インドから日本便増便の動き、体調整え来春帰国めざす(81)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2021年10月12日】9月も下旬に入って、日印共に緩和の動きが出てきた。まず、インドだが、昨年3月22日からストップしている国際線が、18カ国49都市とのエアバブル協定により、インド航空で運航開始されるとの情報が伝わっている。正式には30日の発表を待たなければならないが、期待したい。

石川県金沢市岩出町にある「ぶどうの木」レストラン。店内は明るく清潔な雰囲気、全面ガラス窓からは、店自慢のぶどう園か。豊かな緑を楽しみながら、レアチーズケーキとコーヒーに舌鼓を打ったのはいつだったか、コロナ禍の今、どうなっているだろうか。

すでに日本政府とのエアバブル協定で日本の航空会社やインド航空による臨時便が運航中だが、増便でフライトの選択の幅が広がることでもあり、首を長くして国際線緩和を待ちわびた私には、朗報だ。

日本側の動きだが、9月20日0時からインド帰国者の強制隔離期間がこれまでの6日から3日に短縮された。5月のデルタ大爆発の折は、10日隔離で3回の検査を強要されたのが、収束化するにつれて、6日から3日と短縮された。本音を言えば、丸々2週間、国に面倒見てもらった方が自費節約になっていいのだが、やはり10日に3回も検査され、部屋から1歩も出れないのは辛い。残り11日間、自主隔離の方が、コンビニに買い出しにも行けるだろうし、はるかに自由がきくだろう。

もうひとつ伝わっている情報だが、ワクチン接種証明があれば、強制隔離がなくなり、自主隔離期間が10日に短縮されるかもしれないということだ。10月にならなければ、明確なことはわからないが、これも接種済みの帰国者には、朗報だろう。

現段階では、はっきりしないので、ぬか喜びは禁物だが、日本政府は11月の全員接種終了を目指しているので、2回完了者の比率が75%とか高くなれば、何らかの緩和措置は取られるものと、期待できる。

というわけで、停滞していた状況が公私共に少しずつ動き出しているが、未だ沼にどっぷり浸かって謎の体調不良に悩まされている私は、心の準備ができずにいる。こっちの気持ちに構わず、周りがどんどん動き出しているという感じで、戸惑いを隠せない。

「ぶどうの木」の庭園の見事にたわわに成った大粒のぶどう。石川県産の巨峰の2倍もあるルビーロマン(赤紫のもの)も、見上げる青天井に覗き、感嘆の声が漏れたものだ。

あまりにも長いこと自粛して引きこもっていたため、巣ごもりが居心地よくなってしまったかのような、まだまだ恐怖がいっぱいの外に飛び出したくないとの、臆病な気持ちに見舞われてしまう。

ここにとどまっていた方が安全だとの自己防衛本能が働き、帰国衝動を抑えつける。つまり、アクセルとブレーキをいっしょに踏んでいるも同然の状態なのだ。

気持ちは帰りたいと逸るのに、頭がいやまだと許可を出さない状態、ゴーサインにブレーキがかかったままなのである。沼もあまりに長くいると、住めば都でもないが、居心地よくなってしまい、自己防衛本能(エゴ)が脱出は危険だと、引き止めるわけだ。

帰国といっても、通常のフリーパスとは違う。さまざまに厄介な書類が必要だし、空港検疫では何時間も待たされ、長い隔離が待っている。のみならず、書類の不備で送り返されるリスクもあるとあっては、多大な負荷がかかり、心身共に強靭でないと乗り切れない。

スマホ音痴の私は、さまざまなアプリによる体調チェックも、できるのかと心配だ。検疫局が定めるアプリをダウンロードしなければならず、それら経由で体温チェックや、ビデオコールの受け応えが義務付けられているのだ。

というわけで、体調回復に努める今、北陸の厳寒は体にこたえるので、来春辺りかと目論んでいる。高齢の母の容態が気がかりだが、まずは我が身の体調が万全でないと、見舞うこともできない。

最後に、本日9月23日付のインド全土の感染状況だか、新規陽性者数3万1923人(累計3360万人、死者44万6000人)、当オディシャ州(Odisha)の新規数は734人である(累計102万人、死者8150人)。

ちなみに、ワクチン接種はここに来て、加速化しており、9月17日のモディ(Narendra Damodardas Modi)首相の誕生日(71歳)には、2000万回と最多を記録した。2回完了者が14.5%と少ないのだが(1回45.1%)、アストラゼネカ製は、次の接種まで最大112日と期間があるため、忘れてしまうか、1回接種しただけで満足して、どうでもよくなってしまう人が多いのである。

律儀な日本人と違って、大雑把でいい加減なインド人らしい、国民性を如実に反映した顛末とは言えまいか。

●コロナ関連動画拝見/海外在住者と日本在住外国人のワクチン観

テレビを観ない私の情報源はもっぱら、ネットと英字紙だが、コロナ禍来、動画サイトに嵌(はま)っている。大手メディアでは報じられない、貴重な情報が得られ、重宝している。

プロのジャーナリストではなく、海外移住した邦人が個人的に配信する生の声も聞ける。真偽の定かでない情報もたくさん出回っているが、一般人がどう思っているか、パンデミック(世界的大流行)の今何を感じているか、知るには貴重だ。そんな中で、目を引いた動画が2つあったので、簡単にご紹介したい。

〇「コロナワクチン先進国イスラエル!混乱時代へ突入!/Kaitube

まずひとつめは、日本在住のイスラエル人、カイさんの動画。母国のコロナ現状を包み隠さず、自国人ならではの見地から述べており、興をそそる。

ご存知のように、イスラエルは、どの国に先駆けてもワクチン接種が進んでいたワクチン先進国の代表格。同政府が大量に仕入れるため、ファイザー社から2倍の値段で買い占めたせいとカイさんは明かす。

しかし、20歳以上の国民の80%が2回接種完了者となったはいいが、半年しか持たず、効力が低下しだした時期にデルタ株に直撃され、ピーク時は陽性者1万人超、今でも連日6500人以上と、感染爆発下にあり、3回目のブースター接種が早くも20%に達しているそうだ。

カイさん自身も既にファイザー製を接種完了したが、2回ともひどい副反応(高熱と嘔吐)に悩まされた経緯から、安全性に問題があると辛口だ。日本でも在住イスラエル人が1人、接種後の翌朝目覚めなかったことと、イスラエル本国でも親族2人が倒れたそうだ。

ワクチンを打ったから大丈夫との気の緩みが感染拡大に繋がる、ワクチン=安全という考え方はやめよう、自分の身は自分で守るべきと提唱する。日本であれ、イスラエルであれ、早く打たないとワクチンがなくなるよとの誘い文句には乗らないようにと警告、イスラエルの場合買いすぎたからだと歯に衣着せず言い切る。

イスラエルでは、既にグリーンパスポート制が導入され(ワクチン接種者とコロナ罹患の抗体保持者に発行)、レストランやコンサート、モールを利用するのに必要だが、未接種者との間の溝を深め、差別助長に繋がるからよくないと批判、グリーンパス効用は最初のうちだけで、いずれは妥協せざるを得ないと予告する。

ワクチン一辺倒の世の風潮に、接種者自らが警鐘を鳴らす貴重な配信、今のイスラエルの状況は、明日の日本、そういう意味からも注視に値し、目が離せない。

〇「イタリアの現状と私がワクチンを打たない理由」/Miho

次の動画は、イタリア在住のハーフの息子がひとりいる日本人妻Miho(ミホ)さん。料理が玄人はだしの腕前で、クッキングレシピをメインに配信(「イタリアの食卓」)、出来上がった料理にイタリア人夫と10代のイケメン息子が舌鼓を打つ家族の食卓風景、和やかな団欒で締めくくる。

よって、彼女のワクチン観を披露した回は特別編。イタリアでもワクチン接種は進んでいるし、現に夫の実母と養母も接種済みで、息子家族にも執拗に勧めるが、仲睦まじい3人家族は依然未接種。理由は、Mihoさんがアレルギー体質だからだが、それだけではない。治験中の遺伝子ワクチンに対する疑念からでもある。

イタリアでは、ワクチンパスポートが幅をきかせており、そのせいで一家は外食しづらくくなっている。グリーンパス不所持者は、屋内レストランでは食べられず、屋外スペースがあれば、そこに追いやられる。彼女が懸念しているのは、非接種者に対する差別、接種の是非は個々人の自由意思に基づくもので、強要されたり、打っていないことで遠ざけられたり、白い目で見られたりするのは、勘弁願いたいというのだ。

自身も、接種者に対する批判は元よりなく、ワクチンを否定しているわけでなく、諸事情から、個人の権利と自由で打たないことを決めたのだから、尊重して欲しいと訴える。ワクチン可否によって、二極化、分断される社会に戸惑いを覚えているようだ。

接種を迷っている人にと、日本の分子生物学・感染学者、荒川央(ひろし)博士のブログを紹介、私も覗かせてもらったが、科学的な見地から、わかりやすく治験未了の遺伝子ワクチンの危険性を説いているので、興味のある方はサーチ頂きたい。

私も以前表明したように、非接種派だが、荒川先生の持論をチェックしたあとは、やはり打ちたくないとの念が強まった。しかし、未接種者には、肩身の狭い時代になりそうで、日本に帰ったら、同調圧力に負けてしまいそうだ。海外との行き来という便宜上からも、さっさと受けた方が気が楽かもしれない。が、他の誰でもない、自分の体のことだから、慎重にいきたい。今しばらくは、状況静観である。

※9月24日付けデータでは、イスラエル(人口約934万人)の新規感染者数は6718人(累計125万人、死者7611人、新規死19人)、イタリア(人口約6046万人)の新規数は2881人(累計420万人、死者14万1000人、新規死160人)であることを、著者注として末尾に付け加えておく。

編集注:「エアバブル協定」とは特定の国・地域の間を航空機で移動する際、協定を結んだ相手国からの渡航者に限って入国前後の渡航や移動制限などの障壁を緩和、撤廃する2国間協定のこと。日本は韓国、ベトナム、台湾、シンガポール、インドとの間で渡航制限を緩和している。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。2021年10月5日現在、世界の感染者数は2億3540万8082人、死者は480万9149人(回復者は未公表)です。インドは感染者数が3385万3048人、死亡者数が44万9260人(回復者は未公表)、アメリカに次いで2位になっています。

ちなみにアメリカの感染者数は4385万2255人、死亡者数が70万3278人(回復者は未公表)、日本は感染者数が170万7126人、死亡者数が1万7809人、回復者が166万9599人(ダイヤモンド・プリンセス号を含む)。インドの州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。

また、インドでは2020年3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は2020年5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています。2021年3月から第2波に突入するも、中央政府は全土的なロックタウンはいまだ発令せず、各州の判断に任せています。マハラシュトラ州や首都圏デリーはじめ、レッドゾーン州はほとんどが州単位の、期間はまちまちながら、ローカル・ロックダウンを敷いています。編集注は筆者と関係ありません)。