泥臭い男を主人公にし、他との違いを示した「ノーバディ2」(432)

【ケイシーの映画冗報=2025年11月6日】今回は「Mr.ノーバディ2」(Nobody 2、2025年)です。前作(2021年)でロシアン・マフィアを叩きのめした「ノーバディ」(何者でもない男)のハッチ(演じるのはボブ・オデンカーク=Bob Odenkirk)は、4年後の今でも、裏社会での戦いに身を投じていました。マフィアの資金3000万ドル(1ドル=140円で、約42億円)を焼き払ったことで、裏組織への借金返済のためでした。

10月24日から一般公開されている「Mr.ノーバディ2」。

ハッチは、多忙によってできなかった家族サービスのため、バカンスを計画します。妻と兄妹ふたりの子ども、そして実戦経験豊富な父親のデイビッド(演じるのはクリストファー・ロイド=Christopher Lloyd)の3世代で、ハッチの想い出の場所であるリゾート“ブラマービル”へ向かうのです。

どちらかといえば田舎の施設である“ブラマービル”は、地元の実力者ワイアット(演じるのはジョン・オーティス=John Ortiz)が保安官も牛耳り、ひそかに薬物や兵器の密売をおこなっていました。

ハッチは子どもたちのささいなトラブルに巻き込まれ、つい、その戦闘力を発揮してしまいます。やがてハッチは、“ブラマービル”を支配する黒幕のレンディーナ(演じるのはシャロン・ストーン=Sharon Stone)を激怒させます。彼女は、目的のためなら味方も殺してしまう人物で、ハッチの抹殺にかかります。

なによりも家族を愛するハッチは、父親のデイビットや、共闘を約束したワイアットらと、押し寄せてくるレンディーナの一味と全面対決することに。

前作「Mr.ノーバディ」では、ちょっと不器用な中年男性ハッチが、愛する娘の“お気に入り”を奪われたことで、“破壊衝動”を爆発させ、敵対したロシアン・マフィアを粉砕してしまいます。

「平凡な一般人のはずなのに、恐ろしい戦闘力を持つ」というキャラクターは、本作だけでなく、ハリウッド映画や、さまざまなエンターティメントで描かれてきた、定番ともいえる存在です。

記してしまえば上記のようになりますが、その人物造形の肉付けや、自身と周囲の環境、対人関係といったところで、個性を発揮されてくることになります。

“世捨て人”のように一般社会から隔絶したり、激しい過去を覆い隠し、見せかけの陽気さを発揮して社会に順応したり、本作のハッチのように家庭をもって、一般人として生計を立てたり、といったところが代表格でしょう。

生活面でも悪夢に悩まされたり、あるいは困窮しているといったパターンから、過去の実績から豊富な資金を持っていたり、普通人を装いながら、実は大富豪だったというディティールも描かれたりします。

本作の主人公ハッチは、戦闘能力こそズバ抜けていますが、犯罪組織への借金返済のため、体を張って裏稼業にいそしんでいます。家族もハッチの“荒事業務”に理解はしている様子ですが、演じるオデンカークによると、
「ハッチは、働き過ぎで家にいない多くの父親と同じ」という状態なのだそうです。

「家族の絆をとりもどすための旅」は「父親的なテーマ」としては普遍的ですが、その行程に、アクション作品では大きな闘争が待ち構えているのは必定でしょう。

「バカンス中だから、ハッチが暴力を振るう必要なんてどこにもない」はずですが、子どもたちのトラブルで、「警備員のひとりが娘のサリーの頭を思い切り小突く。怪我はなかったけど、ハッチはもう我慢できなかった」

こうしてストーリーが動き出すのですが、前作でも娘が絡んだささいなトラブルから、ロシアン・マフィアを壊滅させるハッチですが、今回もきっかけは娘が原因です。このあたりは前作を踏襲していますが、ハッチが躍動する舞台はおおきく異なります。前作が市街地と工場という、都会的な場所でしたが、今回の戦場は自然ゆたかな、さびれたテーマパークとなっています。

このあたりは、本作の監督であるティモ・ジャヤント(Timo Tjahjanto)の意向なのでは、と感じます。
「今回、ハリウッド映画が見失いがちな“リアルな泥臭さ”が重要だと思いました。(中略)“格闘”はもっと 不器用で汗臭いもの。(中略)ハッチは泥臭くて、マヌケで、雑で、それでも前に進みます。彼は“やめない男”です。その生き様こそが、今回のアクションスタイルにマッチしていると思います」(いずれもパンフレットより)

3作目も期待させる仕上がりで、次回作の“しかけ”も気になりますが、ジャヤント監督が本項でも取り上げたアクション映画「ビーキーパー」(The Beekeeper、2024年)の続編を監督しているそうなので、こちらにも興味がそそられますね。次回は「プレデター:バッドランド」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。