資生堂でアートエッグ展、林田真季、野村在、岩崎宏俊が競う

【銀座新聞ニュース=2024年1月27日】国内最大の化粧品メーカーの資生堂(中央区銀座7-5-5、03-3572-5111)は1月30日から5月26日まで資生堂ギャラリー(中央区銀座8-8-3、東京銀座資生堂ビル、03-3572-3901)で「第17回shiseido art egg展」を開く。

資生堂ギャラリーで1月30月から5月26日まで開かれる「第17回shiseido art egg(シセイドウ アートエッグ)展」で、1月30日から3月3日までの個展に出品され林田真季さんの「From the series Almost Transparent Island(フロム・ザ・シリーズ・オルモスト・トランスペアラント・アイランド),2017-2019」。

「shiseido art egg(シセイドウアートエッグ)」は資生堂が2006年からはじめた若手作家を対象にした公募展で、応募者の中から3人を選んで、1月から5月にかけて個展を開き、最終的に「アートエッグ」賞(賞金20万円)を決める。

最終審査に挑む3人を選ぶのは、美術家の鬼頭健吾さん、音楽家、アーティストの蓮沼執太さん、國學院大學教授で、神話学者の平藤(ひらふじ)喜久子さんの3人。

17回目は351件の応募があり、その中から1984年大阪府生まれ、2007年に関西学院大学総合政策学部を卒業し、2022年から2023年にかけて英国ロンドン芸術大学ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションMA Photography(フォトグラフィ)に在学している林田真季さん。

1979年兵庫県生まれ、2009年に英国ロンドン大学ゴールドスミス校でMFAを取得し、2013年に武蔵野美術大学造形研究博士後期課程造形芸術専攻作品制作研究領域を修了している野村在(ざい)さん、1981年茨城県生まれ、2006年に多摩美術大学情報デザイン学科を卒業、2008年に東京藝術大学先端芸術表現科修士課程を修了、2019年に同大学大学院美術研究科先端芸術表現領域博士後期課程を修了、名古屋造形大学准教授の岩崎宏俊さんの3人が順次個展を開く。

1月30日から3月3日まで林田真季さん、3月12日から4月14日まで野村在さん、4月23日か5月26日まで岩崎宏俊さんがそれぞれ個展を開く。

林田真季さんについては、現実社会をテーマにあらたなアートとしての写真の可能性を探求している。資生堂では、人間による利己的な行動が予期せぬ結果をもたらすという「意図せざる結果」の法則に着目し、そのアプローチは、リサーチに労と時間を費やすプロジェクトでもあり、テーマは英国沿岸部の過去のごみ埋立地の姿と日本各地の大規模不法投棄事案を問題とし、写真による視覚的ドキュメントと空間的なイメージの奥行きは、独自のインスタレーションを構成し、鑑賞者を新たな現実の考察へと導くとしている。

林田真季さんは「ロンドンで学んで約1年、アートとしてのphotography(フォトグラフィ)の捉え方が大きく変わりました。同時に、photographyというメディアがより好きになり、それを現代アートとして、また異文化の表現として向き合いたいという、制作活動の方向性が定まりました」としている。

同じく3月12日から4月14日まで開かれる野村在さんの個展を出品される「Soul Reclaim Device(ソウル・リクレイム・デバイス)」 (“A portrait of my departed sister”、ア・ポートレイト・オブ・マイ・デパーテッド・シスター、2018年、水槽、水、インクジェットプリンター ギャラリーαM)。

野村在さんについては、変容し続ける情報媒体を独自の視点で捉え、人間の本質や存在の在り方を問いかけている。野村在さんは、写真や彫刻を素地としたさまざまなメディウムを通して、生と死やその間に横たわるものを露わにすることを試みており、今回は亡くなった人の写真を水に印刷する写真装置や、今後、数十年間において稼働し続けるパフォーマティブな作品を発表する。「過去、現在、未来が交差し、アナログからデジタルへと変容する情報媒体を独自の視点で捉え、人間の本質や存在の在り方について問いかける」としている。

野村在さんは「繰り返される紛争や疫病、人種間の深い溝や大規模な気象変動と共に歩んでいくこれからの100年は、私たちの日々の些細な選択に大きく委ねられていることも実感しています。いつしか人類が宇宙人と出会うその時に、年齢や国籍、性差や外見に囚われない、平らかな存在として対話ができるよう願いながら」制作している。

岩崎宏俊さんについては追憶をテーマにしながらロトスコープ(モデルの動きをカメラで撮影し、それをトレースしてアニメにする手法)を用い、アニメの芸術表現としての可能性を探っているとしている。資生堂では、実写映像をトレースしてアニメを制作するロトスコープという手法に着目し、芸術表現としての可能性を探求し、パンデミックの影響で直接会うことの叶わなくなった人や残された風景の記録映像をトレースしている。

同じく4月23日から5月26日まで開かれる岩崎宏俊さんの個展を出品される「DARK MIXER(ダーク・ミキサー)」(2014-2019、アニメ、インスタレーション)。

岩崎宏俊さんがその行為が追憶であると捉え、大プリニウス(Gaius Plinius Secundus、23-79)が「博物誌」に記した絵画の起源、「ブタデスの娘」が離別する恋人の影の輪郭を壁に写した行為と重ね合わせ、ロトスコープを通じ、描くことや記憶の在り方を問い直す試みとしている。

岩崎宏俊さんは「パンデミックによって行動が制限されシンプルになっていく身振りの中で、私は追憶について考えるようになっていました。これに端を発した作品を記憶を紡ぐ唐草模様を冠する資生堂のギャラリーで展示できることに縁を感じつつ、また同時にアニメーションという表現がギャラリーという空間の中でどこまでやれるのか、美術と交わり再考する契機になってほしい」としている。

開場時間は11時から19時(日曜日、祝日18時)、毎週月曜日が休み(祝日でも休み)。入場は無料。