丸善丸の内で聖書と日本美を描いた渡辺禎雄生誕100年記念版画展

【銀座新聞ニュース=2013年1月29日】丸善・丸の内本店(千代田区丸の内1-6-4、丸の内オアゾ内、03-5288-8881)は1月30日から2月5日まで4階ギャラリーで渡辺禎雄による「型染版画展」を開催する。

丸善・丸の内本店で1月30日から2月5日まで開催される渡辺禎雄の「型染版画展」に展示される「バベルの塔」(1965年)。

独自の型染め版画でキリスト教の精神を描いた渡辺禎雄(わたなべ・さだお、1913-1996)の作品展で、その作品はバチカンのシスティーナ礼拝堂に10点が飾られている。今回も「世界に誇る日本の美と聖書の心の結実」との副題で、1月29日に生誕100年を迎えて画集「渡辺禎雄聖書版画集」(新教出版社、5250円)が刊行されるのを記念して、画集収録作品をはじめ、約100点を展示販売する。

「渡辺禎雄聖書版画集」は代表作70点余を収録しており、元上智大学学長でカトリック大司教、バチカン教皇庁立科学アカデミー・社会科学アカデミー会長、バチカン教育省局長などを務めたヨーゼフ・ピタウ(Joseph Pittau)さんによると、バチカン美術館に40年前に購入された渡辺禎雄の作品がいつも10点展示されており、「日本で生まれた伝統の方法が使われ、特徴ある色も日本人ならではの色です。描かれているのは聖書の世界と心、そして何より彼の祈りでした。渡辺禎雄は美と信仰の一致を実現した、まれにみる芸術家」と評している。

「フィリア美術館」(山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3476-76)のHPによると、渡辺禎雄は10代半ばから働き、職業を転々としたが、24歳の時に染物屋での紋様の下絵を描く仕事に就き、創作版画としての「型染版画」と出会い、柳宗悦(やなぎ・そうえつ、1889-1961)の「民芸運動」の影響を受けながら、「聖書」の世界を描いた。

しかも、聖書を題材としながらも菊や朝顔など日本の草花を登場させたり、食卓に寿司やタイの尾頭付きを並べたり、うちわを手にした人を描いたりと、日本の文化を組み合わせ、独自の世界を表現した。

「型染め版画」とは伝統的な染色の技法を使った版画で、着物などを染める際に型紙を使って布の上に防染糊を置き、染色するが、その技法を版画に応用したのが型染め版画だ。布の代わりに和紙(または合成紙)に染色していくが、その際に、最初に染めない部分に糊を置くという方法を用いる。

渡辺禎雄は1913年東京都生まれ、1947年に第1回日本民芸館賞を受賞、アメリカ・ニューヨーク聖ジェームズ教会主催の「現代日本画展」にて1等賞を受賞、1970年代以降にアメリカ、ヨーロッパ各地で作品展を開き、 1993年に日本キリスト教文化協会より文化功労賞を受賞、1996年に死去した。2004年にローマ日本文化会館の主催により個展を開催している。生涯に約1000点の型染版画を制作した。

開場時間は9時から21時(最終日は17時)まで、入場は無料。