金沢から横浜小説教室に通う、作品提出し1期目終了(166-1)

(インドへの一時帰国から日本に戻ってきましたので、タイトルはそのままです)
【モハンティ三智江のインドからの帰国記=2025年7月15日】4月から横浜で小説教室の講座(月2回、月曜日は小説入門教室で、私は火曜日の小説実作教室、18時30分から20時30分)を受けて、6月17日で計6回の第1期目を終えた。以下、何回かに分けて体験レポートをお届けする。その前に、この教室についての概要を大まかに述べておく。

地元福井市内の勝木書店で、初の小説集「涅槃ホテル」が発売された(2015年)。前面の目立つ棚に立てかけられ、福井出身ということでご支援いただいた。

会場は横浜駅前のルミネ8階、朝日カルチャーセンターが主催する講座で、講師は、往時の文芸誌「海燕」(福武書店)や「野性時代」(角川書店)の編集長を務め、島田雅彦や吉本ばなな、小川洋子、角田光代らの作家デビューに立ち会った元辣腕編集者、根本昌夫である。

小説家志望の受講生の間では超人気のクラスで、それもそのはず、これまでに、受講生の中から3人もの芥川賞作家を輩出しているのである(若竹千佐子、石井遊佳、高山羽根子、他に各新人賞受賞作家も数人)。

そもそも私が根本教室について知ったのは7年前の2018年のことで、若竹千佐子(「おらおらでひとりいくぐも」)と石井遊佳(「百年泥」)が芥川賞を受賞したときだった。2人とも、時期は違えども、根本教室の卒業生であったことが経歴で明かされていた。

しかし、その時点では、今さら小説講座でもないだろうとまったく受ける気にならなかったが、今年に入って、根本昌夫著「小説教室」(河出書房新社)を読んだことから、ふと受けてみようかとの思いが兆した。

長年小説を書いていて、小さな賞はいくつかいただいているが、中央の知名度の高い文学賞はこれまで2回最終選考を通過したのみで、受賞には至らなかった。

自費出版で小説書2冊を刊行したが(「涅槃ホテル」と「車の荒木鬼」=いずれもブイツーソリューション刊)、いわば無名に等しい作家だ。その前にインド関連書を出版社に頼まれて2冊刊行したが(「お気をつけてよい旅を!ー日本人女将インド安宿繁盛記」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館))、小説家としては無名だ。

私に足りないものは何か、過去最終選考まで残りながら受賞を逸したのは?常々、胸のうちにあったその問いの答を得るべく、何らかの手がかりのようなものが掴めたらとの思いだった。

40年ぶりに再訪した横浜が超モダンに変貌を遂げていて、驚かされた。写真左手の高層ビルが名高いランドマークタワー(73階)、横浜のシンボルだ(桜木町駅から徒歩5分)。

年齢的にも後がない私だけに、この辺で本腰入れないと、ダラダラナーナー、細々した日常の雑事に追われて肝心の創作がつい後回しになってしまう。いわば活を入れるための受講、背水の陣、真剣勝負である。

ネットで調べてみると、根本教室は、新宿と横浜の2カ所で開催されていることがわかった。まず都内の新宿教室にあたってみたが、生憎、満員でキャンセル待ちだったので、横浜の担当者に電話してみると、幸いにも空きがあった。どちらかといえば新宿より横浜の方が好みだし、講義ついでの周辺観光も楽しめそうと、早速申し込んだ。

実は若い頃、横浜のタウン誌のライターをやっていたことがあり、40年ぶりの懐かしい再訪ということになりそうだった。

ちなみに、授業料は教材費含め2万8050円(シニアのため入会金5000円は免除)。ただし、金沢からの夜行バス往復による日帰り受講なので、交通費が7000円から8000円かかる(連休前は倍)。決して安くはないが、遅ればせながらの自己投資である。インド在住時は受講は物理的に不可能だったし、未亡人になって独り身の自由を得た今は、絶好のチャンスだった。

大桟橋の国際旅客ターミナルに停泊した巨大クルーズ船(ノルウェー籍)を横浜港から望む。

なかなか資料が届かず焦ったが、受講の3日前にやっとレターパックが送られてきた。受講生の習作3編のコピーとともに領収書や授業内容のチラシが同封されていて、課題図書が今般の芥川賞受賞作品「ゲーテはすべてを言った」(鈴木結衣著、文藝春秋)と知った私は、街中の書店に駆け込んで即購入、分量も多い読み応えのある同書を2日で読了した。

幸いにも提出用の自作品は受講を見越して既に進めていたので、授業の2日前(日曜日)の締切にはどうにか間に合わせることができた(先生のメールアドレスに送信、枚数は400字詰め200枚以下、16日先のクラスで合評)。

2時間の講義内容だが、取り立てて小説作法のようなものは教わるわけではなく、20人ほどの受講生による習作合評、最後に先生評でまとめられ、時間があれば、課題図書(提出作品数が少ないときに先生が書名を指定)の合評も行う。

講義の後は毎回横浜駅地下の崎陽軒で飲み会が催され、私もこれまで2度出席した(2次会も40分ほど顔を出し、帰りは新宿からのミッドナイトバス、不参加のときは横浜から22時10分発)。

桜木町から徒歩20分、横浜港に臨む赤レンガ倉庫が見えてくる。明治政府によって横浜税関新港埠頭倉庫として建設された1号館(1913年、写真向かって左側)と2号館(1911年)に挟まれた中央の広場は色とりどりの花壇で埋め尽くされ、鉄骨剥き出しの天井にレンガ壁の洒落た内部は各種文化・商業施設が並ぶ。

つまり自作が提出できなければ、人の作品を読むばかりで、根本先生いわく作家を目指すに必要な読み書きの両輪の片方だけとなってしまい、文芸評論家になるつもりならともかくも、つまらないかもしれない。かく言う私も初回は、受講生の習作合評だけで丸々2時間終わってしまったので、拍子抜け、期待はずれに終わったものだ。
(「インド発コロナ観戦記」は、92回から「インドからの帰国記」にしています。インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いてきましたが、92回からはインドからの「帰国記」として随時、掲載しています。

モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行している。編集注は筆者と関係ありません)。