【ケイシーの映画冗報=2025年11月20日】今回は「プレデター:バッドランド」(Predator: Badlands)です。宇宙の戦闘種族であるヤウージャ族の若き戦士デク(演じるのはディミトリウス・シュスター=コローマタンギ=Dimitrius Schuster-Koloamatangi)は一族のなかでも実績をもたないことで実の父親から抹殺されそうになりますが、兄の命を賭した行動で死の寸前で生き延びることができました。
デクは宇宙でもっと危険な惑星「ゲンナ」に遭難同然でたどり着きます。そこにひそむ最強にして不死身のモンスター「カリスク」を狩り、実力を証明することでもう一度、父親と対峙することを決心するのでした。
過酷で危険な大地で、テグは上半身だけで生き延びていた女性型アンドロイドのティア(演じるのはエル・ファニング=Elle Fanning)と同道することに。饒舌で“ゲンナ”についての知識をもったティアとともに、「カリスク」を追い求めるデク。
その一方で、知性と科学力を持ったヤウージャ族をサンプルとして入手しようというグループも存在し、ハンターであるはずのテグも獲物として狙われていたのです。
本作「プレデター:バッドランド」の源流となる、1987年の映画「プレデター」(Predator)は、SFアクション「ターミネーター」(The Terminator、1984年)で未来から来た殺人マシーンを演じたアーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)の主演作品です。
アーノルドがリーダーを演じる特殊部隊のチームが、熱帯のジャングルで味方の救出作戦に参加したところ、現地で言い伝えられている「謎の地球外生物」と激闘を繰り広げるという内容でした。
日本での公開時、シュワルツェネッガーによるミリタリー・アクション風の宣伝公告がなされ、前半は対戦相手である「プレデター」(本来は捕食/肉食動物の意味)の存在が断片的に描かれるほかは、すさまじい銃撃アクションがメインとなっていますが、後半では特殊部隊のメンバーをひとりずつ、プレデターがハントした結果、生き残ったチーム・リーダーと雌雄を決するというもので、前半と後半でコンセプトが変化する以外は、シンプルなストーリーとなっています。
こうした1作目の構成は、本作の監督であるダン・トラクテンバーグ(Dan Trachtenberg)にとっても魅力的だったそうです。
「(前略)あの恐ろしいけどカッコいいデザインだけじゃなく、複数のジャンルが組み合わさっている点でした。アーノルド・シュワルツェネッガーのミリタリー・アクションを楽しんでいたら、途中からまったく違う作品になるでしょう?『プレデター』シリーズは、様々なジャンル、異なるテイストやアクションの見事な融合だと思います」
トラクテンバーグ監督の語る「恐ろしいけどカッコいいデザイン」であるプレデターは、第1作目からシリーズを通じて、「強敵には敬意をもって戦い、倒した相手の頭蓋をトロフィー(記念品)として蒐集する」という、一見すると恐ろしげな行動をとります。
「プレデター側は悪役として描かれてきたとはいえ、プレデター側から観ればそうでもないですよね。単に狩りをしているだけなんです」
これはプレデターであるデクを演じたディミトリウス・シュスター=コローマタンギのコメントですが、たしかに肉食の野生動物は蛮性で獲物を狩るのではなく、生存のために“捕食”しているのですから、残虐でも暴虐でもありません。デクも危険な惑星「ゲンナ」で、生き残りと自身の存在証明のために戦うのですから。
その一方で、デクと同道するアンドロイドのティアは、機械でありながら、表面上は感情が豊かに見えます。そのような設計で、魅力的な女性という外見もあって、観客から好感を持たれるはずですが、その内面には、マシーンとして、製造メーカーである会社の企業活動を最優先するプログラムが存在しています。
蛮人めいたプレデター「デク」が、家父長制に忠実なキャラクターで、しきたりに厳格で古典的な描かれ方をされているのに対し、ティアは製造元である大企業のもつ「利益、利得を追求する強欲な組織」という、利己的で傲慢な部分を前面にみせてくるのです。
トラクテンバーグ監督による、この言葉は印象的です。「今回はプレデターたちを、今までよりも人類学的な視野で描いています」(いずれもパンフレットより)
生物とアンドロイド、純粋な意志と利益の追求、狩るものと狩られるもの、こうした対比の構造が危険な異界で繰り広げられるアクションに散りばめられた、インパクトのある作品といえるでしょう。
次回は「果てしなきスカーレット」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。
