銀座ニコンで江成常夫「沖縄ガマ」展、戦争の昭和を問う

【銀座新聞ニュース=2011年7月31日】ニコン(千代田区丸の内3-2-3、富士ビル、03-3214-5311)が運営する銀座ニコンサロン(中央区銀座7-10-1、03-5537-1434)は8月3日から8月16日まで江成常夫さんによる「ガマ ケイブ(GAMA CAVE)霊魂がやどる聖地」を開催する。

写真家の江成常夫(えなり・つねお)さんはこれまでに40年近く、「『戦争の昭和』に翻ろうされ、声を持たない人たちの声を写真を通して代弁することで、現代史を軽視、記憶から遠ざけてきた戦後の日本人を問い続けてきた」という。

その行き着いた先が沖縄の「ガマ」と呼ばれる自然洞くつで、江成常夫さんはこれまで封印されてきた「ガマ」を克明に浮き立たせることで、太平洋戦の罪の深さを、鎮魂(ちんごん)をもって呼び戻そうとした作品約40点を展示する。

江成常夫さんは「戦争花嫁」と呼ばれ、アメリカに嫁いだ日本人女性や、「15年戦争」の発端となった「満洲」、「満洲」が生んだ日本人戦争孤児、太平洋戦争の終えんとなった「ヒロシマ」などを取材し、2004年から「満洲」と「ヒロシマ」をつなぐ太平洋戦争の15の戦歴の島を巡ってきた。

このうち、本土防衛の最終戦となった沖縄戦では軍民合わせた戦没者は18万8000人余りとされている。沖縄の「ガマ」には県民の老若男女、乳児までが身を寄せたが、日本軍から追い出され、自決を強いられた人も多かった。

また、「ガマ」には日本軍の野戦病院が置かれ、アメリカ軍が攻め込むなか重傷将兵らが置き去りにされ、多くが没している。こうしたことから「ガマ」はいわば阿鼻地獄のもとで逝った人たちの、霊魂が宿る「聖地」ともいえる。

江成常夫さんは1936年神奈川県生まれ、1962年に東京経済大学経済学部を卒業、毎日新聞東京本社に入社、1974年に毎日新聞社を退社、フリーの写真家として活動し、アメリカ・ニューヨークに滞在、撮影活動を行い、1976年に東北、関東、沖縄などの日本人の家族を撮影、1977年に「第27回日本写真協会」新人賞、1978年に再度アメリカにわたり、ロサンゼルスに滞在し、カリフォルニアに在住する日本人の戦争花嫁を撮影した。

1980年に月刊写真誌「アサヒカメラ」(朝日新聞社)に「花嫁のアメリカ」を連載、1981年に中国で日本人の戦争孤児を撮影、「第6回木村伊兵衛(きむら・いへえ)賞」を受賞、1982年から2年間、月刊写真誌「毎日グラフ」に「百肖像」を連載、1985年から「ヒロシマ」の撮影をはじめ、「第4回土門拳(どもん・けん)賞」、「第52回毎日広告デザイン賞(公共福祉部門)」を受賞した。

1995年に「第37回毎日芸術賞」を受賞、1997年から1998年にかけ、アメリカで「20年目の戦争花嫁」を撮影、2001年に「日本写真協会年度賞」、「第50回神奈川文化賞」、「相模原市民文化彰」などを受賞、2002年に紫綬褒章(しじゅほうしょう)を受賞している。現在、九州産業大学大学院教授、ニッコールクラブ会長などを務めている。

8月3日18時30分から江成常夫さんと東京芸術大学教授の伊藤俊治(いとう・としはる)さんによる「第57回銀座ニコンサロン フォトセミナー」を開く。

伊藤俊治さんは1953年秋田県生まれ、東京大学文学部美術史学科西洋美術史専攻を卒業、多摩美術大学教授を経て、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科教授に就任している。美術や建築デザインから写真映像などの評論で知られ、1987年に「ジオラマ論」でサントリー学芸賞を受賞している。

開場時間は10時から19時(最終日は16時)、入場は無料。