝国劇場アニバーサリーブック NEW HISTORY COMING」に収録されている、「レ・ミゼラブル」ゆかりのメンバーによる座談会の映像を公開する。映像は会期の前半と後半で入れ替え、3月28日から4月12日は、初演(1987年6月)の主人公の「ジャン・バルジャン (Jean Valjean)」役やジャベール警部 (Inspecteur Javert)役を務めた鹿賀丈史さん(1950年生まれ)、2024年から2025年公演のジャン・バルジャン役の吉原光夫さん(1978年生まれ)、佐藤隆紀さん(1986年生まれ)、飯田洋輔さん(1984年生まれ)による座談会を公開する。
4月13日から27日は、初演のジャン・バルジャン役、ジャベール役の滝田栄さん(1950年生まれ)、コゼット(Cosette)の母親「ファンティーヌ (Fantine)」役の岩崎宏美さん(1958年生まれ)、宿屋(安料理屋)を経営する小悪党のテナルディエ(Thenardier)の長女「エポニーヌ (Eponine)」役の島田歌穂さん(1963年生まれ)と「レ・ミゼラブル」音楽監督の山口琇也(ひでや)さん(1949年生まれ)による座談会の映像を上映する。
会期中、本館7階の銀座シャンデリアスカイでは、帝劇で上演されたミュージカル53作品のタイトルを「着到板」にして掲示し、フォトスポットとしても自由に撮影できる。
新館9階の銀座テラス テラスルームに劇場内のカフェ「Cafe IMPERIAL(カフェインペリアル)」を期間限定で復活させる。店内では実際に「Cafe IMPERIAL」で使われていたイスとテーブルを使用し、実際のメニューを味わえる。ドリンクを注文すると、帝劇オリジナルスプーンやコースターなどのプレゼントもある。テイクアウトメニューや帝劇オリジナル菓子などのおみやげ販売コーナーもある。イートインを利用すると、帝劇展オリジナルステッカー2枚がもらえる。
座席は事前予約制(席料は1テーブル2人で1100円、40分制)で、ドリンク「モーツァルト ホット/アイス」(イートイン特典はホット:帝劇スプーン付、アイス:帝劇コースター付、イートインで各税込663円、テイクアウト各651円)、ドリンク「シシィ ホット/アイス」(特典は同じ、価格も同じ)、イートインのみの「メロンソーダ」(特典は帝劇コースター付、1019円)。
「帝劇名物幻の豚まん」(特典なしでイートイン510円、テイクアウト501円)、ミックスサンド「赤トンボ」(特典なしで、AとBがあり、いずれもイートイン560円、テイクアウト550円)、イートインのみのアップルパイ「グラニースミス」(特典は帝劇フォーク付、917円)などがある。
ほかに、イートインでケーキ、マカロン、アップルパイのいずれかを注文すると、帝劇オリジナルフォークを1点もらえる。
また、2000年6月の「エリザベート」帝劇公演で初舞台を踏んだ井上芳雄さん(1979年生まれ)と1984年に「屋根の上のヴァイオリン弾き」でアンサンブルキャストとして帝劇に初出演した森公美子(くみこ)さん(1959年生まれ)がアンバサダーに就任する。
ウイキペディアによると、帝国劇場(帝劇)は1911(明治44)年3月1日に開場し、4日にこけら落しの公演が開演された。1940(昭和15)年から東宝が運営している。収容人数は1897人。
帝国劇場は初代内閣総理大臣の伊藤博文(1841-1909)、三井物産の創始者・益田孝(1848-1938)の次男で「太郎冠者」の筆名で多くの喜劇や流行歌を作った益田太郎(1875-1953)、帝劇の専務取締役を務め、日本航空の初代社長にも就任した西野恵之助(1864-1945)、実業家の渋沢栄一(1840-1931)、日本郵船社長、会長、東京海上火災保険会社会長などを歴任し、三菱グループの大番頭といわれた荘田平五郎(1847-1922)。
福澤諭吉(1835-1901)の次男で、時事新報の社長などを務めた福澤捨次郎(1865-1926)、帝劇の取締役を務め、福澤諭吉の婿養子、「電気王」や「電力王」と呼ばれた福澤桃介(1868-1938)、三越百貨店を創業した日比翁助(1860-1931)、帝劇の取締役を務め、麒麟麦酒の会長を歴任した田中常徳(つねのり、1860-1923)、「時刻表の父」として知られ、帝劇専務も務めた手塚猛昌(たけまさ、1853-1932)が発起人となり、大倉財閥の設立者の大倉喜八郎(1837-1928)が采配を振って設立された西洋式演劇劇場で、創立当時は、横河民輔(1864-1945)設計によるルネサンス建築様式の劇場だった。
1912(大正元)年にイタリア人のジョヴァンニ・ヴィットーリオ・ローシー(Giovanni Vittorio Rosi、1867-1940)を招いて歌劇・バレエを上演したほか、6代目尾上梅幸(おのえ・ばいこう、1870-1934)、7代目松本幸四郎(1870-1949)、7代目澤村宗十郎(1875-1949)らを専属俳優とし、歌舞伎やシェイクスピア劇などを上演した。「今日は帝劇、明日は三越」という宣伝文句は流行語にもなり、消費時代の幕開けを象徴する言葉として定着した。
川上貞奴(さだやっこ、1871-1946)が創設した帝国女優養成所を引き継ぐ形で帝国劇場付属技芸学校を設立し、1910(明治43)年卒業の第1期生をはじめ、多くの女優を生んだ。1923(大正12)年の関東大震災では隣接する警視庁から出た火災により外郭を残して焼け落ちたが、横河民輔により改修され、1924(大正13)年に再開した。1930(昭和5)年に松竹の経営となり、間もなく洋画封切館に転用。SYチェーン(松竹洋画系)の基幹劇場となった。
1939(昭和14)年に運営会社を東宝が合併し、1940(昭和15)年に松竹の賃借期限が切れると共に東宝の手により元の演劇主体の興行形態に戻した。同年9月16日からは内閣情報部が庁舎として利用することとなり、前の日の15日の新国劇の上演をもって休演となった。大東亜戦争時は1944(昭和19)年1月頃からは、地下食堂が一般人でも利用できる雑炊食堂として供された。
戦後の最初の公演は1945年10月の6世尾上菊五郎(1885-1949)一座の「銀座復興」公演だった。1955年に舞台に巨大映画スクリーン・シネラマが設置され、再びシネラマ主体の洋画ロードショー用の映画館に転じ、1964年から1965年にかけて「アラビアのロレンス」を最後に上映を終了し、解体された。
1966年に再開場され、国際ビルヂングとの一体型複合ビルの建物は、谷口吉郎(よしろう、1904-1979)の設計で1966年9月29日に落成した。ビルの一部は落成当時から、石油業界大手の出光興産が本社として使用し、最上階は出光佐三(1885-1981)による古美術コレクションを展示する「出光美術館東京館」とされた(出光興産は2021年に大手町に移転)。廻り舞台は大小4つの迫りが内部に設置され、直径16.4メートル、高さ22メートルあって、地上1階から地下6階までを貫いた。
年間10作品程度を上演し、1969年から1984年までは「日本レコード大賞」の発表会会場として使われ、大晦日に行なわれる年末ジャンボ宝くじの抽せん会場としても知られた(1977年、1997年から1999年、2001年から2005年)
2022年9月27日に東宝はビルが竣工から約56年を経過したことなどから、共同所有する出光美術館及び「国際ビル」を所有する三菱地所と共同して、一体的に建て替えを発表し、2025年2月28日をもって休館した。東宝は2025年3月から明治座で複数年・複数月上演の貸館契約を締結している。
解体をはじめ、3代目帝劇の建設は大林組が担当し、4月から「(仮称)丸の内3-1プロジェクト既存建物解体工事」を手掛ける。
3代目劇場は2030年度に竣工予定で、敷地は約9900平方メートル、建物は地上29階、高さ155メートル、地下4階の構成で、延べ床面積が17万6000平方メートル、このうちの地上4階から地下2階に劇場が入る。出光美術館が地上4階と5階に入る。設計は建築家で法政大学教授の小堀哲夫さん(1971年生まれ)が手掛け、「THE VEIL(ザ・ベール)」のコンセプトの元、自然光を採り入れるなど日比谷周辺の自然環境を生かし、「未来を見つめた日本らしさ」を体現した心地よい空間を目指すとしている。
2代目と異なる点として、劇場の配置を従来から90度回転し、エントランスの正面に客席を配置、開演・終演時の混雑緩和に配慮した導線計画も行う。客席数は従来とほぼ同規模の1900席を確保しながら、ゆとりのある座席にする。
舞台空間も従来と同規模を確保しつつ、舞台袖上部にはテクニカルギャラリーを確保、さらに世界レベルの最先端舞台技術を導入する。また、ロビー・ホワイエ空間の拡大、カフェやバーの充実、トイレなどのユーティリティ機能の拡充、一般の人も利用できるカフェなどの併設、バリアフリーへの配慮、地下鉄コンコース直結の地下劇場ロビーも新設する。
劇場以外の建物全体としては 「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン2023」に沿った形で設計、歴史的な31メートル(100尺)の軒線を継承し、ハイグレードオフィスが整備される高層部は一定のセットバックを行うことで低層部の既存の軒線との連続性を確保した上で、低層部の屋上には皇居外苑を望む一般にも開放されるテラスを整備する。
低層部には上部に出光美術館を再整備し、美術館としての機能強化を図るほか、商業ゾーンを設け、地下鉄有楽町駅・日比谷駅と合わせた地下の駅まち空間も形成、さらにJR有楽町駅方面へ繋ぐ東西地下通路も整備する。
開場時間は10時から20時(最終日は17時)。3月28日はエムアイカード プラス会員の特別招待日。チケットは前売りがカード会員3850円、一般グッズ付き(帝国劇場展オリジナルクリアファイル、A4版、もしくは着到板キーホルダー)が3500円、一般チケットが2800円、当日は一般グッズ付きが3750円、一般チケットが3000円。未就学児は保護者1人につき2人まで無料。