コミック大好き俳優がヒーローを演じる「ブラックアダム」(356)

【ケイシーの映画冗報=2022年12月8日】前回の「ブラックパンサー」はアメリカのコミックブランド“マーベル”の作品ですが、今回はもうひとつのブランド、“DC(ディテクティブ・コミックス)”から「ブラックアダム」(Black Adam)をとりあげます。

現在、一般公開中の「ブラックアダム」(((C)2022 Warner Bros.Ent.All Rights Reserved TM & (C) DC Comics)。

5000年前、古代帝国カーンダックで、強大な力を手にしながら失意のうちに封印されたテス・アダム(演じるのはドウェイン・ジョンソン=Dwayne Johnson)は、圧政に苦しむ現代のカーンダックに、女性考古学者アドリアナ(演じるのはサラ・シャヒ=Sarah Shahi)たちによって蘇ります。すべてを呪い、憎む邪悪の化身として。

その事実を知ったヒーローチーム「ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ(JSA)」では、リーダーのホークマンことカーター(演じるのはオルティズ・ホッジ=Aldis Hodge)らが復活したテス・アダムを平和への脅威と判断し、立ち向かうことにになります。

5000年の時間差に戸惑うテス・アダムは、アドリアナの息子であるアモン(演じるのはボディ・サボンギ=Bodhi Sabongui)と交流することで、憤怒だけでなく、過去の自分にあった人間性も呼び覚まされていきます。

そして、アモンがカーンダックを支配する軍事組織「インターギャング」に誘拐されてしまいます。目的はアドリアナが持つ“サバックの王冠”で、圧倒的なパワーはテス・アダムにも匹敵するとされています。

対立していたテス・アダムとJSAは一時休戦し、アモンを取り戻す目的で共闘することになります。テス・アダムはアモンにつけられた“ブラック・アダム”として、アモンのために戦うことを宣言するのでした。

“DC”は“マーベル”より古い(DCは1934年、マーベルは1939年)ブランドで、「スーパーマン」や「バットマン」といったメジャーなキャラクターを擁しているのですが、2008年に“マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)”が映画シリーズとして複数のキャラクターが同一の世界観で活躍するフランチャイズをスタートさせ、まさに映画界を席巻します。

どちらかというとメジャーではなかった“マーベル”のキャラクターが映画館で活躍し、映画としてヒットを連発したことが刺激となったのか、“DCエクステンデッド・ユニバース”が2016年、正式にアナウンスされます。

たとえ、“マンガ(原作の)映画”ということは事実であったもしても、魅力的なキャラクターとしっかりとしたストーリーが映像作品としての“マーベル”や“DC”のブランドには確立しています。マンガ=コミックスも「子ども向け」という安易なカテゴライズで一段見下すことはもう、意味のないことでしょう。

本作でヒーロー“ドクター・フェイト”を演じたピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)は、主要キャストのなかでは1953年生まれと長老格(失礼)ですが、「僕は昔からコミックが大好きだし、コミック映画も大好き。(中略)本当にスーパーヒーローを演じる日が来るとは」(パンフレットより)と本作の出演を喜んでいるようです。

ブラック・アダム役のドウェイン・ジョンソンは1972年生まれ。アメリカン・フットボールの有力選手でしたが、プロレスに転向、祖父も父もレスラーという血筋と、196センチ、117キロという恵まれた体格、そして本人の努力でトップレスラーとなりました。

2000年代から映画界にも進出、当初はチョイ役や体躯をウリにしたワキ役的な起用が多かったのですが、やがて大作映画の主演もこなすようになり、いまでは「ハリウッドでもっとも稼いだ俳優」に2年連続(2019年、2020年)で選ばれています。

プロレスでデビューしたころ、1試合のギャラが40ドル(およそ5000円)だったジョンソン。プロレスとハリウッド、ジャンルの異なる世界で頂点に上り詰めた人物は彼ひとりだけでしょう。

成功したハリウッド・スターのおおくが、演じるだけでなく、監督やプロデューサー業に進出しますが、ジョンソンも本作でプロデューサーを兼ねています。その経歴から“バリバリの運動系”で、マンガに耽溺するような青年期など想像しにくいのですが、「僕は昔からコミックのファンでDCのヒーローとヴィランが大好きでした」(パンフレットより)と、20歳ほど年長のブロスナンと近似のコメントをしています。

これまで幾度も記していますが、エンターテインメントの世界では、作品の評価がすべてであり、出自や関係者の経歴はさほど意味はないはずです。ただし、だれもが名作・傑作を生み出せるわけでもないのですが。

次回は「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:ウイキペディアによると、「DCエクステンデッド・ユニバース(DC Extended Universe、DCEU)」は、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズが配給する劇場映画を中心に、2013年からテレビシリーズ、短編映像、マンガ、小説、ビデオゲームなどさまざまな媒体で展開しているDCコミックス原作のフランチャイズ及びシェアード・ユニバースとされている。原作のDCユニバースと同様に複数の作品で物語、設定、キャラクターが共有されている。

「DCエクステンデッド・ユニバース」という呼称は、2015年7月1日にエンターテインメント・ウィークリー誌のウェブサイトに掲載された記事が初出とされ、2020年3月にDCコミックス社のジム・リー(Jim Lee)がシカゴ・コミック&エンターテインメント・エキスポでこの呼称を用い、2020年5月27日にはワーナーメディアの動画配信サービスである「HBO Max」でも用いられて、実質的に公式化した。

DCEUは、世界興行収入が56億ドル(1ドル=130円換算で7280億円)を超え、歴代の映画フランチャイズの中で11番目に高い興行収入を記録している。

映画としては2013年の「マン・オブ・スティール」からはじまり、2016年の「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」、2016年の「スーサイド・スクワッド」、2017年の「ワンダーウーマン」、2017年の「ジャスティス・リーグ」、2018年の「アクアマン」、2019年)の「シャザム!」。

2020年の「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」、2020年の「ワンダーウーマン 1984」、2021年の「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」、2022年の「ブラックアダム」まで公開されている。

こんごは2023年3月公開予定の「シャザムー神々の怒り」、同年6月公開予定の「ザ・フラッシュ」、同年8月公開予定の「ブルービートル」、同年12月公開予定の「アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム」までが含まれる。このほかに、「ワンダーウーマン(Wonder Woman)3」など14作品の制作が予定されているが、いずれも制作時期、公開時期などは未定となっている。