シリーズは2本目が重要を、予想外の展開で証明した「96時間」(100)

【ケイシーの映画冗報=2013年1月17日】「96時間 リベンジ」。この作品は、以前、本コーナーで取り上げた「96時間」(TAKEN 、2008年)の続編です。

現在、一般公開中の「96時間 リベンジ」((C)2012 EUROPACORP-M6 FILMS-GRIVE PRODUCTIONS)。制作費が4500万ドル(約45億円)で、興行収入が約3億6510万ドル(365億1000万円)と「PG-13」(13歳未満は親の同伴が必要)指定作品で最高値を記録した。

元CIA(アメリカ中央情報局)エージェントだったというブライアン(演じるのはリーアム・ニースン=Liam Neeson)が、ひとり娘を人身売買組織にさらわれたことから、単身でパリへ飛び、「かつての仕事で身につけた特殊なスキル」を駆使して救出するという前作は、制作費1億ドル(約100億円)オーバーが普通というハリウッドの超大作にくらべれば小粒(制作費はおよそ3000万ユーロ=約30億円)ながら、そうした作品に引けをとらない大ヒットを記録、主演のニースンを「遅咲きのアクション・スター」として知らしめることになりました。

一説に「シリーズものの映画は2本目の出来で決まる」とされています。第1作が「シリーズ化を前提」として作ることは「危険な賭け」であるからです。映画は公開しなければ、どう評価されるかわかりませんから。

もっとも、最近では複数作が前提となっているシリーズ(前回の「ホビット」も同様)も存在します。この場合は、まず担保として原作の知名度や監督の評価が確立していることが前提で、複数本をまとめて撮影することで経費を圧縮したり、撮影の効率化をはかるといった、実利面でのメリットが大きいようです。

続編制作の難関は、再結集するスタッフ・キャストのスケジュールにもあります。本当に1本の作品で一気にメジャーになる世界ですから、予想外のギャラの高騰や、急にスケジュールがビッシリ、ということも珍しくありません。一方で、「(あのヒット作に)世話にはなったが、あの監督やスタッ フの作品には2度と関わりたくない」といった感情面での軋轢(あつれき)が生じることもあります。

本作ではそのようなことはなかったようで、監督こそ変わってしまいましたが、脚本やキャスト陣はわずかな出演シーンであっても前作と同じで、世界観はキチンと踏襲されたものとなっています。

シリーズ作品において重要なことだと個人的に考えているのが、「前作が続編に正しい影響を与えているか」という部分です。作中の登場人物たちが、シリーズのお約束ともいえる部分をきちんと表現しなければ、「人気作の続編」である必然性がなくなってしまいます。

しかし、一方でこうした「お約束」だけにとらわれてしまうと、ストーリーにも登場人物にもまるで変化のない、「同じような事象をこなしていく」だけの金太郎飴のような作品になってしまうこともありますから、そのあたりのバランスをとるのも重要な要素となります。

じつは、最初に「『「96時間』の続編が進行中」ということを知ったとき、一番気になったのが、「どうやって2作目を仕立てるのか」でした。前作で、娘のために「必要ならエッフェル塔だって倒す」と豪語したブライアンのキャラクターは、完全に確立しています。

続編でも前回同様、娘を助けるために、立ちふさがる障害をすべてなぎ倒していく姿を、なんの工夫もなく撮れば、単なるコピーで終わってしまいます。異国であるトルコのイスタンブールで、要人警護を終えたブライアン(ニースン)は、再婚相手と揉めている元妻のレノーア(演じるのはファムケ・ヤンセン=Famke Janssen)と、かつて救出した娘のキム(演じるのはマギー・グレイス=Maggie Grace)と現地で合流します。

かの地で、壊れてしまった家族関係を修復しようというのがブライアンの願いでしたが、現地には、かつてブライアンにせん滅された誘拐(ゆうかい)組織の元締めで あるアルバニア系マフィアが、復讐(ふくしゅう)の網を張りめぐらせていたのです。

今回連れ去られる(原題の「テイクン(TAKEN)」は「連れ去られる」の意味も)のは、なんとブライアンと元妻のレノーア。助けに行くのではなく、主人公が拉致されてしまうという展開は、想像の埒外でした。「何があってもパパが助けにいく」という当人が囚われの身となったのですが、そこは「特殊なスキルをもつプロ」であるブライアン、用意周到という言葉がそのまま存在するような人物ですので、ホテルに残された娘のキムと協力して、レノーアの奪還に邁進(まいしん)していきます。

30年以上という俳優生活の中で、主演作の続編ははじめてというニースンは、自身の成功条件を「ベリー・ラッキー」と言えるような好人物として知られています。自分の人生をあっさり「ラッキー」と断言できるということで、ご本人の素直な性格も想像がつきますね。

実は当コラムは今回で100回となりましたが、一番、取り上げた役者はこのニースンだったはずで、ゲスト出演も含めて、今回で7本目となります。この優しげな193センチの好漢に、自分も見入られてしまっていたようです。次回は「ted テッド」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します)。