【銀座新聞ニュース=2025年5月4日】国内最大手の信用調査会社、帝国データバンク(港区南青山2-5-20、03-5775-3000)はこのほど、「ステーキ店」の倒産動向を発表した。
それによると、2024年に判明したステーキ店の倒産件数は13件で、2023年の8件を上回り、2年連続で増加し、初めて10件を超え、過去最多となった。
2010年以降のステーキ店の倒産件数をみると、2010年4件、2011年5件、2012年5件、2013年4件、2014年2件、2015年3件、2016年6件、2017年5件、2018年3件、2019年6件、2020年9件、2021年6件、2022年4件、2023年8件と10店以下にとどまっていた。帝国データバンクではさらに、個人営業など小規模店の廃業や閉店を含めると、実際にはより多くのステーキ店が市場から撤退したとみられる、としている。
ステーキ店の経営を苦しめている大きな要因として、ステーキ店で多く使用される外国産牛肉の値上がりに歯止めがかからない点にある。総務省の小売物価統計調査を基に帝国データバンクが推計したところ、アメリカ産やオーストラリア産をはじめとする輸入牛肉の価格は、2024年の平均で100グラムあたり366円(店頭価格ベース)と、コロナ禍前の2019年比で24%値上がりした。
円安により輸入コストが増加したことに加え、リーズナブルだったアメリカ産では、干ばつによる飼料価格の上昇などで生産コストが上がったことも、牛肉の価格高騰が止まらない要因となっている。セットメニューで提供されるサラダや付け合わせの野菜でも価格の高騰が続き、ブロッコリーは5年間で約2割、ニンジンやジャガイモでは4割に迫る値上がりとなっている。
こうしたなか、他の外食産業では割高な輸入牛肉を取り扱うメニューを減らし、相対的に割安なチキンステーキなど、代替メニューを拡充することで価格を抑え、販促につなげるケースもみられる。
ただ、ビーフステーキを目当てに来店する顧客が多いステーキ店ではそうした施策も容易ではないうえ、もともと他の外食メニューに比べて割高なことから値上げも難しい。結果的に、低価格を売りとしたステーキ店や小規模店では、値上げ難と仕入れ価格の上昇ペースに耐えられず、物価高で高価な外食などを敬遠する消費者の節約志向も重なって、事業継続を断念したケースは少なくないとみられる。
ステーキセットの主な原材料価格を2019年比でみると、輸入牛肉は100グラムあたり366円(2019年比24%増)、ジャガイモは1キログラムで460円(同36%増)、ブロッコリーは1キログラムで775円(同21%増)、ニンジンは1キログラム495円(同38%増)となっている。
とくに、メインとなる輸入牛肉はアメリカ産で、アメリカのトランプ(Donald John Trump、1946年生まれ)大統領による関税政策などで一層の仕入れコスト増が見込まれ、価格が低下する見通しは立っていない。
足元では、輸入牛肉の調達先をアメリカ産より安いオーストラリアやこれまで取り扱いがなかったアルゼンチンなど南アメリカにも拡大するほか、国産牛肉も取り扱うなど、割安な牛肉の調達を模索する動きもある。ただ、「割安な牛肉」を使用したステーキのビジネスモデルは転換を余儀なくされており、リーズナブルな価格で楽しめたステーキ店に大きな試練が訪れている。
今回の「ステーキ店」の倒産動向については、集計期間は2024年1月から2024年12月31日までに、負債1000万円以上、法的整理による倒産件数を調べた。