ヴァニラで稲垣征次らゲイアート展、田亀と木下直之対談

【銀座新聞ニュース=2019年3月3日】ヴァニラ画廊(中央区銀座8-10-7、東成ビル、03-5568-1233)は3月5日から17日まで「日本のゲイ・エロティック・アート展」を開く。

ヴァニラ画廊で3月5日から17日まで開かれる「日本のゲイ・エロティック・アート展」に出品される作品。

「日本のゲイ・エロティック・アート」(ポット出版)シリーズの第1巻「vol.1ゲイ雑誌創生期の作家たち」(税別4500円)が2003年12月に、第2巻「Vol.2ゲイのファンタジーの時代的変遷」(同)が2006年8月に、第3巻「Vol.3ゲイ雑誌の発展と多様化する作家たち」(同)が2018年2月に刊行された。

この3巻でシリーズが完結したのを記念して、3巻本に収録された作家を中心に、シリーズ本を編集した田亀源五郎(たがめ・げんごろう)さんの作品も含め、ゲイ雑誌創世記の作家から、現代の作家までの作品群を展示する。

紹介される作家は稲垣征次(いながき・せいじ、1942年生まれ)さん、大川辰次(おおかわ・たつじ)さん、小田利美(おだ・としみ)さん、木村(きむら)べんさん、児夢(じむ)さん、高蔵大介(たかくら・だいすけ)さん、田亀源五郎さん。

天道寺慎(てんどうじ・しん)さん、武内条二(たけうち・じょうじ)さん、遠山実(とおやま・みのる)さん、長谷川サダオ(はせがわ・さだお、1945ころ-1999)、林月光(はやし・げっこう、石原豪=いしはら・ごう=、1923-1998)、平野剛(ひらの・ごう)さん、船山三四(ふなやま・さんし、1920ころ-1999)、三島剛(みしま・ごう)さん。

また、伊藤文学(いとう・ぶんがく、1932年生まれ)さん、「スジタオカイズ(STUDIO KAIZ)」を主宰する城平海(きひら・かい)さん、日暮孝夫(ひぐらし・たかお)さんが展示協力している。

ゲイ雑誌とは男性同性愛者向けに作られた雑誌で、現在、発行されているのは「薔薇族(ばらぞく)」(1971年隔月刊誌として創刊、1974年に月刊化、2004年に休刊、2005年に復刊、2005年に休刊、2007年に復刊)、「サムソン(SAMSON)」(1982年創刊)、「バディ(Badi)」(1993年創刊、2019年3月号で休刊予定)の3誌だけ。

「ジーメン(G-men)」(1995年創刊、2016年休刊)、「アドン」(1974年創刊、1996年休刊)、「さぶ」(1974年創刊、2002年休刊)、「ザ・ゲイ(The Gay)」(1978年に「ザ・ケン(The Ken)」として創刊、その後、休刊)はすでに廃刊されている。

ゲイ雑誌は体型や年齢などの嗜好で各誌のコンセプトが異なり、読者の棲み分けがなされているのが特徴だ。「薔薇族」と「バディ」が若年層を中心とした総合誌、「ジーメン」が野郎系専門誌、「サムソン」がデブ専門誌と分かれている。

戦後、まもなく作家の三島由紀夫(みしま・ゆきお、1925-1970)らが所属した「アドニス会」というゲイシーンの黎明期を象徴する会員制同性愛サークルが発足し、1952年9月に日本初の会員制ゲイ雑誌「アドニス」が創刊され、1962年に63号で廃刊された。これがゲイ専門誌のはじまりとされ、1971年に商業ゲイ雑誌としては日本初の「薔薇族」が刊行された。

1995年以降、インターネットが爆発的に普及し、ゲイ専用サイトも普及し、ゲイ雑誌を買わなくても男性ヌードを見たり、携帯版を含めた出会い掲示板やチャットなどで、簡単にゲイ同士が交流できるようになった。

ゲイ雑誌が読まれなくなると、ゲイ同士で情報や意識の共有がなされなくなったといわれる。いまや自分が興味のあるアダルトサイトや出会いサイト、ゲイAVにしか目が向けられなくなり、一部ゲイサイトには悩み相談コーナーがあるものの、カウンセリングの知識を持ち合わせていない素人ユーザーや、ゲイになりすました異性愛女性(腐女子)が回答するものが多くなっている。

10日17時30分から田亀源五郎さんとゲイ・エロティックアーティスト美術史家で、東京大学大学院人文社会系研究科教授、静岡県立美術館館長の木下直之(きのした・なおゆき)さんによる特別トークイベントを開く。定員は40人で、ワンドリンク付で入場料は2000円。事前にチケットを購入する。

木下直之さんは1954年静岡県浜松市生まれ、東京芸術大学大学院を中退し、兵庫県立近代美術館学芸員などを経て、2015年に紫綬褒章を受章、現在は東京大学大学院人文社会系研究科教授、静岡県立美術館館長。

開場時間は12時から19時(土・日曜日、祝日17時)。入場料は1000円だが、事前に「ライブポケット(Live Pocket)」でチケットを購入すると、会場に入れる。今回は受付ではチケットを販売しない。また、18歳未満は入場できない。

注:「高蔵大介」の「高」は正しくは旧漢字です。名詞は原則として常用漢字を使用しています。