俳優の全感情を捉えるのに膨大な時間をかけた新「アバター」(436)

【ケイシーの映画冗報=2026年1月1日】新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。2026年の最初は「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」(Avatar:Fire and Ash)です。

2025年12月19日から一般公開されている「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」((C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.)。製作費は推定で4億ドル(1ドル=140円で約560億円)。映画ランキングによると、19日から21日の初週がトップ10の2位にランクされ、26日から28日の2週目は3位となった。19日からの3日間で動員25万3500人、興行収入が4億8100万円だった。

22世紀の未来、人類は宇宙に進出し、資源を求めて活動していました。厖大なエネルギー資源をたたえた惑星「パンドラ」。その地に自身の複製である「アバター」を使うことで、先住民であるナヴィ族の一員となり、家族をもうけた元海兵隊員のジェイク(演じるのはサム・ワーシントン=Sam Worthington)は、人類の強引な資源開発と戦い、勝利したことで一応の安息を得ていました。

ジェイクは先住民の妻ネイティリ(演じるのはゾーイ・サルダナ=Zoe Saldana)と家族の安全な場所を求めて、気球で空をわたるトラリム族と同道して、ネイティリの属するオマティカヤ族のキャンプへと旅立つのでした。

その途中で、好戦的なヴァラン(演じるのはウーナ・チャップリン=Oona Chaplin)に率いられたアッシュ族の襲撃にあい、戦いのなかでジェイクと家族たちは離ればなれになりますが、家族の絆を信じ、それぞれが活路を見いだそうと奮闘します。

その一方で、人類の強力な兵器を欲しがるアッシュ族に、戦力の強化が持ちかけられます。ジェイクらと戦って命を喪った元軍人であるクオリッチの記憶を移植されたナヴィ族のクオリッチ(演じるのはスティーヴン・ラング=Stephen Lang)が、アッシュ族に人類の兵器を提供することで人類とアッシュ族が共闘することになり、ジェイクらはさらに追い詰められていくことになるのでした。

本作の監督・脚本で、この作品世界の創造主ともいえるジェームズ・キャメロン(James Cameron)は、映画の特撮スタッフとして映画界に足を踏み入れてから、一貫して映像効果の変革に熱心であり、コンピューターグラフィックス(CG)を映画に積極活用した映画人のひとりです

「アバター」(Avatar、2009年)の第1作目からは、実際に演技をする俳優の動きをデータとして取り込み、CGをかぶせる「パフォーマンスキャプチャー」を本格的に導入したことで、人類とは異なった体格を持ったナヴィ族のギャラクター像を、映画のなかで縦横微塵に活躍させることを実現させました。

出自が特撮スタッフということから、キャメロン監督は特撮技術を中心とした映画監督と見られがち(その素養もありますが)ですが、映画史に残る超大作「タイタニック」(Titanic、1997年)はアメリカのアカデミー賞において、主要14部門にノミネートされ、作品賞と監督賞など11部門を受賞していますから、映画作家としても、充分な結果と評価をみせています。

「アバター」も1作目の成功(それまで「タイタニック」の保持していた世界歴代興行収入を抜いて新記録を樹立)からも「単なる一発屋」ではないことかあきらかです。テクノロジーに偏向しただけの作品では、こうした成果は残せないはずです。キャメロン監督によれば、作品の根幹はやはり、ストーリーなのだそうです。
「自分が観たい世界観を考え、そして反面でキャラクターの内面や感情を考える。すると、それが衝突して、どういうわけか物語が生まれる」

この物語をどのようにして作品にまで仕上げていくのか。コンピューターを駆使した作業となると、あまり人間の介入する余地がなく、ヒトの手作業が中心だった時代より、安易というか、手早くできるのではないかと考えてしまいがちですが、それは正しくないようです。

前作「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」(2022年、Avatar:The Way of Water)の完成まで、キャメロン監督は13年を費やし、その間には撮影スタジオの新造や映像、音響の新技術を活用することで、キャメロン監督の理想的な映像表現をもとめていったそうです。

前作「ウェイ・オブ・ウォーター」と本作は同時に制作していたそうなのですが、ここでも大きなウェイトは俳優の持つ感情を伝える能力だったとのことで、「制作に5年かかったが、一番時間を費やしたのがその分野(俳優のキャプチャー撮影)だった。俳優の心、感情を一つも落とさず捉えたいという思いだった」(いずれも2025年12月26日付「読売新聞」夕刊)

「重厚な空間と圧倒的な情報量の映像が観客に“押し寄せてくる”映像による叙事詩」ともいえる本作であっても、その根幹は映像作家の情熱と、俳優陣の豊かな表現力が主軸ということは、過去の映画やストーリー表現と、変化はないのでしょう。

こうした人間による表現の根源的なものを土台に、新しい技術を用いることで、そうした伝達の手段が増していくことが、プラスであることは確実なので、「あとはどう活用していくか」ですが、キャメロン監督と本作は、その確実な成果を実現しているといえるでしょう。次回は「ワーキングマン」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。。

編集注:ウイキペディアによると、「アバター」(Avatar)シリーズは、ジェームズ・キャメロンが監督し、ライトストーム・エンターテインメントが製作、20世紀スタジオが配給するSF映画のシリーズで、2009年12月18日に公開された第1弾「アバター」の公開1週間前の2009年12月11日に、20世紀フォックスからシリーズ化が発表された。

「アバター」の続編4作品は惑星パンドラを舞台としつつ各々で完全に独立した物語が展開される。第2作が「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」で、第3作が「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」で2025年12月19日にアメリカで公開されている。

「アバター4」は2029年12月21日公開予定、「アバター5」は2031年12月19日公開予定とされ、監督は全作ともジェームズ・キャメロン。脚本が2作目がジェームズ・キャメロンとジョシュ・フリードマン(Josh Friedman)、3作目がジェームズ・キャメロンとリック・ジャファ(Rick Jaffa)&アマンダ・シルバー(Amanda Silver)夫妻、4作目がジェームズ・キャメロンとシェーン・サレルノ(Shane Salerno)、5作目が未定とされている。