過去のオリジナル、リメイク版も融合させた新「ベストキッド」(428)

【ケイシーの映画冗報=2025年9月11日】今回は「ベスト・キッド:レジェンズ」(Karate Kid:Legends、2025年)です。北京に住む17際の高校生リー(演じるのはベン・ウォン=Ben Wang)は、ともに中国武術であるカンフーを学んでいた兄を目の前で喪ったことから、修業に集中できずにいました。

8月29日から一般公開されている「ベスト・キッド:レジェンズ」。

そんなリーは、医者である母親(演じるのはミンナ・ウェン=Ming-Na Wen)の転勤先であるニューヨークで新生活をはじめます。イタリア料理店ではたらくクラスメートのミア(演じるのはセイディ・スタンリー=Sadie Stanley)を中国語でサポートしたことがキッカケで、父親で店のオーナーであるヴィクター(演じるのはジョシュア・ジャクソン=Joshua Jackson)のトレーニングに付き合うことになるリー。

元ボクサーのヴィクターは、街の格闘技道場に借金があり、闇の賭けボクシングに出て返済を目指しますが、相手の反則で負け、自身も大ケガを負ってしまいます。

兄の死と同じく、失意にとらわれるリーでしたが、それを察した師匠のハン(演じるのはジャッキー・チェン=Jackie Chan)がニューヨークにあらわれます。自分と周囲の人々のため、リーはニューヨーク市内で開かれる格闘技トーナメントに出場することを決心します。

リーのカンフーだけでは勝ち抜くことが難しいと感じたハンは、かつて交流のあった空手の達人ダニエル(演じるのはラルフ・マッチオ=Ralph Macchio)を招き、リーの格闘技術のさらなる向上を進めていきます。空手とカンフー、ふたつの格闘技を身につけたリーは、トーナメントで勝ち抜くことができるのでしょうか。

1984年、アメリカで映画「ベスト・キッド」(The Karate Kid、日本公開は1985年)が公開されます。監督のジョン・G ・アヴィルドセン(John G. Avildsen、1935-2007)は、映画史に残る傑作「ロッキー」(Rocky、1976年)を監督しており、主人公ロッキー・バルボアを演じ、脚本も書いたシルヴェスター・スタローン(Sylvester Stallone)を大スターに引きあげました。

「ベスト・キッド」はそのカラテ版ともいえますが、主人公がロートルのボクサーから、転校してきた高校生となり、カラテの師匠も修業を通じて弟子とともに人生にふたたび向き合うといった展開が加わっています。

主人公の高校生ダニエル(今回の映画と同一人物で、演者もおなじ)に“カラテ”を教えるミスター・ミヤギは、ハリウッド映画で表層でしか描かれていなかった“日系アメリカ人”に、“年長者でカラテと人生の師匠”という深みが加わったことで、演じたノリユキ・パット・モリタ(Noriyuki Pat Morita、日本名・森田則之、1932-2005)の名演(この年のアカデミー助演男優賞候補)により、ハリウッド映画での“日系アメリカ人”というキャラクターの存在を大きく広げていく端緒にもなりました。

「ベスト・キッド」シリーズはダニエルとミスター・ミヤギのコンビで3作が製作され、ミスター・ミヤギが女性の指導者となる4作目や、なんとアニメ化、カラテからカンフーに主題を置き換え、師匠役にジャッキー・チェンを向かえたリブート版「ベスト・キッド」(The Karate Kid、2010年)まで誕生しています。

本作は興味深いのは、オリジナルの過去シリーズとリブートの作品がしっかりと融合していることです。40年にもなる長期間のシリーズで、一貫した流れとなっていることは、希有といえます。

多くのシリーズ作品で時間軸の繋がりがあやふやになったり、登場人物のキャラクターが歪んでしまったり、作品の舞台そのものが破綻していたり、といったことがまま、ありますので。

「ベスト・キッド」のシリーズが、アメリカに与えた影響を実感した逸話があります。これは実際にアメリカで、護身術的なスクールに通った友人から聞いたのですが、現地の人物と普通に「センセイ」という単語で会話していたそうです。

第1作で主人公ダニエルのライバルとなる、“コブラ道場”の稽古のシーンで師匠の弟子が「イエス、センセイ」と応じており、これが広まったらしいとのことでした。

さらに、本作の原音でも、“センセイ”とともに中国語の“師父(シフ)”が使われており、画像とセリフのみの登場ですが、ミスター・ミヤギは本作のなかでもおおきな幹として存在しており、ダニエルとハンが、その指導を認めていることも、強く印象に残りました。

格闘技に精通した方によると、カラテにもカンフーにもさまざま体系があり、その内部でも軋轢が生じているのが現実なのだそうです。劇中にあるセリフ「二本の枝は一つになる」は、本作を象徴するセンテンスですが、現実ではなかなかむずかしいようです。せめて作品の中だけでも、よい流れとなってほしいですね。次回は「宝島」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:ウイキペディアによると、第1作「ベスト・キッド」(The Moment of Truth、後にThe Karate Kid、1984年、監督はジョン・G・アヴィルドセン=John G. Avildsen、1935-2017)は1984年に公開され(日本では1985年2月16日公開)、ミスター宮城 (Mr.Miyagi) 役は三船敏郎(1920-1997)にオファーが出されたが、三船が断ったために、何度もオーディションを受けていたノリユキ・パット・モリタが最終的に選ばれた。

また、劇中の空手は、接近戦を想定した猫足立ちであることと、本作の脚本家(ロバート・マーク・ケイメン=Robert Mark Kamen、1947年生まれ)が剛柔流空手道を長年に亘り学び、出演者に指導したこと、ミヤギという姓の空手家が実在したこと、パート3で披露される型「征遠鎮」から、剛柔流空手道であることがわかる。

日本で劇場公開された時のオープニング(引越しのシーン)のタイトルは「The Moment of Truth」で、その後、DVDやBlu-ray Discでは「The Karate Kid」に差し替えられている。

第2作は「ベスト・キッド2」(The Moment of Truth PartⅡ、The Karate Kid、PartⅡ、1986年、監督はジョン・G・アヴィルドセン)、第3作は「ベスト・キッド3 最後の挑戦」(The Karate Kid, Part3、1989年、監督はジョン・G・アヴィルドセン)、第4作は「ベスト・キッド4」(The Next Karate Kid、1994年、監督はクリストファー・ケイン=Christopher Cain、1943年生まれ)。

リメイクは「ベスト・キッド」(The Karate Kid、中国語題は功夫夢、2010年、監督はハラルド・ズワルト=(Harald Zwart、1965年生まれ)。第5作が「ベスト・キッド:レジェンズ」。