動物パニック映画の常道を貫き、次作を期待させる「MEG2」(375)

【ケイシーの映画冗報=2023年8月31日】本年8月、“史上最も重い動物”の研究成果が報告されました。4000万年前に生存していたとされるクジラの一種である海生哺乳類「ペルケトゥス・コロッスス(Perucetus colossus)」で、全長こそ20メートル程度とされていますが、その体重は最大の推定値で300トンを超え、現存する動物で最大という「シロナガスクジラ」よりも重かった可能性が指摘されていました。

現在、一般公開中の「MEG ザ・モンスターズ2」((C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved)。

「怪獣・モンスター映画」というジャンルでは、“生き残りの恐竜”や種々の理由で“巨大化や狂暴化した生物”といった現存する(したとされる)存在が暴れるものと、日本の「ゴジラ」に代表されるような“空想・想像の存在”という、2大潮流があると勝手に考えています。海外では前者がメインで、日本ではハリウッド映画にも影響を与えた「ゴジラ」のようなラインが王道ではないでしょうか。

本作「MEG ザ・モンスターズ2」(Meg 2:The Trench、2023年)は、200万年前に絶滅したはずの地球史上最大の捕食動物とされる“メガロドン(MEGーメグ)”が、深海で生き残っており、現代に文字どおり“牙を剥く”「Meg ザ・モンスター」(The Meg、2018年)の続編となっています。

海洋レスキューの専門家ジョナス(演じるのはジェイソン・ステイサム=Jason Statham)は、いっしょに“メグ”との激闘を経験した少女メイイン(演じるのはソフィア・ツァイ=Sophia Cai)とその伯父の経営者で発明家のジウミン(演じるのはウー・ジン=Wu Jing)らと、海の環境保護活動に活動していました。

ジウミンはフィリピン海の海洋研究所「マナ・ワン」で、世界最深のマリアナ海溝の研究にもとりくみ、生き残った「メグ」に「ハイチ」と名付けて飼育していますが、ジョナスはペットとしての扱いに否定的でした。

深海探査艇でマリアナ海溝を探検していたジョナスやジウミンは、突然姿を見せた新手の「メグ」に遭遇し、機能を失った潜水艇は海底に沈んでしまいます。そこには深海での掘削作業用の海底基地が存在し、豊富な地下資源を違法に集めていました。リーダーのモンテス(演じるのはセルヒオ・ペリス-メンチェータ=Sergio Peris-Mencheta)は、かつて刑務所へ収監された原因となったジョナスに憎悪の目を向けます。

7500メートルの深海で外界には「メグ」、内側には因縁のある犯罪者をかかえたジョナスたちは無事、地上にもどることができるのか。

製作のロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ(Lorenzo di Bonaventura)によると、本作の監督であるベン・ウィートリー(Ben Wheatley)は、前作のファンであったそうです。
「個人的にはMEGの破壊力を・・・要するに、人間に食らいつく姿をもっと観たいとおもったし、ジョナス・テイラーのチームがさらに大きなピンチやプレッシャーにさらされるところを観たかったんです」(パンフレットより)
というウィートリー監督の志向は、しっかりと盛り込まれていると感じました。と同時に、いままでのサメやモンスターが出てくる作品、そして怪獣映画にいたるまでを監督が見ていて、そのエッセンスが作中に巧みに盛り込まれていることはよく理解できました。

こうした部分だけを強調してしまうと、マニアだけの“楽屋落ち”や作り手の“独りよがり”となってしまい、作品の本道からこぼれてしまうことが少なくありません。そのサジ加減について、ウィートリー監督は絶妙であると感じます。

こうしたジャンルの原典ともいうべき「ジョーズ」(Jaws、1975年)は、この1作目よりも、続編の「ジョーズ2」(Jaws2、1978年)のほうに、作中での扱いが重くなっているのも、本作が続編ということへの回答なのではないでしょうか。「ジョーズ2」はセリフに登場しますし、ジョナスが「メグ」と対峙するシーンなどにも、その影響は感じられます。

過去作の影響もある一方で、新たな視点も加わっています。ジョナスたちは、「メグ」だけでなく、モンテスの率いる武装集団とも戦いますし、巨大なタコや、本作オリジナルの水陸両用の肉食生物「スナッパーズ」にも襲われます。いきなり出てくる巨大な触手、陸上でも追ってくる俊敏で獰猛な怪物。既視感があるのは事実ですが、一斉に登場する作品というのは記憶にありません。

前述の「ジョーズ」の大ヒットにより、“動物パニック映画”は近似の作品が多く生まれ、粗製濫造という状況で急速に廃れてしまいましたが、本作を観るかぎり、やり方によっては復活する(させる?)ことも充分に可能だと思われます。本作の続編も期待してしまいますね。次回は「ヒンターラント」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。