【銀座新聞ニュース=2018年10月1日】ヴァニラ画廊(中央区銀座8-10-7、東成ビル、03-5568-1233)は10月3日から21日まで折原一さんのコレクション「メメント・モリ- 死の部屋、そして黙の部屋」を開く。
推理小説作家の折原一(おりはら・いち)さんのダークなコレクションを2つの部屋でテーマを分けて展示する。
展示室Aは「ヴァニタス(ラテン語:vanitas、「人生の空しさの寓意(ぐうい)」を表す静物画)コレクション」として、頭骸骨(ずがいこつ)などの絵を、主に日本の作家の作品を中心に展示する。展示室Bは石田黙(いしだ・もく、1923-1984)コレクションを紹介する。
石田黙は1923年秋田県平鹿郡雄物川町生まれ、東京芸術大学卒業で、1970年に二科展特選(二科展には7回入選し、特選、特賞、M賞、1974年に退会)、1971年に神奈川県美術展で特選、1975年に沖縄海洋博絵画コンクールで次席、日伯現代美術展優秀賞、1984年に死去した。
折原一さんは文芸春秋画廊地下1階の「ザ・セラー」で2007年に石田黙展、2011年に骸骨絵展を開いた。折原一さんによると、「石田黙は1970年代の数年間、死の世界を思わせる黒と白の幻想的な絵をひたすら描き、1980年代の初め、静かにこの世を去っていった」としている。
ヴァニタスは16世紀から17世紀にかけてフランドルやネーデルラントなどヨーロッパ北部で特に多く描かれた。「豊かさなどを意味するさまざまな静物の中に、人間の死すべき定めの隠喩(いんゆ)である頭蓋骨や、あるいは時計やパイプや腐ってゆく果物などを置き、観る者に対して虚栄のはかなさを喚起する意図をもっていた」(ウイキペディア)とされている。
「メメント・モリ(ラテン語:memento mori)」は、「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句で、「死を記憶せよ」や「死を想え」などと訳され、芸術作品のモチーフとして広く使われる。古代ではあまり広くは使われず、当時、は「メメント・モリ」の趣旨は「カルペ・ディエム(carpe diem、今を楽しめ)」ということで、「食べ、飲め、そして陽気になろう。我々は明日死ぬから」というアドバイスだった。
しかし、この言葉は、その後のキリスト教世界で違った意味を持つようになり、天国、地獄、魂の救済が重要視され、死が意識の前面に出てきた。キリスト教的な芸術作品において、「メメント・モリ」はほとんどこの文脈で使用され、キリスト教の文脈では、「メメント・モリ」は「ヌンク・エスト・ビベンダム(nunc est bibendum、今は飲むときだ)」とは反対の、かなり徳化された意味合いで使われるようになった。キリスト教徒にとっては、死への思いは現世での楽しみ、ぜいたく、手柄が空虚でむなしいものであることを強調するものであり、来世に思いをはせる誘引となった。
折原一さんは1951年埼玉県久喜市生まれ。1974年に早稲田大学第一文学部を卒業、JTBに入社し、1977年に出版事業局に異動し、1980年に月刊旅行誌「旅」の編集部に配属される。1985年に「おせっかいな密室」がオール読物推理小説新人賞の最終候補作となり、1987年にJTBを退社、1988年に短編集「五つの棺」(東京創元社)が刊行され、「鮎川哲也と十三の謎」の1冊目として「倒錯の死角(とうさくのアングル) 201号室の女」が刊行された。
同年に長編推理小説「倒錯のロンド」が江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)賞最終候補作となり、1995年に小説「沈黙の教室」(早川書房)で第48回日本推理作家協会賞を受賞、1997年に「冤罪者」で第118回直木三十五(なおき・いつご)賞の候補となった。2005年に「黙の部屋」(文芸春秋、2008年7月に文春文庫化)を刊行し、2007年に文芸春秋画廊地下「ザ・セラー」にて「石田黙展」を開いた。
展示室Aに出品するのは浅野信二(あさの・しんじ)さん、浅原聡(あさはら・さとし)さん、飛鳥部勝則(あすかべ・かつのり)さん、池田満寿夫(いけだ・ますお、1934-1997)、イヂチアキコさん。
因幡都頼(いなば・とらい)さん、宇野阿喜良(うの・あきら)さん、大川心平(おおかわ・しんぺい)さん、大里俊吾(おおさと・しゅんご、1888-1974)、大島哲以(おおしま・てつい、1926-1999)。
岡本東子(おかもと・とうこ)さん、小田隆(おだ・たかし)さん、小山田二郎(おやまだ・じろう、1914-1991)、加藤清美(かとう・きよみ)さん、加藤寛史(かとう・ひろふみ)さん。
鎌谷徹太郎(かまたに・てつたろう)さん、亀井徹(かめい・とおる)さん、柄沢斉(からさわ・ひとし)さん、川上勉(かわかみ・つとむ)さん、北野武(きたの・たけし)さん。
北見隆(きたみ・たかし)さん、J・W・ゲイシー(John Wayne Gacy、1942-1994)さん、合田佐和子(ごうだ・さわこ、1940-2016)、三枝久人(さえぐさ・ひさと)さん、篠田教夫(しのだ・のりお)さん。
島根幸延(しまね・ゆきのぶ)さん、白藤さえ子(しらふじ・さえこ)さん、菅原優(すがわら・ゆう)さん、平良志季(たいら・しき)さん、高橋美貴(たかはし・みき)さん。
高橋良(たかはし・りょう)さん、財田翔悟(たからだ・しょうご)さん、建石修志(たていし・しゅうじ)さん、田中武(たなか・たけし)さん、田中正弘(たなか・まさひろ)さん。
谷神健二(たにがみ・けんじ)さん、玉川麻衣(たまがわ・まい)さん、中島清八(なかしま・せいはち)さん、成田朱希(なりた・あき)さん、春口光義(はるぐち・みつよし)さん。
ビュッフェ(Bernard Buffet、1928-1999)、フジイフランソワ(Fujii Furansowa)さん、藤野級井(ふじの・しない)さん、古吉弘(ふるよし・ひろし)さん、星山耕太郎(ほしやま・こうたろう)さん。
前田正憲(まえだ・まさのり)さん、松永瑠利子(まつなが・るりこ)さん、丸岡和吾(まるおか・かずみち)さん、三浦明範(みうら・あきのり)さん、水口理恵子(みずぐち・りえこ)さん。
三輪修(みわ・おさむ)さん、目黒礼子(めぐろ・れいこ)さん、森馨(もり・かおる)さん、山科理絵(やましな・りえ)さん、山高徹(やまたか・とおる)さん。
山本タカト(やまもと・たかと)さん、ヨシダシオリ(よしだ・しおり)さん。
開場時間は12時から19時(土・日曜日、祝日は17時)。入場料は1000円。会期中無休。
注:「柄沢斉」の「沢」と「斉」、「島根幸延」の「島」、「中島清八」の「島」、「高橋美貴」と「高橋良」と「山高徹」の「高」はいずれも正しくは旧漢字です。名詞は原則として現代漢字(常用漢字)を使用しています。