【ケイシーの映画冗報=2026年3月26日】今回は「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」(2026年)です。20世紀のはじめ。日露戦争(1904年2月から1905年9月)を戦った勇士である杉元佐一(さいち、演じるのは山﨑賢人)は、北海道に伝わる「アイヌ民族から奪われた金塊」の存在を知り、戦死した友の遺族のため、その金塊を追い求めることになります。

3月13日から一般公開されている「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」((C)野田サトル/集英社(C)2026 映画「ゴールデンカムイ」製作委員会)。興業通信社によると、3月13日から15日の初週でトップ10の3位、20日から22日の2週目で4位にランクされ、初日から3日間で観客動員が24万6900人、興行収入が3億6800万円を記録した。
その金塊を奪った「のっぺら坊」は仲間のアイヌ人たちを惨殺し、自身は網走の刑務所に収監されますが、その中で金塊の隠し場所を24人の囚人に刺青として残し、わざと脱獄させました。24枚の「刺青人皮」がそろうことではじめて、金塊の在りかがわかるというのです。
「のっぺら坊」に父を殺されたというアイヌの少女アシリパ(演じるのは山田杏奈、役名の「リ」は小文字)らと金塊と「のっぺら坊」を追うことに。
自分も刺青を背負いながら金塊を狙うのが死んだはずの新撰組の元副長だった土方歳三(ひじかた・としぞう、演じるのは館=たち=ひろし)の一派、さらには日本陸軍の中尉ながら、部隊から離れて独自の行動をとる鶴見篤四郎(とうしろう、演じるのは玉木宏)とその部下たちも争奪戦に加わり、たがいに牽制し、ときには銃火を交えながら、金塊の謎の根幹である「のっぺら坊」のいる網走監獄へと向かっていくことになるのでした。
前作「ゴールデンカムイ」もちょうど2年ほど前に本項で取り上げています(2024年2月1日号)。本作は映画としては2作目になりますが、ストーリーとしては映画のあいだに有料の連続テレビドラマとして「北海道刺青囚人争奪編」が作られているので、直接的な続編とはなっていません。
そのため、ドラマでの登場人物が前作の劇場版に加わったことで、キャラクターの相関がすこし、煩雑になった部分はあります。とはいえ、野田サトルによる原作のコミックは全31巻という長編ということから、原作コミックの流れに忠実に映画化していくのは難事であることを考えれば、この選択も許容できるのではないでしょうか。「原作を丁寧に(映像に)置き換える」ために劇場版と連続ドラマを組み合わせるというアプローチは、本作を鑑賞して、間違っていないと感じました。
本作で冒頭に、簡単ではありますが、これまでのストーリーの骨子が語られていますし、劇場版では初登場のキャラクターたちも個性豊かで各人が際立っていることから、一瞬、戸惑うことはあっても混乱することはありませんでした。
小説や原作のある映画作品には、どうしても避けて通れない関門が存在します。「原作と比較しての鑑賞」というもので、コミックやノベルスといった原典との対比というものです。コミックをアニメ化するのも安易な作業でありませんし、実写映画となると作画や文章とは、まったく異なる表現方法となりますから、原作コミックが人気作で、なおかつ長編となると、「映像化への難度」はさらに増していきます。過去には「タイトルが同一なだけ」「原作の良さがかき消されている」といった声が寄せられた映画化作品も少なくありません。
本作を監督した片桐健滋(かたぎり・けんじ)は、原作者である野田サトルとの交流について、こう述べています。「野田先生ご自身が、原作からの改悪を悪だと思っていらっしゃらないんです。ただ改変するんだったら、アップデートしましょうという方なので、いろいろなアイディアをいただけたのは大きかったですね」
生みの親である野田サトルご本人も、「長い原作のエピソードの一部を切り取った一本の映画作品として成立させるために、山場を作るべく私の判断で大きな変更をさせてもらいました」とご自身の判断による、「映画へのかかわり」にふれた後、こう続けています。
「(前略)実写版の改変を自分の手柄にしたいわけではありません。原作からのファンのみなさんにも違いを含めて素直に楽しんでいただきたいと思うからです」
前作を本項で取り上げたとき、「白銀の世界だけれど、ハリウッド謹製の西部劇のイメージ」が浮かんだことを記しましたが、本作でもその雰囲気が感じたのが、クライマックスの「網走監獄襲撃」の激闘です。
砦のような監獄内では、銃器だけでなく刀や素手での殴り合い、さらには西部劇風の決闘シーンまで盛り込まれており、「やはり西部劇の要素」を意識させられましたが、松橋真三(まつはし・しんぞう)プロデューサーの一文に、「今回はまさに“闇鍋ウェスタン”」(いずれもパンフレットより)とありましたので、自分の見立ても的外れではなかったと安堵しました。近年の映画界で屈指の力作となっており、本作だけでも楽しめる仕上がりとなっています。
次回は「俺たちのアナコンダ」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。