2人の息子も登場し、次回作はと期待させる新「バッドボーイズ」(397)

【ケイシーの映画冗報=2024年7月4日】刑事ドラマは相棒モノ(バディ・ムービー)の定型です。コンビで事件にかかわる個性的な刑事は対比となる味付けで造形されることが多用されます。若手とベテラン、腕っぷし自慢と人情家といったイメージでしょうか。ハリウッドではさらに、人種的な風味も加わります。

6月21日から一般公開されている「バッドボーイズ RIDE OR DIE」。アメリカでは6月7日に公開され、全米映画ランキングでは3週目も2位となり、累計興行収入は1億4600万ドル(1ドル=150円換算で219億円)に達している。

1971年から1988年までに5本のシリーズとなった「ダーティハリー」(Dirty Harry)で、主人公ハリー刑事の相棒は、メキシコ系、黒人、女性、中国系と、いわゆるマイノリティ(少数派)が中心となっていました。

1980年代になると、白人と黒人のコンビが犯罪アクションの主役となりました。シリーズで4作、最近ではネット配信のドラマにもなった「リーサル・ウェポン」(Lethal Weapon、1987年)が代表的でしょうか。若手で無鉄砲な白人刑事と、ベテランの家庭的な黒人刑事という、コントラストの強い表現となっています。

本作「バッドボーイズ」(Bad Boys)は1作目が1995年で、舞台は南国のリゾートでありながら犯罪が多発するフロリダ州のマイアミ。そこで“バッドボーイズ”と呼ばれる黒人刑事コンビの派手なアクションを描いて人気となりました。

家族の遺産でリッチな独身貴族のマイク・ラーリー(演じるのはウィル・スミス=Will Smith)と、マイホームパパで孫が生まれても妻を愛するマーカス・バーネット(演じるのはマーティン・ローレンス=Martin Lawrence)は、高校時代からの名コンビです。

これまで浮名を流してきた(一時はマーカスの妹と交際していた!)マイクがついに結婚することになり、その余興でハリキリすぎたマーカスは心臓マヒで倒れます。生死の境をさまよったとき、かつての事件で殺された上司コンラッド・ハワード警部(演じるのはジョー・パントリアーノ=Joe Pantoliano)からの“夢のお告げ”を受けたマーカスは、示された謎に向かって調査をはじめるのですが、警察内部でストップがかります。署内で大きな汚職事件が発覚し、そこにハワード警部が深く関わっていたという嫌疑が掛けられたのです。

口うるさいながらも信頼していた上司への疑いをはらすため、“バッドボーイズ”の型破りな捜査が始まりますが、敵の手はふたりの家族にまで及ぶことに。

4作目の本作「バッドボーイズ RIDE OR DIE(ライド・オア・ダイ)」(Bad Boys: Ride or Die)までのおよそ30年、20代だったマイクとマーカスを演じるウィル・スミスとマーティン・ローレンスも50代になり、“勢いのいい若手”というスタンスも変化してきます。

高級スポーツカーに上等なスーツに身を包み、バンバン撃ちまくるマイクと、愛する家族のために安全第一をこころがけながら、“やるときはやる”マーカスという根幹に変化はありませんが、作品数はともかく、時間的には長期にわたるシリーズでありながら、主人公2人が同じ俳優ということもあって、それなりの経年変化が訪れています。

どこかピリついた緊張感をただよわせていたマイクは落ち着きを見せ、家族との幸せな時間は、マーカスの容姿にあらわれています。劇中に食事制限を課せられるのがリアル感いっぱいという雰囲気です。

時間の流れは姿かたちだけではありません。4年前の3作目「バッドボーイズ フォー・ライフ」(2020年、Bad Boys forLife)では、マーカスに孫が誕生し、マイクにもひそかに実子が存在していたことが判明するなど、本作にも繋がるストーリーラインが見えてきます。

主人公の基礎的な部分や、マイアミを舞台としたアクションシーンといった部分に改編がない一方で、“バッドボーイズ”の対戦相手は変化しています。

最初は警察内部で押収した麻薬が消えてしまうという事件で、2作目はマイアミから海を越えてキューバの麻薬王との対決、前作ではマイクの過去にかかわる、メキシコの犯罪組織と現地で戦います。

とくに2作目では“元海軍特殊部隊”という助っ人が加わることで、犯罪捜査というよりは軍事作戦のような、はげしい戦闘シーンが繰り広げられます。

もちろん、すご腕であっても警察官ですから、他国まで乗り込んで大暴れするというのは、現実的には難しいでしょう。ところが、キューバからの麻薬流入や、メキシコの麻薬組織からの影響などが、いずれもが映画公開時に、アメリカ国内で深刻化していたという事情があり、実社会に通じた部分でもあったのです。

本作では、マイクとマーカス以外のメンバー、とくに両人の息子(義理の子と隠し子)も戦います。ひょっとすると、次回作ではこちらが・・・とも考えてしまいますが、主軸はマイクとマーカス、ウィル・スミスとマーティン・ローレンスであることに異論はないでしょう。

次回は「フェラーリ」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。