高島屋で白鸚、幸四郎、染五郎の「高麗屋」展、衣装や写真等展示

【銀座新聞ニュース=2023年3月22日】国内百貨店業界売上高3位の日本橋高島屋S.C.(中央区日本橋2-4-1、03-3211-4111)は3月23日から4月3日まで本館8階ホールで「松本幸四郎家高麗屋展 松本白鸚・松本幸四郎・市川染五郎ー世代をこえて継がれる、ひとつの絆」を開く。

日本橋高島屋S.C.で3月23日から4月3日まで開かれる「松本幸四郎家高麗屋展 松本白鸚・松本幸四郎・市川染五郎ー世代をこえて継がれる、ひとつの絆」のフライヤー。

国の重要文化財に指定されており、1933(昭和8)年3月に本館が開店してから90年になる、日本橋高島屋が開店90年記念特別企画として、「高麗屋(こうらいや)」宗家(そうけ)として、10代目松本幸四郎(7代目市川染五郎、1973年生まれ)さん、2代目松本白鸚(はくおう、9代目松本幸四郎、1942年生まれ)さん、8代目市川染五郎(2005年生まれ、4代目松本金太郎)さんの3人が2018年に襲名したことから、3人の歌舞伎役者としての舞台衣装、舞台写真などを展示する。

とくに、今回は、3人がこれまでに演じた役の舞台衣裳7点を展示する。衣裳には本人のコメントが添えてある。

なかでも、高麗屋の当たり役として代々受け継がれているのが「勧進帳」の「弁慶」で、8代目市川染五郎さんが「心に想い描く、力強い弁慶をテーマとした」今回限定の特別展示をする。

ウイキペディアによると、「高麗屋」は初代松本幸四郎(1674-1730)が若い頃、江戸神田の「高麗屋」という商店(下総国佐原の小間物屋だった説もある)で丁稚奉公していたことがその名の由来となっている屋号だ。

松本幸四郎の定紋は四つ花菱(よつはなびし)、替紋は浮線蝶(ふせちょう)で、7代目は日本舞踊藤間流の「藤間勘右衛門」も同時に名乗り、また8代目以降は日本舞踊松本流の宗家でもある。

松本白鸚は定紋は四つ花菱、替紋は浮線蝶と松本幸四郎と同じで、由来は初代の父である7代目松本幸四郎(1870-1949)の俳号から取られており、「松本幸四郎」の名跡を譲った者が名乗る隠居名とされている。

市川染五郎は、定紋は三つ銀杏、替紋は四つ花菱で、現在では松本幸四郎に先立って襲名される名跡となっている。現在の8代目市川染五郎さんは10代目松本幸四郎さんの長男で、
2009年に4代目松本金太郎を襲名し、2018年に8代目市川染五郎さんとなった。

「勧進帳」は如意の渡しでの出来事を基軸にした能の演目「安宅(あたか)」を元に創られた義経と弁慶を題材とした歌舞伎の演目で、歌舞伎十八番の一つで、松羽目物(能、狂言の曲目を原作とし、それらに近い様式で上演する所作事)の先駆けとなった作品である。あくまでも後の時代に創られた話で、史実ではないが、歌舞伎以外でも多くのドラマやアニメなどでも取り上げられている。

原形は初代市川團十郎(1660-1704)が1702(元禄15)年2月初演の「星合十二段」に取り入れたのが最初で、これを5代目市川海老蔵(7代目市川團十郎、1791-1859)が能の様式を取り入れ、1840(天保11)年3月に江戸の河原崎座で初演された。

配役は2代目市川九蔵(後の6代目團蔵、1800-1871)の富樫左衛門、8代目市川團十郎(1823-1854)の義経、5代目海老蔵の弁慶。作詞は3代目並木五瓶(1789-1855)、作曲は4代目杵屋六三郎(1780-1856)だった。ただ、この上演では富樫の番卒が時代物の軍兵姿であり、弁慶の水衣も棒縞であるなど今日の舞台とはいろいろな違いがあった。

現在、見られる型は明治時代、9代目市川團十郎(1838-1903)により完成されたもので、これ以降、番卒は狂言風の衣装に、弁慶の水衣も黒地に金糸の梵字をあしらったものへと改められた。

かつては、市川宗家(市川團十郎家)のお家芸として、他家の役者が勝手に上演できなかった。しかし、9代目團十郎の没後、宗家に有力な後継者がいなかった事情もあって、他の役者が弁慶を演じるようになっていく。以後「勧進帳」は、弁慶・義経・富樫の3役を歴代の看板役者が生涯に一度は演じるという、歌舞伎の代表作の一つとなった。

特に昭和初期の15代目市村羽左衛門(うざえもん、1874-1945)の富樫、6代目尾上菊五郎(1885-1949)の義経、7代目松本幸四郎(1870-1949)の弁慶は近来の白眉とされ、1943(昭和18)年に歌舞伎座で上演された舞台は映画にも記録された。

また、本館1階正面ウィンドーには、銅版画家の入江明日香さんが描いた高麗屋が演じる歌舞伎の演目「勧進帳」とのコラボ作品を展示する。

開場時間は10時30分から19時(最終日は17時30分)。入場は無料。会場では、10代目松本幸四郎さん、8代目市川染五郎さんによる音声ガイド(1台600円)を用意している。また、会場には、展覧会公式パンフレット(1300円)や限定グッズも販売している。