蔦屋書店で堀江栞展、人々の記憶の蓄積から内面の痛みを描く

【銀座新聞ニュース=2024年5月10日】書店やレンタル店、フランチャイズ事業などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(渋谷区南平台町16-17、渋谷ガーデンタワー)グループの銀座 蔦屋書店(中央区銀座6-10-1、GINZA SIX、03-3575-7755)は5月11日から31日までアートウォールで堀江栞さんによる個展「仮定法のない現在」を開く。

銀座 蔦屋書店で5月11日から31日まで開かれる堀江栞さんの「仮定法のない現在」に展示される「輪郭#19」(和紙、岩絵具、2024)。

動物や石、人形、人など「痛みや悲しみを内包したもの」をモチーフに、岩絵具を用いて描く堀江栞(しおり)さんは細い筆で絵具をぼかすことなく何層にも塗り重ねることで、対象のもつ要素を余すことなく描き込んでいる。

多摩美術大学を卒業して、しばらくは動物や石、人形のみをモチーフとしており、動物園などで対象の観察を続け、その経験を重ねるうち、堀江栞さんは自分が心惹かれているのは表層ではなく、内面的な痛みや悲しみを内包する存在なのだと気づいたという。

その後、2016年に制作のため1年間滞在したパリで、多くの人々が祖国を追われ難民となって助けを求める光景を目の当たりにし、人を描かなければならないと思い至り、現在は特定の人物をモデルにするのではなく、出会った人々の記憶の蓄積からイメージを取り出している。どんなモチーフも、痛みや悲しみを抱える存在の声を聞き漏らさぬよう、モチーフに寄り添い対話を重ねながら描き続けている。今回は現在を表す人物画を中心に、自身のスランプ時期を救った水彩画作品も合わせて展示する。

堀江栞さんは「厳しさを正しく受け入れたときにのみもたらされる、原型としてのやさしさ。その源を信じて、私は目のまえに差し出されたあまりに見やすい擬餌鉤(ぎじばり)を、勇気をもって回避し、痛みを負った。おそらく、それは自分ひとりの痛みではなく、すでにどこかで、だれかが引き受けてきたものでもあっただろう。いまを嘆き、先々の不確実さを案ずるために、見栄えのいい文法に従うのはしばらく止めよう。やさしさの原型を使って、私の、私でないひとの『現在』を、あきらめずに描きつづけていきたい」としている。

銀座 蔦屋書店で個展を開く堀江栞さん。

堀江栞さんは1992年フランス生まれ、2014年に多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻を卒業、2011年に第28回FUKUI(福井)サムホール美術展で佳作(2012年に奨励賞)、第11回福知山市佐藤太清(さとう・たいせい、1913-2004)賞公募美術展で特選、板橋区長賞、
2015年に五島記念文化賞で美術新人賞を受賞し、奨学生としてパリに1年間滞在し、制作する。

2015年に第6回東山魁夷記念日経日本画大賞で入選(2024年にも入選)、五島記念文化賞で美術新人賞、2020年に第6回世田谷区芸術アワード“飛翔”美術部門、2021年に「VOCA展2022現代美術の展望-新しい平面の作家たち」でVOCA佳作賞、第32回タカシマヤ美術賞などを受賞している。現在、多摩美術大学日本画科非常勤講師。

開場時間は10時30分から21時。入場は無料。作品は会場で11日10時30分から販売する。また、13日10時30分からオンラインマーケット「OIL by 美術手帖」(https://oil.bijutsutecho.com/gallery/730)でも販売する。