タグボートがアート解放区で都築まゆ美、太田剛気ら14人展

【銀座新聞ニュース=2025年10月6日】タグボート(中央区日本橋富沢町7-1、ザ・パークレックス人形町、03-5645-3242)は「スペース・アネックス」(中央区日本橋人形町3-6-9、SPACE ANNEX、03-5645-3242)の1階と地下1階のギャラリー「アート解放区 人形町」で10月6日から31日まで第2回グループ展「DISRUPTIVE SCENE」を開く。

タグボートが10月6日から31日まで「アート解放区 人形町」で開くグループ展「DISRUPTIVE SCENE(ディスラプティブ・シーン)」のフライヤー。

画廊では、今回は「カッティングエッジな既存の価値観を揺さぶる表現を提示する」としている。

「アート解放区 人形町」は、「若手アーティストによる多彩な表現を通じて、アートと地域文化が共鳴し、新たな創造的交流が生まれる場を創出」する場とし、「歴史と伝統を受け継ぐ人形町の街並みに、若い感性とアートの息吹を吹き込」むとしている。

1階では、TARTAROS(タルタロス、日乃谷啓=ひのたに・けい))さん、都築まゆ美さん、ヒョーゴコーイチさん、福田紗也佳(さやか)さん、渡辺佑基さんの5人の作品を展示する。

地下1階では、太田剛気さん、大谷陽一郎さん、大山貴弘さん、佐藤しなさん、中風森滋(なかかぜ・しんじ)さん、服部葵さん、フルフォード素馨(Jasmine Fulford)さん、前田博雅さん、リッチマン・フィニアン(Finian Richman)さんの9人が作品を展示する。

TARTAROSさんの表現方法は幅広く、具象や抽象の平面、立体作品のほかに、インスタレーションでもコンセプチュアルな作品を多く制作している。

都築まゆ美さんは鉛筆画を版とするアナログ×デジタル版画の手法でリソグラフ作品を制作している。本の装画をはじめ、エディトリアルを中心としたイラスト、ハンドメイドプロダクトなどの制作など幅広く活動している。

ヒョーゴコーイチさんは樹々を炭化させ、磨きあげることで輝きを放つ炭の彫刻を制作している。人と自然の共存や循環、再生をテーマとし、炭の持つ力や美しさを引き出すことで、炭を国際的な芸術表現へと広める活動を行っている。作品は光に照らされることでさまざまな表情を見せ、自然と人の手が生んだ「黒の奇跡」とも評されるとしている。

福田紗也佳さんは風景が変化する様子を長く留めておくことを主題に油彩画やインスタレーションを制作している。

渡辺佑基さんはシェイプド・キャンバスなども用いながら、主にパネルに、アクリル絵具や油絵具などで絵画を中心に制作している。扱われるモチーフは誰もが目にしたことのあるようなものばかりだが、それを作品として切り出す視点は隙をつくような鋭さがある。

余計なものを省いて浮き上がった写実的なモチーフ表現に対し、その輪郭線で切り取られた空間には無機質さが漂っている。立体的に形成された木材パネルは、平面上に創造された世界から視点を引き離し、三次元と行き来することで現実空間の認知を揺るがす、としている。

太田剛気さんはその作品のバックグラウンドにある「想像上の歴史」は彼の壮大な世界観から成り立っている。 しかもそれを一冊の歴史の教科書にまで作り上げている。太田剛気さんの頭の中に史料が体系的に記録されており、相関関係に疑義がはさみ込まれないようすべて綿密に辻褄が合うように設計されている。客観的にありもしない歴史を認識し、あたかも後世に伝えるように作っていく。

大谷陽一郎さんは漢字を素材とした視覚詩の制作を通して、見ることと読むことの繋がりや、形・音・意味の相互関係を探求している。コンピューターで大量の漢字フォントをランダムに配置して自然物を描いている。

大山貴弘さんは「Drag Queen(ドラァグクイーン)」という主にゲイ男性による女装パフォーマーをモチーフにした、彫刻作品を制作している。派手なメイクや衣装、転びそうなほど高いハイヒールを身につけ、女性をオーバーに表現するDrag Queenの文化や歴史を美術的側面から再考察し、彫刻という確かな存在として表現していきたいと考えている。

佐藤しなさんは作品が人物と背景で構成され、それらの間にある境界は曖昧で、独特な世界観を生み出している。見方によっては、人物も背景に溶け込み、とある生活のワンシーンを切り取ったかのようでもある。それでいて描かれる人物は確実にその一瞬の主人公であり、その世界の中心として圧倒的な存在感を放つ。

中心的な要素を抽出して強調するのではなく、そこに存在するもの、見えるもの、それらのすべてを自らの手で描き出している。化粧品売り場の商品も、冷蔵庫から溢れる食品パッケージも、ゲームセンターに並ぶ景品も、一切トレースなどをせずにコツコツと筆を走らせ、一つ一つのモチーフを一から画面上に生み出している。現代を生きる若者の不安や葛藤、ふとした瞬間の心細さ、木漏れ日のように差し込む一筋の希望が作品に込められている。

中風森滋さんは「現実の情報量についていけず、想像力も満足に働かない。簡略化されて、整理された二次元のデフォルメされた世界の方が、私にとって様々なリアリティを感じられた。しかし、現実を諦めるべきじゃないと思っている。どんなに人と比べ劣った現実でも、か細いリアリティを手繰り寄せて感じとることに生きる意義を感じている」としている。

中風森滋さんの表現は「リアリティを感じられる二次元から始めるしかない。私は普段pc(パソコン)やノートに、SNSにあげるために生みだしたような物語のないキャラクターを落書きするが、キャラクターは自分自身では自立できないほど弱々しく、私に少し似ているようにも思う。私は線体であるその子を絵画の中で、ただの線に還るように解きほぐし解放することを試みる。雑多な要素をほぐし、真に本質的なものを探るなかで、現実のリアリティを少しでも感じたい」としている。

服部葵さんは「日本」の歴史や文化、伝統や風習、宗教や社会問題などの多岐にわたるモチーフの中からテーマを選択して、現代的な視点から再解釈し、それらを画面上にて組み合わせ再構築した油彩画として制作している。

フルフォード素馨さんは「信じられるものは何か」をテーマに、フェイクニュースや人間関係、祈り、呪いなどをキーワードとして、自身のリアリティを追求した作品を日本で制作している。

前田博雅さんは映像作家で、映像が持つ「密度」に着目したイメージ創造を行っている。カメラによって切り出すのは、日常の中ではあまり目に留めないような光景で、よく見ると解体中や建設中の現場が建物の反射に映り込んでいたり、奥行きが歪んで虚実が交錯したかのような画面が創り出されている。それは、わたしたちが普段見ている、見えているものについて、その不確かさを問いかけているとしている。

リッチマン・フィニアンさんは「贖罪」をテーマに制作しており、日英のハーフとして育ち、生まれながらにして二分化したそのアイデンティティの複雑な構造や、大人になった自分自身と誰しもが抱える成長しない精神「内なる子ども」との内面的な乖離などが作品を形成している。粘土で制作した自身の「内なる子ども」を絵に起こす工程で、より濃密な精神社会の考察及び自己探求を行っているとしている。

TARTAROSさんは石川県金沢市生まれ、石川県立工業高等学校工芸科を卒業、日本大学芸術学部彫刻科を中退、フィギュア原型師として国内フィギュアメーカーで原型を制作、プロダクトデザイナーとしてディスクカバーがニューヨークMOMAデザインカタログに登録されている。40代に瞑想による神秘体験を契機に現代美術を始め、スピリチュアルな視点で歴史文明、偶像崇拝をテーマに紙幣素材の絵画と版画、偶像彫刻、瞑想絵画のシリーズなどを発表している。 2014年に第9回TAGBOAT AWARDに選ばれ、同年にTDW ART FAIR前期で審査員特別賞、今村有策賞を受賞している。現在、沖縄県在住。

都築まゆ美さんは1966年東京都生まれ、1988年に武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科(インテリアデザイン専攻)を卒業、1989年から1996年までデザイン事務所にてグラフィックデザイン、イラストに携わり、1997年に第7回HBファイルコンペで宇野亞喜良特別賞を受賞、1997年からフリーのイラストレーターとして活動し、2002年から2006年まで育児のため休業し、2007年から再開し、2008年から個展を開いている。鉛筆画を版とするアナログ×デジタル版画の手法でリソグラフ作品を制作している。

ヒョーゴコーイチさんは新潟県生まれ、2019年に「MIMARU TOURISM COMPETITION 2019」 で優秀賞、2020年に第18回ZEN展で優秀賞、2020年に「MONSTER Exhibition 2020」で最優秀賞、タグボート「Independent Tokyo 2020」で審査員特別賞(2021年も審査員特別賞)、2021年に「2021The 16th TAGBOAT AWARD」で入選、第56回神奈川県美術展で入選(2022年も入選)、2023年に「いい芽ふくら芽 in NAGOYA RS 2023」でグランプリ、2024年に「IAG AWARDS」で長野市芸術館特別賞などを受賞している。樹木を炭化させた「炭化彫刻」という独自のアート表現で活動している。

福田紗也佳さんは1987年青森県生まれ、2010年に岩手大学教育学部芸術文化課程を卒業、2012年に筑波大学大学院人間総合科学研究科芸術専攻を修了している。2011年から個展を開いている。2010年に「トーキョーワンダーウォール公募2010」で入選、2012年に「トーキョーワンダーシード2012」で入選、2013年に「GOLDEN COMPETITION 2012」で優秀賞、2013年に「平成24年度岩手県美術選奨」を受賞、2014年に「第28回ホルベイン・スカラシップ奨学生」に選ばれており、2015年に「第8回はるひ絵画トリエンナーレ」で入選、2022年に「FACE2022」で入選、2023年に「IDEMITSU ART AWARD 2023」で入選している。

渡辺佑基さんは2015年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻を卒業、2017年に同大学大学院造形研究科美術専攻油絵コースを修了、2021年に同大学大学院博士後期課程を修了している。第15回タグボートアワード審査員特別賞天明屋尚賞、第3回宝龍芸術大賞で優秀賞、第30回美浜美術展でFBC賞などを受賞している。

太田剛気さんは1991年東京都生まれ、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業、2021年に同大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究分野を修了、2018年にA-TOM ART AWARDを受賞、2019年にO氏賞を受賞している。自分で創作した完全オリジナルの架空国家の歴史に基いた作品を展開している。

大谷陽一郎さんは1990年大阪府生まれ、2015年に桑沢デザイン研究所夜間部ビジュアルデザイン専攻を卒業、2018年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程を修了、2018年から2019年に中国の清華大学(北京)に交換留学、2023年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了し、2023年から個展を開いている。2017年にIAG AWARDSでIAG奨励賞、2018年にサロン・ド・プランタン賞、2020年に「NONIO ART WAVE AWARD」のグラフィック部門でグランプリ、2022年に野村美術賞、2023年に「SICF24」EXHIBITION部門でスパイラル奨励賞などを受賞している。

大山貴弘さんは1993年岩手県生まれ、2018年に東北芸術工科大学芸術文化専攻・彫刻領域を修了している。2020年9月に「MONSTER Exhibition 2020」で入選、2021年10月に「岩手芸術祭美術展」現代美術部門で部門賞、2022年8月に「Independent Tokyo 2022」で審査員特別賞を受賞している。

佐藤しなさんは1998年神奈川県横浜市生まれ、2017年に慶應義塾大学法学部法律学科に入学、2021年に4年で中退、「しな」名義でイラストレーターとして活動、2022年から「佐藤しな」名義で制作している。「可愛い女の子と暗い世界」をテーマに作品を制作している。

中風森滋さんは1994年千葉県松戸市生まれ、2018年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業、2022年に同大学大学院美術研究科修士課程を修了している。2016年に安宅賞を受賞している。キャンバスの落書きから生まれたキャラクターを、複数の線で重ね合わせ、具体的な形にしている。

服部葵さんは1999年富山県生まれ、2022年に多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻を卒業、2024年に同大学大学院博士前期課程絵画専攻油画研究領域を修了している。

フルフォード素馨さんは1988年神奈川県逗子市生まれ、武蔵野美術大学油絵学科(油絵専攻)に入学するも、3年時に版画専攻に変更し、2013年に卒業後、英国にわたり、2017年に英国のUALセントラルセントマーチンズ大学院ファインアート学科を修了し、 2021年に「Independent Tokyo 2021」でグランプリを受賞、現在、日本を拠点に活動している。

前田博雅さんは2018年に武蔵野美術大学造形学部映像学科を卒業、2020年に東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻を修了。

リッチマン・フィニアンさんは1992年英国ロンドンで英国人の父親、日本人の母親の間に生まれ、2015年に「City & Guilds of London Art School(シティ・アンド・ギルド・オブ・ロンドン・アートスクール)」のFine Art科を卒業、2018年に日本へ帰国し、作家活動を継続する。2013年に「Royal Academy of Art London Original Print Fair(ロイヤルアカデミー・オブ・アート・ロンドン。オリジナル・プリントフェア)」(ロンドン)で入選、2016年にロンドンの「Leverhulme Art Scholarship Award(レバーヒューム・アートスカラーシップ・アワード)」を受賞、2022年に「新ACTコンペティション novae 2022」で入選 (東京)、同年に第8回Shibuya Art Awardで平泉千枝賞を受賞している。

10月6日18時から20時までレセプションを開く。

開場時間は11時から17時45分。土・日・祝日は休み。また、出展されている作品はタグボートのオンラインから同時に販売する。