ポーラ銀座で久保寛子展、神像や土器等農耕や偶像をテーマに

【銀座新聞ニュース=2024年5月4日】化粧品業界国内4位のポーラ・オルビスホールディングス(中央区銀座1-7-7、ポーラ銀座ビル、03-3563-5517)が運営するポーラミュージアムアネックス(ポーラ銀座ビル、03-3563-5501)は6月9日まで久保寛子さんの個展「鉄骨のゴッデス」を開いている。

ポーラミュージアムアネックスで6月9日まで開かれている久保寛子さんの「鉄骨のゴッデス」に出品されている「Steel framed Goddess(スティール・フレームド・ゴッデス)」(2024年、鉄、防風ネット)。

彫刻家の久保寛子さんは、工事現場で見かけるブルーシートや鉄、コンクリートなど、身近な素材から創り出された神像や土器など、農耕や偶像をテーマに、古来日常にあった祈りのかたちを現代に置き換えた彫刻作品を制作している。今回は、防風ネットを使った新作「鉄骨のゴッデス」を含む、約60点を展示している。

コンクリートで出来たアミュレット(魔除け)やブルーシート製の土器など、数々の立体作品を紹介し、ポーラ銀座ビル1階のウィンドウでは、会期にあわせて平面作品も展示している。

久保寛子さんは2024年元日の「能登半島地震」に触れて、「高層ビルや地下鉄、人工衛星などの技術も、先史時代の土器や石像、洞窟壁画と同じく、厳しい自然に対抗し、適応し、祈りながら生きてきた人類の生の証」という。

また、柳宗悦(やなぎ・むねよし、1889-1961)の民藝論の「用の美」に対して、それに対抗するものとして「『用』から離れて『美』のために作られた美術品や、『利』のために生み出された工業品」であり、「宗教美術や民俗芸術も、人間の精神的な必要性、いわば『心の用』から生まれた民藝」とする。

続けて「私が作家としてこれらを手本とする理由は、現代の合理性では計り知れない、豊かな神話的思考の具現であり、今もなおヒトはこのような思考を必要としていると感じるから」としている。

その上で「神話や民藝を失いつつある現代。効率化された工業製品の中に、ゴッデス(女神)を見出すことは可能」なのかと問いかけ、久保寛子さんは「身の回りにある素材から道具や偶像を生み出してきた古人に倣い、いま身近にあるもの、例えばブルーシートや軍手やワイヤーメッシュを使って作品」を作っているのも、「それらが新しい神話の断片となり、女神像の身体となることを信じて」としている。

久保寛子さんは1987年広島県生まれ、2009年に広島市立大学芸術学部彫刻専攻を卒業、2013年にアメリカ・テキサスクリスチャン大学美術修士課程を修了、2017年に六甲ミーツ・アート公募で大賞、2022年に広島文化新人賞などを受賞している。

開場時間は11時から19時。入場は無料。会期中は無休。