丸善日本橋で西岡由利子、直樹夫婦の工房展、モスリンの羽織物

【銀座新聞ニュース=2019年6月25日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・日本橋店(中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は6月26日から7月2日まで3階ギャラリー特設会場でアナンダ工房による「19夏-モスリンの刺繍と綿の縞」を開く。

丸善・日本橋店で6月26日から7月2日まで開かれるアナンダ工房による「19夏-モスリンの刺繍と綿の縞」に出品される作品。

染織家の西岡由利子(にしおか・ゆりこ)さんと夫で織を手がける西岡直樹(にしおか・なおき)さんが1986年に「アナンダ工房」を設立して以来33年目を迎え、今回はインドで育まれた薄手の綿モスリンを前面に施したカンタ刺繍の羽織りもの、ブラウス、アナンダ工房で織った着心地のいい手紡ぎ綿の羽織もの、薄手の縞織(しまおり)のチュニックプルオーバーなどを展示販売する。

ウイキペディアによると、モスリン(muslin)とは、木綿や羊毛などの梳毛糸(そもうし)を平織りにした薄地の織物をさす。名称はメソポタミアのモースルに由来するとも、そのふんわりとした風合いを示すフランス語のムースに由来するともいわれる。

ヨーロッパではモスリンは薄手の綿織物を指し、アメリカではキャラコのことをモスリンと呼ぶ。日本語では先行して流入した毛織物のメリンスとの混同があって、主に毛織物をモスリンと呼んでいる。

日本には近世以降、ポルトガルやオランダなどの貿易船経由でさまざまな布地や服飾が流入してきたが、中でも毛織物はゴロフクレン(呉絽服連、オランダ語・grofgrein)や、これを略してゴロ(江戸の俗語)、フクレンまたはフクリン(京阪の俗語、服綸、幅綸)と呼ばれ、唐縮緬(とうちりめん)、略して唐縮(とうちり、とうち)とも呼ばれた。

明治時代に入り、貿易が活発化し、日本人の洋装化も進むと、メリノ種の羊毛などで織った柔らかい薄手の毛織物が多く輸入されるようになり、これをメリンス(メレンス、オランダ語・merinos)と呼んだ。次第に「モスリン」との混同が起き、明治時代後半頃からはこれをもっぱらモスリン(毛斯綸)、略してモスなどと呼ぶようになった。

後に綿織物のモスリンも流入したので、1920年代頃から、毛織物を「本モスリン」、綿織物を「綿モスリン」または「新モスリン」、「新モス」などと呼んで区別するようになり、シフォンを「絹モスリン」とも称した。

毛織物のモスリン(メリンス)は薄地で柔らかくあたたかい素材として好まれ、普段用の和服や冬物の襦袢、半纏の表、軍服(夏服・夏衣)などに用いられ、伝統的な染色技法である友禅を施した友禅メリンスも流行した。

政府主導で国内の羊毛工業も始まり、最初は紡毛毛織物の生産が中心であったが、次第に梳毛毛織物の生産も始まり、輸入羊毛への関税が撤廃(1896年法律第58号)され、松本重太郎(まつもと・じゅうたろう、1844-1913)の毛斯綸紡績や東京モスリン紡織などが相次いで創業した。

モスリンはラシャやフランネルよりも生産速度が早いことなどから興隆し、日本の毛織物生産の中心となっていった。日露戦争後には、原糸生産から一貫した国内生産が可能になり、日本毛織もモスリン製造に乗り出して業界最大手となった。

第1次世界大戦(1914年7月28日から1918年11月11日)による不況の影響で業績悪化もあったものの、その後、回復し、毛織物の国内自給だけでなく、輸出も行われるようになり、綿紡績会社も毛織物業に進出した。

しかし、大東亜戦争(1941年12月8日から1945年9月2日)になると、原毛の輸入が困難になり、モスリン製造業は縮小を余儀なくされた。1937年10月の「繊維製品の使用制限」公布もあり、羊毛製品にはステープル・ファイバー(スフ)の混入が命じられた。

戦後は生産量を戻したが、合成繊維の登場により、毛織物には虫がつきやすいことなどから、モスリンの需要は減り、今日ではほとんど流通しておらず、目にする機会は少ない。

アナンダ工房は1970年代からインドのウエストベンガル州で、インドの職人である友人たちと一緒に手染と手織りの工房を運営し、その布でオリジナルの服を作っている。素材と色はできる限り自然のものを使っている。インドの樹染めは、沙羅双樹、パラミツ(常緑の高木の果樹)、菩提樹(ぼだいじゅ、インドボダイジュ、高さ20メートル以上に生長する常緑高木で、イチジク属)、アンマロク(別名はゆかんで、果実でハーブのひとつ)などの植物を使用している。

また、2012年2月に西岡直樹さんが文章を、西岡由利子さんがさし絵をてがけた「花みちくさ-身近な植物をめぐる210話」(平凡社)を刊行している。

開場時間は9時30分から20時30分(最終日は17時)まで。入場は無料。