インド、デルタ抑制下、東京五輪でホッケー41年ぶりメダル(78)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2021年8月27日】当オディシャ州(Odisha)は8月1日から、ロックダウン(都市封鎖)解除がさらに進み、ホテル・レストランの再開営業が認められたことで、途端にプリー(Puri)のホテル街は活気づき出した。

閑散としていたプリーの浜に人出が戻った。久々に観光用ラクダも顔見せ、3カ月ぶりに商売再開へ。

この3カ月の静けさが一転して、西と東の浜に乱立する800強のホテル群は門を開け、ローカル旅行者を歓迎、にわかに街が蘇った。

が、当「ホテル・ラブ&ライフ」は、現地親族に不幸があったため、忌中で門戸は閉じたままである。

それに、本来ならオフの雨季のため、人出はさして多くなく、大型・中型ホテルが、主に自家用車で訪れる富裕層でいくらか埋まっている程度だ。しかも、当地は週末封鎖が続いているため、人出が見込めるウィークエンドががら空きで、ホテル側としては、フル稼働には今ひとつの状況だ。

しかし、8月16日には、グランドロードの著名寺院、ジャガンナート(Jagannath)テンプルが開院するので、巡礼旅行者が徐々に増え出すはずだ。

さて、そんな当オディシャ州(人口4600万人)の感染現況は、新規陽性者数が1000人前後で推移(11日付け1041人)、累計数はミリオンに届く勢いだが(98万9000人)、実質1万0682人、死者も6565人(新規64人)と少なめた。ワクチン接種も進み、州都ブバネシユワール(Bhubaneswar)は、1回接種者(18歳以上)の比率が100%を達成し、称賛されている(インド全土の1回接種者は4億人超)。

州政府は早々と、9月から10月にかけて目白押しの秋祭時の規制を発表、ガネーシャ神(Ganesa)やサラスワティ女神(Sarasvati)、ドゥルガー女神(Durga)の偶像が祀られる仮設テント(パンダル)は、入場1度につき7人までと制限した。

全国(人口13億6641万人)の新規陽性者数は3万8353人で、ここしばらく4万人前後で推移(累計3200万人、死者42万9000人)と、コントロール下にある。新規数が目立って多いのが南部ケララ州(Kerala、人口3460万人)で、2万人前後で推移、本日は2万1119人(累計359万人)と、累計・死者数ではワースト(累計636万人、死者13万5000人)のマハラシュトラ州(Maharashtra、人口1億1420万人、新規5609人)の4倍弱だ。

というわけで、デルタ株本国のメガ第2波は、イベルメクチン(コロナに効くと言われる大村智博士発明の抗寄生虫薬)とロックダウンのおかげで収束しつつあるが、アメリカはじめアジア諸国で猛威をふるっており、懸念される。パンデミック(世界的大流行)下敢行した東京オリンピックが成功に終わったのは嬉しいが、その一方で、世界的に大規模なスポーツ大会の開催が日本国民に気の緩みを与え、首都圏の感染爆発を招いた事実は否めない。

末世的な疫病大流行下、人々に希望を与えたという意味では、開催意義はあったと思うし、日本選手の大活躍も、暗い世相の中で明るいニュースで和んだし、前代未聞のパンデミック下東京五輪は、歴史に長く刻まれるだろう。が、今後に課題は残されたわけで、パラリンピックも控えていることだし、早急に効果的なコロナ対策が求められる。

デルタ流行国のトップを走るのはアメリカで、8月10日は23万人突破と、目を疑うような新規陽性者数、インドの10倍で、ひと桁間違っているのではないかと、まじまじと何度も、データ表を見返してしまったくらいた(11日は16万2000人)。7月4日の独立記念日までのコロナフリー目標はどうなったんだと、バイデン(Joseph Robinette Biden Jr.)大統領に突っ込みたくなる。新規死者数も1049人と、インドの497人の倍以上だ。

アメリカはワクチン接種2回完了者が50.8%で、集団免疫を獲得し、マスク不要と規制を緩めていたのではなかったか。また再着用を奨励しているようで、変異株へのワクチン効果にも懐疑的になってしまう。陽性者爆発でも、重症化を防げ、死者数軽減に効果があるなら、感染予防率が50%以下てもOKなのだが、接種完了者がブレイクスルー感染(Breakthrough Infection、ワクチンの2回目の接種後、2週間が経過してから陽性が判明すること)で重症化するケースもあるようだ。今後、変異がどんどん出てくると、現行のワクチンの著しい効率低下の問題も出現するだろう。

米政府は、未接種者の感染並びに死亡率が高いとして、さらにワクチン加速化、ここに来て停滞していた接種率がアップしているようだ。かつ、ブースターとして3回目接種も、臓器移植者などの免疫力の弱い層に進めているようだ。イスラエル政府も50歳以上のブースター加速化に率先して動いているようだが、ワクチンが十分に行き渡らない途上国の現状に鑑みると、公平分配に努めるWHOも易きに承認しがたいだろう。

南米で流行っているラムダ株も、デルタと同等の感染力の強さと(致死率も高い)、ワクチン効率低下が懸念されることからも、ワクチン1本に頼るのではなく、早期の治療薬開発が待たれる。抗体カクテル療法が日本で始まったが、点滴投与と医療者の手助けがいることからも、副作用のない簡便な服用薬がつとに求められる。インドでデルタ株に効力を発揮したイベルメクチン(予防薬としても効果があるとも)も、治験を進め、承認されることに期待したい。

波と波の合間の凪(なぎ)に束の間安住しているインドも、デルタの変異のデルタプラスが8月9日時点で86例見つかっており、予断は許されない。専門家筋では、第3波は第2波級のインパクトはなく、マイルドと予測されているが、次の波到来に神経を尖らさざるを得ない。

まずは、全世界で累計数が2億人(死者432万人)を突破したデルタ株流行が一刻も早く、収束の動きを見せることを祈ってやまない。

●トピックス/インドホッケー、五輪で銅、41年ぶりの快挙

男子やり投げ(87メートル58)で、見事金メダルを射止めた二ーラジ・チョプラさん(Neeraj Chopra、23歳)。インドの陸上競技における初の快挙で、今回唯一のゴールドメダリストとして10日に凱旋帰国したヒーローは、首都デリーの空港で、ソーシャルディスタンス無視の揉みくちゃにされんばかりの熱狂的な歓迎を受けた(画像は英語版ウイキペディアより、2017年のアジア大会で金メダルを獲得した)。

7月23日開幕の前代未聞の無観客オリンピックが8月8日無事幕を閉じたが、インドでも、自国選手の活躍がメディアで大々的に報じられるなど、熱狂を呼んだ。58個のメダルラッシュの日本(うち金27、アメリカ、中国に次ぐ3位)に比べると、たったの7個だが(金1、銀2、銅4)、当オディシャ州政府が後援するホッケーチームが活躍、女子はセミファイナルで惜しくもメダルを逸したが(対英戦で4対3)、男子は見事ブロンズ奪取。なんと、インドホッケーチームのメダル獲得は、1980年来(モスクワで金)、41年ぶりという快挙だった。

テレビ観戦したナビーン・パトナイク(Naveen Patnaik)州首相は、男子チームがセミファイナルで対ドイツ戦に5対4で接戦勝利してメダル獲得が決まったとき、飛び上がって喜んだ。自身も、寄宿者時代(デラドン=Dehra Dun=にある世界3大名門のひとつ・ドゥーンスクール=Doon school)、ホッケーチームのゴールキーパーを務めたことから、大のホッケー愛好家だ。

そんな経緯から、複合企業サハラ(SAHARA)グループが2018年インドホッケーチームのスポンサーシップから引いたとき、州政府としては、異例の率先して名乗りを挙げたわけだが、以後手厚く保護、こんにちの勝利へと導いた。

凱旋帰国したホッケーチームは州民に大歓迎され、わがオディシャのプライド、ヒーローたちは、誇らしげにメダルを胸に、笑顔が絶えなかった。同チームは過去に、選手がコロナ感染した際、医療従事者の献身に助けられた経緯から、メダルは、最前線で奮闘している全ての医療者に捧げたいと、感謝の意を示した。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は2020年3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

2021年8月23日現在、世界の感染者数は2億1181万6904人、死者は443万1068人(回復者は未公表)です。インドは感染者数が3242万4234人、死亡者数が43万4367人(回復者は未公表)、アメリカに次いで2位になっています。

ちなみにアメリカの感染者数は3770万9810人、死亡者数が62万8503人(回復者は未公表)、日本は感染者数が130万6114人、死亡者数が1万5651人、回復者が105万2880人(ダイヤモンド・プリンセス号を含む)。インドの州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。

また、インドでは2020年3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は2020年5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています。2021年3月から第2波に突入するも、中央政府は全土的なロックタウンはいまだ発令せず、各州の判断に任せています。マハラシュトラ州や首都圏デリーはじめ、レッドゾーン州はほとんどが州単位の、期間はまちまちながら、ローカル・ロックダウンを敷いています。編集注は筆者と関係ありません)。