ポーラ銀座で田原桂一「オペラ座」展、会場はオペラ座をイメージ

【銀座新聞ニュース=2024年6月20日】化粧品業界国内4位のポーラ・オルビスホールディングス(中央区銀座1-7-7、ポーラ銀座ビル、03-3563-5517)が運営するポーラミュージアムアネックス(ポーラ銀座ビル、03-3563-5501)は6月21日から7月28日まで田原桂一による「OPERA de PARIS」展を開く。

ポーラミュージアムアネックスで6月21日から7月28日まで開かれる田原桂一の「OPERA de PARIS(パリ・オペラ座)」展に出品される作品。

写真家の田原桂一(1951-2017)は、「光」をテーマにフランスを中心に世界的に活躍し、1985年に木村伊兵衛写真賞、1993年にフランス芸術文化勲章シュヴァリエ、1995年にパリ市芸術大賞など多くの賞を受賞しており、その表現方法は写真にとどまらず、彫刻や映像、インスタレーションなどさまざまな領域にわたっている。

今回は田原桂一がフランス政府の依頼を受け、1987年から1994年まで約8年の歳月をかけて、パリのオペラ座(OPERA de PARIS)を撮影し、約550点に及ぶ作品は、1995年にARCHITECTURE(アーキテクチャー、建築)、COSTUMES(コスチューム、衣装)、BIJOUX(ビジュー、宝飾)、MAQUETTES(マケット、舞台美術)という4冊からなる大判写真集「OPERA de PARIS」(1995年)として出版され、その中から約30点をオペラ座の世界観をイメージした会場に展示する。

また、会場では2000冊限定で出版された「OPERA de PARIS」の原本や、写真集をもとに制作された映像も鑑賞できる。

当時、オペラ座の責任者だったピエール・ベルナール(Pierre Bernard)さんは、「自然光の中、長時間露光することで被写体がドラマチックな雰囲気と質感で表現される田原独自の撮影スタイルが、オペラ座を撮影するのに最適だ」と考えた。

撮影はオペラ座の壮麗な建築やしつらえだけではなく、華やかな衣装や宝飾、さらには舞台装置の表と裏に至るまで、オペラ座全体が記録された。

田原桂一は1996年11月15日に「パリ、オペラ座の撮影を始めだしたのはもう随分以前の事だが、こうして思い出そうとすると、それがいつからだったか記憶が定かではない。記憶の手掛かりとなるような、その年その年の節目の様なものが何故か薄れてきているのだろうか。あるいは、余りにも多くの出来事に追われすぎているせいだろうか」

「オペラ座での衣装や宝飾品そして建築を撮っていた時間は少しばかり異なっていたように思える。18世紀から19世紀のコスチュームやビジューを手に取り眺め観察する。その当時どれほどの時間と人を費やして作り上げられたのか、誰が着て何を演じたのか、過ぎ去った時間に思いを馳せることの楽しさがあった。先へ先へと進むばかりでなく、過去をふりかえり検証する事の面白さも、いま忘れてはならないことなのかもしれない」とコメントをしている。

同じく出品される作品。いずれも田原桂一写真集「OPERA de PARIS」より(撮影:1987年から1994年、出版:1995年)。

田原桂一は1951年京都府生まれ、写真家の祖父の影響で中学時代に写真の技術を習得し、高校卒業後に劇団の「レッド・ブッダ・シアター」に参加し、照明と映像を担当、1972年に劇団のヨーロッパ公演に同行してフランスに行き、日本の柔らかい光とは異なる、ヨーロッパ特有の鋭い光に衝撃を受け、パリにとどまり写真家として活動をはじめた。

以来、2006年までパリを拠点とし、「光」をテーマに写真、彫刻、インスタレーション、建築と幅広く活動した。1973年から1976年の最初のシリーズ「都市」でパリの街をモノクロームで写し、日本とは違うパリ独特の光をとらえ、1973年から1980年のシリーズ「窓」で、「アルル国際写真フェスティバル」で新人大賞を受賞、1978年に世界の巨星の肖像写真を撮影したシリーズ「顔貌」を発表、1979年から1983年の「エクラ」、1984年の「ポラロイド」などがある。

1978年にコダック主催フランス写真批評家賞、1984年に日本写真家協会新人賞、1985年に東川賞、木村伊兵衛賞、1987年にポルトガルのグルベンキア美術財団給費、1988年にフランスのニセフォール・ニエプス賞、1989年に日本のADC賞、1990年にフランス文化庁ヴィラメジチ給費、1993年にフランスと日本のシャトーベイシュヴェル財団大賞、フランス芸術文化勲章シュバリエを受賞している。

1994年に日本のADC賞、1995年にパリ市芸術大賞、1999年にリオン市化学工業地帯の「バレー・ドゥ・ラ・シミエ(Vallee de la Chimie)」プロジェクトを受賞、リオンの光のフェスティバルコンクール、2003年にパリの「タラン・デゥ・リュックス オリジナリティー賞」などを受賞している。

2009年に「株式会社KTP」を設立、2017年3月から8月までプラハ国立美術館で舞踊家の田中民さんを被写体とした個展を開いており、4月からはポーラ提供でテレビ朝日系「白の美術館」で出演者のポートレートを撮影していた。同年6月6日未明に肺がんのため東京都内の病院で死去した。

開場時間は11時から19時。入場は無料。