丸善丸の内で博物画展、ルドゥーテ、ナポレオン「エジプト誌」等

【銀座新聞ニュース=2020年4月1日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・丸の内本店(千代田区丸の内1-6-4、丸の内オアゾ、03-5288-8881)は4月1日から7日まで4階ギャラリーで「ボタニカルアート・博物画の世界展-植物・動物・風景・アンティーク版画」を開いている。

丸善・丸の内本店で4月7日まで開かれる「ボタニカルアート・博物画の世界展-植物・動物・風景・アンティーク版画」に出品される博物画。

植物画(ボタニカルアート)、博物画(ナチュラルヒストリー)などを扱う「オランジェリーコレクション」(狛江市和泉本町1-32-11、03-3489-3341)が主催する17世紀から20世紀にかけてヨーロッパで制作された植物画や博物画のコレクションを展示即売する。

ドイツ出身の希少な女流昆虫画家のマリア・メーリアン(Anna Maria Sibylla Merian、1647-1717)の作品、ベルギー出身で「バラの画家」として知られたピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ (Pierre-Joseph Redoute、1759-1840)のバラや樹木、フランスの軍人、政治家のナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte、1769-1821)の「エジプト誌」(1809年から1822年)などを紹介する。また、絵本のさし絵や、手軽に楽しめる好評の図譜シートも充実させている。

ウイキペディアによると、ボタニカルアート(植物画)とは古代エジプトや中国などで薬草を見分けるために図譜が作られたのがはじまりで、大航海時代になって、ヨーロッパ各国が世界各地を探検するようになり、植物学者と画家が一緒に組んで珍しい植物の詳しい絵が本国に送られ、それらの絵が英国やフランスで19世紀に大流行した。植物の姿を正確で細密に描く植物図鑑のための絵画とされている。

博物画は動物、植物、鉱物などの観察対象の姿を詳細に記録するために描かれる絵で、植物画(botanical art)と動物画(zoological art)に大別され、動物画はさらに外形を描く肖像画(portait)と内部を描く解剖画(anatomical art)に区分されている。

科学性が重視され、正確な観察には博物学や解剖学の知識も不可欠であり、学者の指示によって作画された。屋外で素早く写生する必要性から速乾性のガッシュが用いられ、後にこれを銅版画に起こし、点描で陰影をつけ手彩色も行われるようになった。19世紀に写真が登場しても、描いた者の手と認識を通した写真にはない説明性と抽象化があるため、今日でも図鑑や医学書などではイラストが用いられ続けている。

ルドゥーテは1759年南ネーデルラント生まれ、1784年から1785年にかけて「新種植物の記述」を出版し、その挿し絵を担当し、1789年に王妃マリーアントワネット(Marie-Antoinette-Josephe-Jeanne de Habsbourg-Lorraine d’Autriche、1755-1793)の蒐集室付素描画家の称号を得た。

1793年に自然史博物館付植物画家、1802年から1816年にかけて「ユリ科植物図譜」を出版、1817年から1821年にかけて「バラ図譜」を出版、1822年に自然史博物館付図画講師、1827年から1833年にかけて「名花選」を出版した。1840年の没後の1843年に「王家の花束」が刊行された。

ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte、1769-1821)の皇后ジョゼフィーヌ(Josephine de Beauharnais、1763-1814)が1799年に購入し、1810年1月に離婚した後、余生を送ったマルメゾン城で250種類のバラを庭に植え、自らバラを愛でるだけでなく、後世の人々のためにと、集めたバラをドゥーテに描かせて記録に残している。今日でもバラには「ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ」という品種がある。

ナポレオンの「エジプト誌(正式書名は「ナポレオン皇帝陛下の命により出版された、フランス軍エジプト遠征中の観察・研究の集成と記述」)」は111センチ長のダブルエレファント判を含む全23巻の巨大なセットだ。

1798年にナポレオンは約5万人の大軍や学士院の協力を得て、167人の学術調査団を加え、エジプト遠征に乗り出し、そこでは、考古学、美術、博物学を中心とした綿密な調査が行われ、多くの収集品がフランスへ持ち帰られようとした。その帰途、アブキール湾において、ネルソン提督(Horatio Nelson、1758-1805)率いる英国海軍に大敗し、アレクサンドリア協定により「ロゼッタ・ストーン」をはじめとする収集品の多くが英国に接収された。しかし、調査の際作成していた多くの資料をもとに、当時のフランスが国力をあげて出版したナポレオン勅命の書が「エジプト誌」だ。

「エジプト誌」は全23巻のうち、テキスト9巻(415ミリX280ミリ)、図版14巻(735ミリX555ミリ)、うち3巻はエレファント判と呼ばれる超大判(1110ミリX730ミリ)で構成されている。本セットの古代編と博物編には計45枚のカラー図版が含まれている。資料ではカラー図版は72枚含まれることになっているが、国内所蔵のセットを調査したところ、カラー図版の枚数はさまざまで、平均すると40枚前後とされている。

オランジェリーコレクションは大根均(おおね・ひとし)さんと大根恒子(おおね・つねこ)さんが1992年10月に設立した植物画(ボタニカルアート)、博物画(ナチュラルヒストリー)などの作品を取り扱う会社で、丸善をはじめ、三越、阪急、伊勢丹、高島屋などで版画展を開いている。

開場時間は9時分から21時(最終日は16時)まで。入場は無料。