丸善丸の内で植物画、博物画展、ルドゥーテら

【銀座新聞ニュース=2018年4月1日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・丸の内本店(千代田区丸の内1-6-4、丸の内オアゾ、03-5288-8881)は4月4日から10日まで4階ギャラリーで「ボタニカルアート・博物画の世界展-植物・動物・風景・アンティーク版画」を開く。

丸善・丸の内本店で4月4日から10日まで開かれる「ボタニカルアート・博物画の世界展-植物・動物・風景・アンティーク版画」に出品される植物画。

植物画(ボタニカルアート)、博物画(ナチュラルヒストリー)などを扱う「オランジェリーコレクション」(狛江市和泉本町1-32-11、03-3489-3341)が主催する17世紀から19世紀にかけてヨーロッパで制作された植物画や博物画のコレクションを展示即売する。

ベルギー出身で「バラの画家」として知られたピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ (Pierre-Joseph Redoute、1759-1840)の美しいバラや初展示となるジョン・メイヤー(John Mayer)、マーク・ケーツビー(Mark Cateby、1682-1749)など博物画の稀少な作品を展示する。また、リチャード・ドイル(Richard Doyle、1824-1883)、カイ・ニールセン(Kay Nielsen、1886-1957)、エドモンド・デュラク(Edmund Dulac)らの絵本のさし絵や、手軽に楽しめる植物図譜シート、木版画入りロンドンニュースなども充実させている。

ウイキペディアによると、バラが人類の歴史に登場するのは古代バビロニア(古代メソポタミアのバビロニア地方に建てられた王国で、BC1894年からBC1595年までをいう)の「ギルガメシュ叙事詩」(BC2000年ころ)の中にバラのトゲについて触れた箇所がある。

古代ギリシア・ローマでは、バラは愛の女神アプロディテもしくはウェヌス(ビーナス)と関係づけられ、香りを愛好され、香油も作られた。プトレマイオス朝エジプトの女王クレオパトラ(Cleopatra7 Philopator、BC70-BC30)はバラを愛好し、ユリウス・カエサル(Gaius Iulius Caesar、BC100-BC44)を歓待したときもふんだんにバラの花や香油を使用したと伝えられている。

ローマにおいてもバラの香油は愛好され、北アフリカや中近東の属州で盛んにバラの栽培が行われた。中世ヨーロッパではバラの美しさや芳香が「人々を惑わすもの」として教会によってタブーとされ、修道院で薬草として栽培されるにとどまった。

イスラム世界では、白バラはムハンマドを表し、赤バラが唯一神アッラーを表すとされた。十字軍以降、中近東のバラがヨーロッパに紹介され、ルネサンスのころには再び人々の愛好の対象となり、カトリック教会は聖母マリアの雅称として「奇しきばらの花」(Rosa Mystica)と呼ぶようになる。

ナポレオン・ボナパルトの皇后ジョゼフィーヌもバラを愛好し、夫が戦争をしている間も、敵国とバラに関する情報交換や原種を収集していた。ヨーロッパのみならず日本や中国など、世界中からバラを取り寄せ、マルメゾン城に植栽させる一方、ルドゥーテに「バラ図譜」を描かせた。

1868年にフランスで「ハイブリット・ティ」系の初代「ラ・フランス」が誕生し、この年以前を「オールドローズ」(古いバラ)とし、これ以降を「モダンローズ」(現代のバラ)と区分されている。その後、1900年に黄色いバラ、1911年に「フロリバンダ系」、1957年に青いバラが開発されている。

ボタニカルアート(植物画)とは古代エジプトや中国などで薬草を見分けるために図譜が作られたのがはじまりで、大航海時代になって、ヨーロッパ各国が世界各地を探検するようになり、植物学者と画家が一緒に組んで珍しい植物の詳しい絵が本国に送られ、それらの絵がイギリスやフランスで19世紀に大流行した。植物の姿を正確で細密に描く植物図鑑のための絵画とされている。

博物画は動物、植物、鉱物などの観察対象の姿を詳細に記録するために描かれる絵で、植物画(botanical art)と動物画(zoological art)に大別され、動物画はさらに外形を描く肖像画(portait)と内部を描く解剖画(anatomical art)に区分されている。

科学性が重視され、正確な観察には博物学や解剖学の知識も不可欠であり、学者の指示によって作画された。屋外で素早く写生する必要性から速乾性のガッシュが用いられ、後にこれを銅版画に起こし、点描で陰影をつけ手彩色も行われるようになった。19世紀に写真が登場しても、描いた者の手と認識を通した写真にはない説明性と抽象化があるため、今日でも図鑑や医学書などではイラストが用いられ続けている。

オランジェリーコレクションは大根均(おおね・ひとし)さんと大根恒子(おおね・つねこ)さんが1992年10月に設立した植物画(ボタニカルアート)、博物画(ナチュラルヒストリー)などの作品を取り扱う会社で、丸善をはじめ、三越、阪急、伊勢丹、高島屋などで版画展を開いている。

開場時間は9時30分から20時30分(最終日は17時)まで。入場は無料。