インド、11月からの封鎖解除で一部開校、人数制限で冠婚葬祭も(49)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年11月27日】インドの感染拡大に歯止めがかかったことから、各州とも、さらなる解除の動きを進めている。

ボリウッド界のスーパースター、シャールク・カーンは、親の七光りの2世が多い映画界で、コネなしでトップにのし上がった。彼のファンのディールは、通称SRKの功績を惜しみなく称えたラップをリリース、只今大ヒット中!(写真は動画撮影中のディール)

11月2日現在、感染者の総数は820万人超(823万人)だが、1日当たりの感染者数がピーク時に比べ4万人台(4万6963人)と半減した(回復者数754万人、死者12万3000人)。10月はほぼこの水準を維持、一時は世界最悪のアメリカとの差が70万人まで縮まったが、アメリカが再拡大中で(総数928万人、死者23万1000人、新規7万4113人)、当面2位のポジション保持である。

中央政府は6月からの5回にわたる段階的アンロックダウン(都市封鎖解除)の指針として、先月1日に既に10月15日以降のほぼ全面解除を発表しており、今後は、各州の判断に委ねられることになっていた。つまり、中央政府としての解除措置は10月1日発表された指針を11月末まてま維持ということになる。

国際線の再開や全面開校という最終局面は今後の状勢を睨みながらになろう。既に日本航空や全日空は来年1月末までの運休を発表しているため、国際線の再開は2月以降にずれ込む可能性が高い。

当オディシャ州(Odisha、総感染者数29万3000人超、回復者数27万8000人、死者1340人、ただし147地方議会議員の3分の1と10大臣、知事一家・秘書も感染)はこれを受けて、11月16日から9~12年生(日本の中学3年生から高校3年生)のみ一部開校、結婚式は200人まで、葬儀は50人までの人数制限のもとの開催を許可した。

開校基準は各州によってまちまちで、10月19日から早々と一部開校を決めた州には、パンジャブ(Panjab)、シッキム(Sikkim)、ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)などがある。

わが息子のRapper Big Dealの新作動画は、6日で30万超の視聴数を記録、今月中にミリオン突破は間違いなし!

当地プリー(Puri)のホテル街が、祭りシーズンに向けて、営業再開へと動き出したことは既にお伝えしたが、客足は鈍く、お祭りといっても、例年のような賑わいは全くなく、寂しいもんだ。まばらに自家用車で訪れる地元行楽客が、ディスカウントでお得になった中・高級ホテルを利用するのみで、小ホテル群は苦戦を強いられている。

当ホテル「ラブ&ライフ」も、10月27日に第1号をゲットして以降客足がパタリと途絶え、不振だ。開店休業状態になるのは、最初から覚悟の上だったが、あまりにも予想通りで落胆している。

がらんとしたホテル街、例年なら季節的にも絶好のシーズンなのに、オンにもかかわらずオフという異例さだ。

浜に出ると、ローカル客が20数人群れていたものの、中には、日帰り客もいるだろうから、何百とあるホテル群の需要を満たすには程遠い。

うろこ雲が淡いオレンジに染まる美しい黄昏どきを楽しむ旅客が少ないのは残念だ。コロナ下昔ののどかな楽園時代の輝きを取り戻したベンガル湾の壮麗さは胸を張って誇れるものなのに。

ヒンドゥ教徒の名高い巡礼地であるプリーだけに、メインテンプルのジャガンナート寺院(Jagannath Temple)が一般開放されないことには、巡礼旅行者も当分望めないだろう。400人以上の僧の感染歴があるだけに、州政府としても、慎重にならざるを得ないところだ。また、祭り後は第2波到来も懸念されており、警戒は緩められない。

客足が完全に戻るまでには、あとどの程度、待たなければならないのだろう。7カ月も休業要請を強いられたのだから、いまさらじたばたしても始まらない。気長に、待つしかない。

●身辺こぼれ話1/息子の新作大ヒットの予感

11月1日、コロナ禍で避難帰省中の息子(職業はミュージシャン、芸名Rapper Big Deal)の新作動画(ヒンディ語ラップ、テロップ入り)がリリースされた(https://youtu.be/Lr2smiQM2oQ)。

ビッグディールが子供時代からファンだったボリウッド界(ボンベイ=現ムンバイが本拠地のヒンディ映画界をハリウッドをもじってこのように通称)のスーパースター、シャールク・カーン(Shahrukh Khan)に捧げるラップで、ミリオンヒットの予兆を感じさせる出来栄えだ。

音楽・映像とも出色、私はどちらかと言えば、息子の作品に関しては、辛口派なのだが、この新作に関しては、これまでのベストと言っても過言でない仕上がりで、オディシャの旧州都カタック(Cuttack)で撮影されたことを思うと、驚喜の出来栄えだ。

エンタメ色の強い、軽快なビートに合わせてダンスを繰り広げる楽しい動画は、背景もポップでカラフル、田舎州のスタジオで、このようにハイクオリティの撮影ワークが可能とは、本当に驚かされた。これなら、何もわざわざ南や西の都会、バンガロール(Bangalore)やムンバイ(Mumbai)に住む必要はない。

編集は息子が自ら請け負っているので、どこにいてもできるし、近年技術もいちだんとアップしたようで手際が鮮やかだ。

ディールの作詞は常日頃定評があるが、トラック(曲)も軽快なビート調から美しいバラード調まで、バラエティに富んでいる。

制作部門は本人が一手に引き受けているとはいえ、絵を撮るにあたっては、専門のカメラマンや演出家、共演者、背景小道具係、ダンス振付師(コレオグラファー)の助力が必要で、今回はベストチームに恵まれたと感じた。

日本でも、リモートワークで田舎に移住する人が増えている昨今、息子もこの際、コロナ感染爆発都市ムンバイを引き払ってはどうかと思った。

●身辺こぼれ話2/マイクロ&ブルームーンを愛でて

ハロウィーンの夜、屋上に上ると、マイクロムーンかつブルームーンが、まだらなうろこ雲で覆われた高い天に煌々と浮いており、美しさに見とれた。

月の軌道が楕円形で、地球からもっとも遠く離れるときと、もっとも近づくときがあり、それぞれマイクロ(最小)ムーン、スーパー(最大)ムーンと言われるが、今回はマイクロで、確かにいつもより一回り小さいにもかかわらず(スーパームーンは直径14%大、30%増)、光輝は強く、シルバーライトのまばゆい光を発している。

もうひとつ、ブルームーンとは、1カ月に満月が2度見れることで、その2度目のものを指すが、数年に1度のまれな現象ゆえ、見ると幸せになれるとの言い伝えがあり、願いを引き寄せ幸を運ぶとされている。

10月31日は、マイクロムーンかつブルームーンということで、見れると、願いが叶ってラッキーと言われるので、千客万来を祈願した。

中秋の名月に、コロナ禍で疲弊した心がひととき慰められるようだった。明日は、明日の風が吹く・・・。気長に潮流が変わるのを待つしかない。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

11月20日現在、インドの感染者数は895万8483人、死亡者数が13万1578人、回復者が838万3602人、アメリカに次いで2位になっています。アメリカの感染者数は1152万7483人、死亡者数が25万0520人、回復者が435万0789人です。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。

また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています)