資生堂でアートエッグ展、大東忍、すずえり、平田尚也が個展

【銀座新聞ニュース=2025年3月3日】国内最大の化粧品メーカーの資生堂(中央区銀座7-5-5、03-3572-5111)は3月5日から6月29日まで資生堂ギャラリー(中央区銀座8-8-3、東京銀座資生堂ビル、03-3572-3901)で「第18回shiseido art egg展」を開く。

資生堂ギャラリーで3月5日から6月29日まで開かられる「第18回shiseido art egg展」に展示される大東忍さんの作品「かつての騒ぎと今日の踊り」(2023年、康全寺(愛知県)木炭、襖、撮影・城戸保)。

「shiseido art egg(シセイドウアートエッグ)」は資生堂が2006年からはじめた若手作家を対象にした公募展で、応募者の中から3人を選んで、3月から6月(例年は1月から5月)にかけて個展を開き、最終的に「アートエッグ」賞(賞金20万円)を決める。

最終審査に挑む3人を選ぶのは、建築家の永山祐子さん、美学者の星野太さん、美術家の村山悟郎さんの3人。

18回目は291件(2024年17回目は351件)の応募があり、その中から1993年愛知県生まれ、
2019年に愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程油画・版画領域を修了した大東忍さん、神奈川県生まれ、武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業、2007年に岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)を卒業、2024年から東京大学大学院情報学環・学際情報学府先端表現情報学コースに在籍しているすずえり(鈴木英倫子)さん、1991年長野県生まれ、2014年に武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業した平田尚也さんの3人を選んでいる。

3月5日から4月6日まで大東忍さん、4月16日から5月18日まですずえりさん、5月28日か6月29日まで平田尚也さんがそれぞれ個展を開く。

大東忍さんについては、木炭画と映像をゆるやかに接続しながら、色彩を失ったモノクロの空間の中に、時間をかけて紡いできた風景の物語を描いていく。耳や身体を澄まして物語を体験することで、私たちの在処、そして行方を示唆してくれるとしている。

大東忍さんは「わたしは風景に残っている営みの痕跡を読むことで『人の在処』を確かめ、『風景を供養する』ための実践をしてきました。銀座の上品で歴史に名を残すような建物が立ち並ぶ風景からは少し遠く感じるような、でも確かにどこかにあって繋がっているはずの、夜の深い影を纏った風景たちを携えてきます」としている。

同じくすずえりさんの「toypiano sokubaikai(トイピアノ・ソクバイカイ)」(2022年、水道橋Fttariでのパフォーマンス、撮影・砂田紗彩、共演・遠藤ふみ)

すずえりさんについては、「ピアノや自作の電子回路などを連動させた装置を用いてインスタレーションや即興演奏を手がけ、音やそれを媒介する通信技術の表象に物語性を見出そうとします。Wi-FiやGPSなど現代に欠かせない通信技術の礎を開発したのは、発明家でもあったハリウッド女優ヘディ・ラマー((Hedy Lamarr、1914-2000)と言われます。本展では、移民でもある彼女の波乱の生涯に焦点を当て、ピアノや電球を通信機器と接続したインスタレーションなどを展開し、通信と社会の関わりについて考えます」としている。

すずえりさんは「これまで、自作装置を使った演奏活動を主に行ってきました。作った装置と発する音が持つナラティブについて、その先のことを考えたく応募し」たという。また、「生まれ年と最初に卒業した大学の卒業年について、ここでは公開しないことにしました。年齢やジェンダー、キャリアを問わず評価していただける場を、今の日本で持てたこと、その懐の広さをとてもうれしく思います」としている。

平田尚也さんについては、「デジタルテクノロジーの進展により、身体そのものの仮想化が進み、アバターが一般化しつつある今日において、我々の身体性やアイデンティティを探求しています。VRSNS(ソーシャルVR)で使用されるアバターは、単なる『仮の姿』ではなく、意志によって選択された個性や思考を反映し、精神の本来の形を現す『映し鏡』でもあります。人格を認めざるを得ないような高度なAIが誕生した未来では、アバターの正体は、人間であるのか、AIであるのか?本展覧会では、『身体という表面に宿る魂の在りか』を探る考察を試み」るとしている。

同じく平田尚也さんの「I hate that song(アイ・ヘイト・ザット・ソング)」(2024年、デスクトップゲームアプリケーション)。

平田尚也さんは「テクノロジーが変われば、身体の使い方も変わります。身体の使い方が変われば、それに伴い精神も自然と変わっていきます。私自身、それを身をもって感じている一人です。私たちの精神は今、どのような形をしているのでしょうか。そんなことを考えながら、自分の表現に向き合っていきたい」としている。

開場時間は11時から19時(日曜日、祝日18時)、毎週月曜日が休み(祝日でも休み)。入場は無料。個展の開始後、アーティストが会場で自作について解説した動画を資生堂ギャラリーHPで配信する。