スタローン+ステイサムで次も期待できる「ワーキングマン」(437)

【ケイシーの映画冗報=2026年1月15日】今回は「ワーキングマン」(原題は「A Working Man」、2025年)です。シカゴで建築現場の監督をしているレヴォン(演じるのはジェイソン・ステイサム=Jason Statham)、かつてはイギリス海兵隊の特殊部隊で活躍した優秀な兵士でしたが、妻を亡くし、ひとり娘のメリー(演じるのはアイラ・ジー=Isla Gie)の養育をめぐって、裕福な妻の実家といさかいになるなど、めぐまれた人生を過ごしてはいませんでしたが、仕事現場での信頼は高く、彼を雇う建築会社の社長であるジョー(演じるのはマイケル・ペーニャ=Michael Pena)とは、家族ぐるみのつき合いをしており、多少の弊害はありながらも、平穏な日々を過ごしていました。

1月2日から一般公開されている「ワーキングマン」((C)2025 CADENCE PRODUCTIONS LIMITED)。作品は「PG12」(小学生以下は保護者の助言・指導が必要)に指定。制作費は4000万ドル(1ドル=150円換算で約60億円)、興行収入が9800万ドル(約147億円)。興行通信社の映画ランキングでは1月2日から4日の初週で6位にランクされている。

ある日、社長のジョーの娘である女子大生のジェニー(演じるのはアリアンナ・リヴァス=Arianna Rivas)が消息不明になります。家族や生活に不満のなかった彼女が自分で姿を消すはずはありません。ジョーをはじめ、一族の願いを受け、レヴォンは軍隊時代のスキルを使い、ジェニーの行方を追います。

やがて、“特定の嗜好”をもった顧客に、女性を誘拐する人身売買の組織がジェニーをさらったことを突き止めたレヴォンは、全力を発揮して組織を追い、ジェニーを助けるために邁進していくのでした。

ちょうど1年前にも、本作の監督のデヴィッド・エアー(David Ayer)で、ジェイソン・ステイサム主演のアクション映画「ビーキーパー」(The Beekeeper、2024年)を紹介しました。ビーキーパー(養蜂家)として生活するステイサム演じるアダムが、恩人の死(ネット詐欺の被害にあって自殺)から、ネット詐欺集団を壊滅させるというストーリーでした。

“ステイサム流復讐譚”で監督も一緒なので、既視感もありますが、本作の脚本(監督のエアーと共同)を担当したのが、「ロッキー」(Rocky、1976年)、「ランボー」(First Blood 、1982年)といった人気作を生んだシルヴェスター・スタローン(Sylvester Stallone)ということもあって、また違った描き方となっています。

「ビーキーパー」のアダムは、孤高の人物で、他人とのかかわりを持たないキャラクターでしたが、本作でステイサムの演じたレヴォンは、義父とはぎこちないものの、ひとり娘とはキチンと向き合っていますし、作業現場や社長の一家からは、大きな信頼を寄せられています。

もっとも、仕事場で悪質な借金取りたてにあっていた同僚のために、借金取りを叩きのめし、隠していた銃をブッ放しているのですから、周囲に「尋常なキャラクターではない」ことは伝わっているはずなのですが、過剰反応はなく、平穏な日常というおもてむきなのは、ステイサム主演作でのご愛嬌なのかもしれません。

スタローンとステイサムは、本作では製作も共同で関わっていることから、伝説的なアクションスターと脂の乗ったアクションスターの、本作に込めた思惑は一致しているのでしょう。

スタローンがステイサムに作品を託したのは今回が初めてではありません。かつては、「『トランスポーター』のヘナチョコ・ハゲをシメてやろうかな(笑)』(「映画秘宝」2008年5月号より)と、「トランスポーター」に主演していたステイサムに“キツめのコメント”をしていたスタローンでしたが、この時期に予定していた次回作の出演を(どのような経緯かは不明ですが)ステイサムにゆずったり、自身が主導したアクションスターの結集する「エクスペンダブルズ」(The Expendables、2010年)シリーズでは、演じる傭兵部隊のリーダーであるバーニーの片腕としてステイサムを配したりと、良好な関係をみせています。そして、2013年には自身の脚本で主演することを予定していた「バトルフロント」(Homefront)の主役をステイサムにゆずっています。

本作も、当初はスタローンが主演する予定で、脚本が準備されたのですが、結果的にステイサムの作品となり、プロデュースには両人が名を連ねています。すべてがスタローン流かと思いきや、監督や脚本に旺盛に取り組んでいるスタローンに比して、ステイサムは出演とプロデュースに集中して映画界に関わっています。
「俺はシルヴェスター・スタローンの映画を観て育った。そんな俺が、彼が脚本を書いた映画に主演できるのは最高の名誉だよ!」(パンフレットより)と語るステイサムは、映画界の大先輩であり、彼自身の魅力を引き出せるスタローンに、全幅の信頼をおいているのでしょう。

「ワーキングマン」の続編もあるようなので、スタローン+ステイサムの作品はまだまだ、生まれてくることが期待できますし、楽しみでもあります。次回は「ウォーフェア 戦地最前線」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:ウイキペディアによると、「ワーキングマン」はアメリカの作家、チャック・ディクソン(Chuck Dixon、1954年生まれ)の小説「Levon’s Trade」を原作にしたテレビシリーズをバルボア・プロダクションズ(Balboa Productions)と共同で企画していたが、この企画はテレビシリーズから映画に変更され、2023年のアメリカン・フィルム・マーケットにて監督をデヴィッド・エアー、主演をジェイソン・ステイサムが務めることが発表された。

2024年1月にAmazon MGMスタジオはブラック・ベアー・ピクチャーズ(Black Bear Pictures)から本作のアメリカおよび一部の国際配給権を取得した。本作はディクソンがシリーズで書いた小説の数から、続編の可能性があることを念頭に企画が進められ、すでに小説は2024年時点でシリーズ12巻まで刊行されている。