帰印前に温泉巡りや中学同窓会、インドも旅企画、中東へも(140)

【モハンティ三智江のインドからの帰国記=2023年11月14日】いよいよ帰印が間近に迫ってきた。慌ただしい日々を送る中、温泉ラッシュ、実に5、6年ぶりに富山・上市(かみいち)町の大岩不動の湯(真言密教の大岩日石寺から徒歩15分)、加賀温泉郷(石川県加賀市)では山中・山代は既に訪ねたが、まだ行ってなかった片山津温泉を訪れ、柴山潟に群れる水鳥をガラス窓越しに眺めながら総湯(共同浴場)を満喫、近日中に宇奈月温泉も訪ねる予定でいる。

大岩日石寺(富山県中新川郡上市町、725年行基=668-749=の開基)は、真言密教大本山の寺院で(通称大岩不動)、凝灰巨岩(ぎょうかいきょがん)から彫り起こされた不動明王像は見もの(像高2.8メートルの磨崖仏は国の重要文化財)。山間の広い境内にある藤の大木の根元に湧く清水(霊水)で目を洗った盲人が目あきになったとの伝説もあり、眼病に効験あらたか。

合間を縫って、さる10月27日、中学時代の同窓会にも出席、ジジババに変貌したクラスメイトたちに53年ぶりに再会し、懐かしく楽しいひとときを分かち持った。それにしても、浦島太郎じゃないけど、玉手箱を開けたら、紅顔の美少年・美少女が白髪に皺、禿げと様変わり、記念写真撮影で、卒業写真と比較しての劣化が、悲しくて笑えた。

インドでも、旅の予定が盛り沢山。オディシャ州(Odisha)1周や、息子のフィアンセのベースであるドバイ(Dubai)と、とにかく、目一杯楽しむのが今回のテーマ。

しかも、初の関西国際空港発着でこれまた初のベトナム航空便、期待と不安こもごもだが、欲張な私は早めに大阪に出て、明石や神戸(再訪)も楽しむつもりでいる。

なお、インドからの帰りの便では、19時間の長い待ち時間を利用しての首都ハノイ(Ha Noi)観光も予定していて、楽しみだ。

※時間がなくて、6月に行った雨晴(あまはらし)海岸と氷見や、海王丸(航海練習帆船)パークと万葉線沿線沿いの日帰りツアー(いずれも富山県)の旅ルポを送れなかったのが心残りだが、氷見は超オススメ。

万葉線沿線沿いでは、乗り放題の切符を買って、ふらりと下車した庄川口駅が素晴らしかった。穏やかな川が海へと流れ込み、荒い潮流に変わるダイナミックさ、旅情をそそる鉄橋との対比、彼方の煙突から立ちのぼる白い煙が雲と融合する空の不思議、自然の神秘に感動した。

大岩日石寺周辺はハイキングスポット。白い水しぶきをあげる渓流(大岩川)に、紅葉した低木の対照が美しく、釣瓶落としの日が落ちると、麗しい銀月が宵闇に浮かんだ。

〇映画あれこれ
金沢市内の繁華街・香林坊の109に入っているミニシアター・シネモンドはお気に入りの映画館だ。内外問わず選りすぐりの名画を上映してくれるので、見逃せない。会員カード(シニアは1000円で、ポイントを20Pためると、1本無料。映画料金は100円安の1200円)を作った私は週2度の割合で通っているが、以下は昨秋、観て印象に残った映画の短評。

●「2046」(2004年)
香港映画というと、ブルース・リー(Bruce Lee、1940-1973)のアクションものしか頭に浮かばなかったが、この作品はロマンス映画で、監督のウォン・カーウァイ(王家衛、1958年生まれ)は、数々の受賞歴があり、有名らしい。ちょうど2022年10月1日から14日まで同監督の特集で、5作品を日替わり上映していた。たまたま飛び込んだ「2046」だったが、当時日本のトップアイドルだった木村拓哉(1972年生まれ)がゲスト出演していたのも、食指が動いた理由。

舞台は1967年の香港、主人公は作家で「2046」という近未来小説を執筆中。失くした愛が取り戻せると信じられた2046年行き列車には、美しいアンドロイドの客室乗務員が乗っていた。

大岩日石寺から徒歩15分で、大岩不動の湯へ。山小屋のような簡素な造りの秘湯は、版画家・棟方志功(1903-1975)も愛好した。露天の岩風呂は穴場で超オススメ、一隅に小さな不動明王像があり、夜になると、石灯籠(いしどうろう)に灯がともり、ジャズのBGMと相まってムード満点だ。

木村拓哉は、小説の主人公の役柄で、劇中劇。主役のトニー・レオン(Tony Leung、梁 朝偉、1962年生まれ)が渋くて魅力的で(第24回香港電影金像奨で最優秀主演男優賞)、同じアパート暮らしの美娼婦との絡みがよかった。未来映画の要素もあり、木村拓哉もちょい役だったが、色を添えて楽しめた。

後日、同映画シリーズ前編にあたる「花様年華」(2000年)も観たが、同作はカンヌ国際映画祭の男優賞はじめ数々の受賞歴にもかかわらず、私には外れだった。

●「甘い秘密」(1971年、吉村公三郎監督=1911-2000、松竹)
原作は、徳田秋声(1872-1943)の自身の体験が基の赤裸々な私小説「仮装人物」(1938年、中央公論社)。金沢三文豪映画祭(2022年10月15日から21日まで日替わり3作公開)で、一律1000円の特別料金。主演のヒロイン役は佐藤友美(1941年生まれ)だが、20代の若い頃で、美しくて見とれた。

私世代が見ていたドラマでは、大人の成熟した女のイメージしかなかったけど、若い頃はこんなにきれいだったんだと大発見、お話も、作家志望の奔放な女性が妻に先立たれた老作家(小沢栄太郎=1901-1988)と関係を結んで、野望を果たしていくという興味深い筋書きだった。ヒロインが他に肉体関係を結ぶ3人の男のうち、装丁画家(モデルは竹久夢二=1884-1934)は細川俊之(1940-2011)が演じ、出版社の編集者は伊丹十三(1933-1997)が演じていた。脚本は、徳田秋声ファンの進藤兼人(1912-2012)。

霊峰白山を映す柴山潟に浮かぶ小さなお堂、浮御堂(うきみどう)。浮桟橋を伝って中に祀られた弁天龍神像に参拝、「うきうき弁天」との愛称もあり、夜は沖合の噴水(70メートル高)とともにライトアップされる。

※「仮想人物」の原作(徳田秋声)を読んだ。映画では、佐藤友美演じるヒロインは男から男に渡り歩く奔放な悪女のように描かれていたが、不幸な結婚の犠牲者で、子ども思いの母親だし、かえって徳田秋声自身がモデルの作家である男性主人公の方が、ずるく感ぜられた。

境遇に踊らされた不幸な女性で(本名は山田順子(ゆきこ)=1901-1961=で美人、徳田秋声が晩年書いた私小説は順子ものとして有名)、再婚寸前まで関わった年長のベテラン作家(徳田秋声)がもう少し、援助していたら、ひとかどの女流作家にのし上がっていたかもしれない(ウィキペディアでは、山田順子は一応小説家ということになっており、著書は10冊)。結局、若い女の野望と才能を妨害したのは、既に作家としての地位を確立していた男の主人公にほかならず、当時の男尊女卑の時代風潮を思うにつけ、ヒロインの哀れさが極まるようで、同性としての同情を禁じえなかった。

(「インド発コロナ観戦記」は、92回から「インドからの帰国記」にしています。インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いてきましたが、92回からはインドからの「帰国記」として随時、掲載します。

モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。また、息子の「Rapper Big Deal」はラッパーとしては、インドを代表するスターです。

2023年9月4日付で「CoronaBoard」によるコロナ感染者の数字の公表が終了したので、国別の掲載をやめてます。編集注は筆者と関係ありません)