志門で「ドローイング」展、加藤力、倉田和夫、松尾奈保ら

【銀座新聞ニュース=2019年7月28日】ギャルリー志門(中央区銀座6-13-7、新保ビル、03-3541-2511)は7月29日から8月10日まで第8回公募「ドローイングとは何か」入賞・入選作品展を開く。

ギャルリー志門で8月10日まで開かれている第8回「ドローイングとは何か」に展示される作品。9番が加藤力さん、16番が倉田和夫さん、11番が松尾奈保さんの作品。

「ドローイングとは何か」は審査員で美術評論家の金沢毅(かなざわ・たけし)さんが中心になって、「ドローイング」を完成された線描画とし、習作や下絵と一線を画した作品を発表する場を公募展として立ち上げ、2010年からはじめ、今回が8回目になる。

第8回「ドローイングとは何か」展の審査会は、第1次審査が6月27日に銀座3丁目の美術家会館にて行われ、19点が残り、7月4日に第2次審査が銀座6丁目のギャルリー志門にて行われた。応募者数144人(2018年118人)で作品数245点(2018年208点)の中から大賞、準大賞の入賞者3人、入選者16人の計19人19作品が選ばれた。

大賞は加藤力(かとう・りき)さんの「眼差し」(MBM木炭紙・木炭)で、準大賞は倉田和夫(くらた・かずお)さんの「ブレッド(BREAD)19-9」(水彩紙・鉛筆・ガッシュ)、松尾奈保(まつお・なほ)さんの「そこにいて うごめくもの」(鉛筆・木炭・墨)が選ばれた。

また、安藤ニキ(あんどう・にき)さんの「彼のための記念碑1」をはじめ、16人が入選している。

「ドローイング」とは本来、絵の具で面を塗る「ペンチュール(peinture)」とは対照的な画法で、線画、線描画を意味するが、日本の現代美術界では、紙に描いた習作や下絵を「ドローイング」と称することがある。金沢毅さんは「ドローイング」を完成された線描画としてとらえている。

審査員は金沢毅さん、版画家で東京芸術大学名誉教授の中林忠良(なかばやし・ただよし)さん。多摩美術大学名誉教授の本江邦夫(もとえ・くにお、1948-2019年6月3日)も審査員の予定だったが、第1次審査直前に逝去したことから、2人の審査員で選んだ。

大賞に選ばれた加藤力さんは「空間の中に恐る恐る手を入れる。指先が何かに当たる。ザラリとした触感と同時にタッチが生まれる。迷いながらいくつかのタッチが重なり、今度は掌全体を擦り付けてみる。掌から染み出した圧力が画面に写し出される。感情を伴った手からの圧力と、空間からの反発との試行錯誤のうちに徐々に物語が顕れてくる。私にとってドローイングとは、感情をもっとも具体化する力を持った『手』そのものであり表現の根幹」としている。

準大賞は倉田和夫さんは「パンの描き方」について、「汚れないようバックの部分をマスキングし、鉛筆、指、手の平、布、練りゴム、白い絵具、爪などを使ってパンのボリュームと質感を表現し、一通り手を入れたらバックのマスキングをはずし、全体のバランスを見ながら線を引いたり取ったり」するとしている。

松尾奈保さんは「私は目に見える実体の、その向こう側を表現したいと考えています。意識や魂など、見えないものを表現したいからこそ、それを持つ実体のありようを追うことに執着しています。この絵では眠っているときの自意識に興味を持ち制作しました。人が眠るとき、その人の自意識は目に見えるものから遠ざかって、その強さを絶えず変化させています。その人がその人である所以はその人の内側で絶えず蠢いているものです。その痕跡を残すことを制作で試みました」としている。

加藤力さんは1965年東京都生まれ、1989年に東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業、1991年に同大学大学院美術研究科油画専攻修士課程を修了、2001年から個展を開いている。

倉田和夫さんは1950年広島県生まれ、1976年に創形美術学校版画科を中退、2012年に日本橋三越本店美術サロンで個展を開いている(2015年、2018年も)。1992年に第1回林武賞展で優秀賞、第4回春日水彩画展で大賞、1993年に人間賛歌大賞展で奨励賞、2015年にフェイス(FACE)展でオーデイエンス賞、アートオリンピア審査員特別賞を受賞している。

松尾奈保さんは1996年京都府生まれ、2019年に広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻を卒業、現在、同大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻に在籍中。2013年に第35回美工作品展で京都市長賞、2019年に第22回広島市立大学芸術学部卒業・修了作品展で優秀賞、同大学芸術資料館買い上げ。

29日17時から授賞式、18時からレセプションを開く。

開場時間は11時から19時(最終日は17時)、入場は無料。