丸善丸の内で慶応義塾図書館が「泉鏡花」展、書斎も再現(1)

【銀座新聞ニュース=2016年10月2日】丸善・丸の内本店(千代田区丸の内1-6-4、丸の内オアゾ内、03-5288-8881)は10月5日から11日まで4階ギャラリーで「第28回慶応義塾図書館貴重書展示会 鏡花の書斎-『幻想』の生まれる場所」を開く。

丸善・丸の内本店で10月5日から11日まで開かれる「第28回慶応義塾図書館貴重書展示会 鏡花の書斎-『幻想』の生まれる場所」のフライヤー。

丸善・丸の内本店で10月5日から11日まで開かれる「第28回慶応義塾図書館貴重書展示会 鏡花の書斎-『幻想』の生まれる場所」のフライヤー。

「慶応義塾図書館貴重書展示会」は、慶応義塾図書館が所蔵する数ある貴重書を各回テーマに沿って展示し、 通常は閲覧が制限される貴重書を無料公開している。

今回は「夜叉ヶ池」や「義血侠血」をはじめとした明治、大正、昭和初期を代表する作家、泉鏡花(いずみ・きょうか、1873-1939)の自筆原稿や遺愛品約100点を展示する。また、多数の遺品を畳敷きに配置して、書斎を再現する試みも初めて行う。さらに、一昨年、裏地に横山大観(よこやま・たいかん、1868-1958)の筆による絵画のあることが確認された羽織も今回初めて公開する。

ウイキペディアによると、泉鏡花は1873年石川県金沢市下新町生まれ、父清次(せいじ、生年不詳-1894)は、工名を政光といい、加賀藩細工方白銀職の系譜に属する象眼細工、金等の錺(かざりや)職人で、母鈴(すず、1854-1883)は、加賀藩御手役者葛野流大鼓方中田万三郎豊喜(たなか・まんさぶろう・ほうき)の末娘で、江戸の生まれ。

1889年11月に上京し、尾崎紅葉(おざき・こうよう、1868-1903)の門下に入ることを志し、1891年10月に牛込の尾崎紅葉宅を訪ね、尾崎家で書生生活をはじめる。1893年5月に京都日出新聞に真土事件を素材とした処女作「冠弥左衛門」を連載するも不評で、新聞社の打切り要請に対して、泉鏡花にアドバイスを与え、これを完結させた。同年、「活人形」(探偵文庫)、「金時計」(少年文学)などを発表、1894年に「予備兵」や「義血侠血」などを執筆し、尾崎紅葉の添削を経て読売新聞に掲載された。

展示される書斎の遺品、貼り交ぜ屏風、紫檀の文机、水晶の兎、自筆原稿「化鳥」。

再現される書斎に置かれる遺品、貼り交ぜ屏風、紫檀の文机、水晶の兎、自筆原稿「化鳥」。

実用書の編纂などで家計を支えながら、1895年に初期の傑作「夜行巡査」(文芸倶楽部)と「外科室」(同前)を発表、「夜行巡査」が田岡嶺雲(たおか・れいうん、1870-1912)の賛辞を得、このおかげで「外科室」が「文芸倶楽部」の巻頭に掲載され、文壇における地歩が定まった。1896年10月に読売新聞に「照葉狂言」を連載、1899年に「湯島詣」を書きおろし刊行、1900年に「高野聖」(新小説)などを発表した。その後も次々と作品を発表したが、1939年7月に「縷紅新草」を「中央公論」に発表した後に病床に臥し、9月7日に逝去した。

著書の装訂、挿絵の大半は鏑木清方(かぶらき・きよかた、1878-1972)か小村雪岱(こむら・せったい、1887-1940)によるもので、とくに小村雪岱はその号を泉鏡花に名づけてもらっており、それ以来の名コンビだった。

会場の展示構成は1コーナーが「物語の源」、2コーナーが「紡がれるコトバー自筆原稿」、3コーナーが「『譚』の系譜」、4コーナーが「人との由縁1 父母への想い」、5コーナーが「『信」の領域」、6コーナーが「人との由縁2 作家としての交流」、7コーナーが「鏡花本-物語る形」となっている。

また、泉鏡花の遺品、貼り交ぜ屏風、紫檀の文机、水晶の兎、自筆原稿「化鳥」などにより泉鏡花の書斎を再現展示する。

慶応義塾図書館が所蔵する泉鏡花の自筆原稿約180点は、1942年に泉家から一括寄贈されたもので、寄贈に際して、泉家側では1編ずつ表紙を付けて和綴じ製本され、これを受けて慶応義塾では泉鏡花に縁のあった日本画家、鏑木清方(かぶらき・きよかた、1878-1972)に題せん(和漢書の表紙に書名を記して貼りつける細長い小さな紙や布)の揮毫(きごう)を依頼し、現在、見らるような典雅な体裁を得るに至った、としている。

慶応義塾図書館は1907年に慶応義塾創立50周年を迎えた記念事業として1908年に起工され、1912年に竣工された。設計は曽祢中條(そねなかじょう)建築事務所、施工は戸田組で、1969年に国の重要文化財に指定された。1981年に新図書館が完成したのに伴い、本館は記念図書館、研究図書館として改修再生され、現在、旧館には福沢研究センター、斯道文庫(しどうぶんこ)、泉鏡花展示室、大会議室、小会議室がある。

開場時間は9時から21時(最終日は17時)。入場は無料。