【銀座新聞ニュース=2025年9月5日】タグボート(中央区日本橋富沢町7-1、ザ・パークレックス人形町、03-5645-3242)はこのほど、ディスプレイデザイン会社のスペース(中央区日本橋人形町3-9-4)と共同で「スペース・アネックス」(中央区日本橋人形町3-6-9、SPACE ANNEX、03-5645-3242)の1階と地下1階にギャラリー「アート解放区 人形町」を開設した。
オープニング展として9月3日から26日までグループ展「UNLABLED(アンラベルド)」を開いている。タグボートは「ラベルに縛られない、新進アーティストの自由な表現を示唆」している。このため、「未知の才能たちの輪郭をまだ定めない姿勢を表現」する。
「アート解放区 人形町」は、「若手アーティストによる多彩な表現を通じて、アートと地域文化が共鳴し、新たな創造的交流が生まれる場を創出」する場とし、「歴史と伝統を受け継ぐ人形町の街並みに、若い感性とアートの息吹を吹き込」むとしている。
1階では、新田享一(にった・きょういち)さん、Kamihasami(カミハサミ)さん、ホリグチシンゴ(堀口慎吾)さん、北村環(たまき)さん、小松良明さんの5人の作品を展示している。
地下1階では、工藤千紘さん、井口エリーさん、中島友太さん、水野遥介さん、奥山鼓太郎さん、土屋靖之さん、アンタカンタ(安藤貴康)さん、VIKI(ヴィキ)さん、小木曽ウェイツ恭子さんの9人の作品を展示している。
新田享一さんはキャンバスや紙といった支持体を折ることで平面と立体、絵画と彫刻、内と外の境界をなくし、支持体が表現の土台という役割を越えて表面に可視化し直感的に作品表現へ参加している。平面絵画の枠を超え、日本古来のあそびである「折り紙」を作品に取り入れることで絵画の新たなありかたを追及している。
Kamihasamiさんは立体イラストレーターで、紙のさまざまなテクスチャや色、光を当てた時の優しい陰影に魅せられ、紙を使った立体作品を制作し、書籍の装丁や広告美術に、紙の立体作品を提供する傍ら、新たな表現の探求のためアート作品を制作している。
ホリグチシンゴさんは作品制作の初期段階では、まず厚紙で作ったブロックやドローイングを描いた布などを組み合わせて構成した建物や街の模型を創る。次にそれらを撮影した写真の基本データを一旦パソコンに取り込み、そのパソコンに描かれた無機質な姿をキャンバスや紙の上に移動させ、その上に着色して絵画として描いている。写真に撮られた立体はパソコン上ではデータとして描かれたイメージでしかなく、これを彼自身が再度、線や色を加えることで再び手触り感のある物体としてよみがえる。
厚紙で作ったブロックの模型を見て、それをそのままキャンバス上に表現するのではなく、あえて写真撮りとパソコンとを経由することで無機質な表層のデータだけを抜き取り、そこから通常ではありえないような空想の世界観を創っている。
北村環さんは美術手帖によると、描く対象をデジタルで色分解し、色の網点を手描きすることで不揃いな色の集合体がぼやけた幻影のように見える仕掛けが施されている。これらの表現はメディアから流れてくる情報のみで先入観を持つ「人間の本能」への問いかけとなっており、鑑賞者へ「見ること」とは何かと語りかける。
小松良明さんは公式サイトによると、「日本の伝統文化やポップカルチャーの要素を借用し、形態・文脈を再構成し発展させることで、鑑賞者に既存の価値観や文化を問いかける活動をしている。制作において物体が持つ造形やブランド・歴史・コンテンツに着目し、作品の多くはヒーローや怪獣を模したソフトビニール人形や、ゲームカセットなどのオブジェクトを素材として構成しており、それらが持つ象徴性や文脈を活かしながら、新たな表現を模索している」としている。
工藤千紘さんは「柔らかなタッチと滲むような色彩で描かれる人物像には、優しさや穏やかさだけでなく、どこか不安や怖さを感じさせる静かな迫力があります。誰もが抱える不完全さや揺らぎが生む魅力を描き出すことで、私たちに内側の深い真実をそっと映し出し」ている。
井口エリーさんは、「一見スタイリッシュな外観を持ちながら、その裏には普段見えない人間の本能や感情が揺れ動く様子が隠されている」という。「この『獣』のような本能が姿を現す、ふとした瞬間をとらえる作品は、人間の『二面性』を観る者に鮮やかに伝え」る。
また、井口エリーさんが頻繁に取り上げるモチーフに「ハイヒール」があり、「それは現代を生き抜く女性の姿を象徴するものでありながら、怒りや不満といった内面的な感情が隠されている様子を表現して」おり、それらの感情は「コントロールしきれない人間の本性」であり、「繕(つくろ)われた外見と内なる本能の間には葛藤や緊張感が生まれます。そんな瞬間の人間らしさや未開の熱情を彼女は大胆に表現し、鑑賞者の心を深く惹きつける」としている。
中島友太さんは美術手帖によると、「ネットで拾った画像や、漫画、古本、アニメ、雑誌の切り抜きなどをまとめたフォルダの中から、琴線に触れたオブジェクトをセレクトし、デジタル上でコラージュ。自身のフィルターを通しインプットとアウトプットを繰り返し、ペインティングや再コラージュをしてキャンバスに落としこんで」制作している。
水野遥介さんは主に人物や、人物を含む空間を手掛かりに制作しており、イメージをあえて省略し、断片的な現実やその曖昧さを反映させることで、新たな視点や解釈を生み出すことを模索している。
奥山鼓太郎さんは絵具そのものの「物質性」と「絵画としての構造」を追求しており、絵具の物質が「イメージ」へと変容していく瞬間を映し出し、鑑賞者に問いを投げかけている。作品は「見ること」と「イメージを捉えること」の本質を改めて考えさせてくれ、アートが単なる視覚情報にとどまらない「実在」としての力を持つことを感じさせ、素材そのものが持つ「重み」や「温かみ」が息づき、絵画が持つ本来の魅力が表現されている。
土屋靖之さんは文房具が主役となる作品を制作している。デジタル化によってビジネスの現場で存在感を失いつつある文房具たちに、アートという新たな活躍の舞台を提供している。
アンタカンタさんは自身の経験から「思考が現実になる世界」をテーマに、独自の表現スタイル「ネオ・クロワゾニスム(Neo-Cloisonnism)」を追求している。その作品は油絵の具を使った古典的な技法で、輪郭線を強調し、遠近法やグラデーションを省いたマンガのような表現が特徴で、19世紀フランス絵画に特に見られた太く暗い輪郭線と平坦な色面構成という旧来の「クロワゾニスム」という手法を現代に当てはめ、自身のスタイルを「ネオ・クロワゾニスム」として現代アートに位置づけている。
VIKIさんは「記憶のリサイクル」をテーマとして制作しており、日本全国からレシートを集め、2015年からアイロンとレシートを使ったライブアートパフォーマンスも開始、熱を与えると変色する感熱紙の特徴を生かし、熱でドローイングする。ほか、壁画、油画、インスタレーション、グラフィックデザインなども行っている。。、
小木曽ウェイツ恭子さんは家族に囲まれた生活の一部を切り取ったものが多く、特に自分の子どもをモチーフとして描いている絵にはほのぼのとした優しさを感じるとしている。本人は「家族に囲まれた生活の、取るに足らない一場面、一場面がそのまま絵の題材になっている。絵を描くスタジオなどないから、時間も空間も生活の隙間で制作している。いつかは、何か壮大なコンセプトを持って、人間の本質を哲学的に探求し、巨大なキャンバスに絵の具を思いきりぶつけてみたい、といった憧れもあるが、瑣末な生活の色々に追われているせいか、身近で小さな物にしか題材を見つけられずにいる。少々残念な気もするが、私はこれでいいのだ、という気もする」としている。
新田享一さんは1997年東京都生まれ、2022年に東京藝術大学美術学部日本画専攻を卒業している。2021年に安宅賞、2022年に台東区長賞、サロン・ド・プランタン賞を受賞している。
Kamihasamiさんは東京理科大学電気工学科を卒業、桑沢デザイン研究所を卒業している。2015年に紙わざ大賞で入選(2016年に王子エフテック賞、2017年に入選)、2019年にEmerging Tokyoで入賞している。
ホリグチシンゴさんは1993年京都府生まれ、2018年に多摩美術大学大学院修士課程日本画研究領域を修了している。2018年に「ギャラリーヘ行こう2018」で数寄和賞、「Independent Tokyo TAGBOAT」で特別賞、「第13回大黒屋現代アート公募展」で入選している。
北村環さんは1972年石川県金沢市生まれ、1995年に東京パース造形学院を卒業、建築デザイン会社に5年勤め、2000年にフリーのイラストレーターとして活動し、現在は画家として作品を制作、2021年に「The16th TAGBOAT AWARD」で入選、2020年に「Independent Tokyo 2020」で審査員特別賞を受賞している。
小松良明さんは1983年神奈川県横浜市生まれ、横浜美術短期大学専攻科を卒業、2023年に「Independent Tokyo 2023」でタグボート特別賞・審査員特別賞、2024年に「J-COLLABO第6回年次アート展」でOSSAMギャラリー賞を受賞、2021年から2024年に「MONSTER Exhibition」で入賞している。
工藤千紘さんは1989年青森県生まれ、2014年に名古屋芸術大学大学院洋画研究を修了、2009年に「第4回三菱商事アート・ゲート・プログラム」で入選、「名古屋芸術大学卒業制作展」で優秀賞、「CBC 翔け!二十歳の記憶展」でCBC賞、名古屋芸術大学理事長賞、2016年に「FACE2016損保ジャパン日本興亜美術賞展」で入選(2018年も入選)、同年に第11回TAGBOAT AWARDで入選、ウルトラマンインスパイア展で入選、2018年にシェル美術賞2018で入選、2014年から個展を開いている。、
井口エリーさんは1989年愛知県名古屋市生まれ、2015年に愛知県立芸術大学大学院美術研究科彫刻領域を修了している。2014年に「Tokyo Midtown Award 2014」で優秀賞とオーディエンス賞、2015年に第3回Art in the office CCC AWARDS入選、2016年に「LUMINE meets ART AWARD 2016」で準グランプリ、2020年に「第15回TAGBOAT AWARD」で準グランプリを受賞している。
中島友太さんは1993年大阪府生まれ、大阪デザイナー学院を卒業、2021年に「紀陽銀行 presents UNKNONWN ASIA 2021」で審査員賞と徳光健治賞を受賞している。
水野遥介さんは2002年千葉県生まれ、2023年に進級制作展で諏訪敦賞、2025年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻を卒業、卒業・修了制作展で優秀賞、現在、同大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修士課程に在籍している。
奥山鼓太郎さんは1997年東京都生まれ、2021年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業、2024年に同大学大学院美術研究科絵画専攻油画技法・材料分野を修了、現在、同大学大学院博士後期課程に在学している。2020年にTURNER AWARD 2020で未来賞、2021年に卒業制作で群馬県みなかみ町長賞を受賞している。
土屋靖之さんは広島県生まれ、東京大学教育学部を卒業、2021年にUNKNOWN ASIA 2021でレビュワー賞、飯野マサリ賞、カルドネル佐枝賞、2024年にEmerging Artists Osaka 2024でターナー色彩賞、2024年にIndependent Tokyo 2024でタグボート特別賞を受賞している。
アンタカンタさんは1962年東京都生まれ、1985年に玉川大学文学部芸術学科を卒業、1990年に毎日現代日本美術展で佳作賞(1991年も佳作賞)、1991年にヤン・フート「現代美術ー日大学展」で入選、2011年にTOYOTA SOCIAL APP AWARDでゴールドに認定、2015年から絵画の制作を開始、2019年にアートオリンピア2019で準佳作、2020年にFACE展2020損保ジャパン日本興亜美術賞展で入選(2022年も入選)、第29回全日本アートサロン絵画大賞展で文部科学大臣賞、第38回上野の森美術館大賞展で入選、Independent TOKYOでみうらじろうギャラリー賞を受賞している。
VIKIさんは青森県生まれ、2022年に東京藝術大学美術学部先端芸術表現科を卒業、2018年に「UNKNOWN/ASIA 2018」で曽根裕賞、2019年に「コミテコルベールアワード2019」で入賞、「IndependentTokyo2019」で染谷琢賞、「アートオリンピア2019」で学生部門国内選考6位入選、2020年に「第14回藝大アートプラザ大賞」で準大賞、2023年に「シャブリワインアートアワード」でファイナリストに選ばれている。
小木曽ウェイツ恭子さんは1968年東京都生まれ、1993年に武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コースを修了している。英国人の夫、2人の子どもと暮らし、英会話教室を開きながら制作している。
開場時間は11時から17時45分。土日祝日は休み。また、出展されている作品はタグボートのオンラインから同時に販売する。
