丸善日本橋店が慶応義塾複式簿記展、友岡賛がトーク

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【銀座新聞ニュース=2012年10月23日】丸善・日本橋店(東京都中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は10月24日から10月30日まで3階ギャラリーで「第24回慶応義塾図書館貴重書展示会」を開催する。

丸善日本橋店 慶応義塾

丸善・日本橋店で10月24日から30日まで開催される「第24回慶応義塾図書館貴重書展示会」のポスター。

「第24回慶応義塾図書館貴重書展示会」は「ルカ・パチョーリの『スムマ』から福沢へ-複式簿記の伝播と会計の進化」と副題がつけられ、慶應義塾図書館が所蔵するイタリアの数学者、ルカ・パチョーリ(Fra Luca Bartolomeo de Pacioli、1445-1517)の1494年に「スムマ」と呼ばれる数学書を著「スムマ(Summa)」(1494年)や1873年に福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち、1835-1901)がアメリカの簿記教科書を翻訳した「帳合之法」などの書籍36点を厳選して展示する。また、福沢諭吉の自筆による「草稿・帳合之法」も含まれている。

慶応義塾図書館では14、15世紀のイタリアから16、17世紀のネーデルラント(オランダ)から18、19世紀のイギリスという複式簿記の伝播が当時の経済発展の道筋と重なり、経済の発展による事業規模の拡大や事業形態の複雑化が、それらを記録するために複式簿記が用いられたことがよくわかる展示となっている。

ウイキペディアによると、「複式簿記(Double-entry bookkeeping system)」は12世紀頃のアッバース朝のイスラム商人によって発明され、リスク、チェック(小切手)などの言葉もアラビア語由来であり、起源はイスラム世界という。その後、複式簿記の仕組みはベネチアやジェノバの商人を経てヨーロッパにもたらされた。

1494年にイタリアの商人出身の数学者ルカ・パチョーリによって書かれた「スムマ」(算術・幾何・比及び比例全書)の中で「簿記論」に触れて以後、複式簿記は広くヨーロッパで行われた。18世紀末期、ドイツの作家ゲーテ(J.W.von Goethe、1749-1832)は複式簿記の知識の重要性を認識し、ワイマール公国の大臣であった時に学校教育に簿記の授業を義務付けたと言われている。イギリスのエドワード・トーマス・ジョーンズ(Edward Thomas Jones)は独自の複式簿記(イギリス式簿記)を考案して会計学の分野で論争を巻き起こした。

日本では、江戸時代に大福帳(売掛金元帳)などによるそろばん使用に適した独自の帳簿システムが確立しており、その中には複式簿記の萌芽も見られたが、本格的な複式簿記の導入は1873年に福沢諭吉がアメリカの簿記教科書を翻訳した「帳合之法」を刊行、同年に大蔵省紙幣寮にて御雇外国人のアーラン・アレグザンダー・シャンド(Allan Alexander Shand、1844?1930)の講義を翻訳した「銀行簿記精法」が刊行され、以後次第に洋式の複数簿記に取って代わった。

「慶応義塾」は福沢諭吉が1858年に中津藩江戸藩邸で開いた蘭学塾が起源で、1863年に蘭学塾から英学塾に改め、1868年に芝新銭座(現港区浜松町)の有馬家控屋敷跡に移転し、年号をとって「慶応義塾」と定めた。「義塾」とは英語の「public school」(共立学校)の訳語とされている。1866年に親藩・紀州徳川家の藩命を受けて紀州藩士を迎えて塾舎内に「紀州塾」を開設、この他、幕末にかけて「志摩三商会」に脈絡のある三田藩の藩政改革に携わる。

1871年に三田(港区三田)の島原藩中屋敷跡地を貸し下げられ、現本部所在地に移った。明治以後、官公私立問わず、近代日本の教育制度、大学制度の立ち上げモデルになり、後に私立大学となる学校の中で最初に授業料を徴収した。1873年に「慶応義塾医学所」を開設、1873年に修業年限を定めて「正則・変則両科」を新設、1875年に「本科・予備科」となり、1876年に土佐立志学舎の運営に参画した。

1877年に神戸商業講習所を開校・運営、同年に本科第三等以上修了者に徴兵免役の指令が出され、1896年に改正微兵特典適用、1899年に海軍少主計候補生の受験資格を得た。1920年に大学令による日本最初の私立大学(旧制大学)として新発足した。

10月26日と10月27日、いずれも14時から今回の監修者で、慶応義塾大学商学部教授の友岡賛(ともおか・すすむ)さんによるギャラリートークを開く。

友岡賛さんは1982年に慶応義塾大学商学部を卒業、1984年に同大学商学研究科修士課程を修了、1987年に同大学商学研究科博士課程を単位取得退学、1984年から1989年まで慶応義塾大学商学部助手、1989年から1996年まで同大学商学部助教授、この間、1990年から1992年までグラスゴウ大学特別客員研究員(法財務学部)。

1993年から2001年まで国税庁税務大学校講師、1996年から慶応義塾大学教授、2003年から2004年まで知的財産総合研究所客員研究員、2003年から2005年まで慶応義塾大学国際センター副所長、2005年から2009年まで同大学日本語・日本文化教育センター所長、2011年10月から同大学国際センター所長。

開場時間は9時30分から20時30分。入場は無料。ギャラリートークも無料。