帰国後5回目の墓参りで郷里に、瓜割滝経由で小浜へ(136-1)

【モハンティ三智江のインドからの帰国記=2023年9月5日】8月12日、石川県金沢市在住の長弟の車で、盆の墓参りに行くことになった。10年前(2012年)に我がインドの居住地プリー(Puri)で現地式婚礼を挙げた奥さんも一緒だ。

ひとときの涼を求めて、瓜がパカりと割れるほど冷たいことから瓜割の命名がある滝へ立ち寄った。ひんやりと透明な清流には、盆帰りの客が群れていた。

9時30分に自宅マンション近くまで迎えに来てもらって、いざ郷里福井へ。折柄の盆休みで途上の渋滞が懸念されたが、混雑もなくスムーズに待ち合わせ場所のFモータースに早めに到着、亡父が75年前(1948年)創業した自動車整備会社(現在は販売も扱う自動車の総合会社)の跡継ぎ社長として采配をふるう次弟(長弟は医学の道に進んだため、次弟に後継を譲る)はまだ到着していなかった。

長弟が電話して程なくやってきた。事前の打ち合わせで、墓参りのあと、市内から174キロ離れた南西部にある小浜に1泊する予定になっており、次弟の車に総勢4人が乗り込んでまずはご先祖さまへのごあいさつに向かった。

足羽山(あすわやま)にある西墓地には墓参りの家族が何組か訪れていたが、12日の今日はまだ混雑するほどでない。先祖の墓に花と線香を供えて、墓石に水をかけ、全員合掌したあとで、山中にある石挽き蕎麦で有名な「木の芽屋」(足羽山公園平和塔前、0776-35-2607)で昼食を摂ることにしたが、さすが名店だけあって混んでいて、待機させられた。

墓参り客が次々訪れる。幸いにも、レジ脇に展示された石臼挽マシンを見ているうちに(回転する石臼の間にそばの実を通過させ製粉、時間をかけ挽くことで、熱や摩擦によるダメージを軽減し、原料本来の風味を残したそば粉ができる)、あまり待たずに2階の座敷に通された。長弟夫婦は、夏限定のさっぱりメニュー、ゆずおろし蕎麦(揚げナスとゆす、大根おろし、大葉がトッピングされた涼の1品、850円)、私と次弟はおろし蕎麦とでんがく(木の芽おでん・こんにゃく5本と木の芽でんがく・豆腐3本)の越前セット(1270円)、ほかに山菜おにぎり2個(1個200円)やチーズ味噌でんがく(豆腐3本690円)もオーダーしたが、料理はなかなか来なかった。

福井市足羽山公園内にある石挽そばの名店、「木の芽屋」で福井名物おろしそばに舌鼓を打った。かつお節のたっぷり乗ったコシの強いそばに、ぴりっと辛味のある大根おろし入りつゆをぶっかけて戴く。

2階の座敷には初めて上がったが、窓ガラスから桜の青葉が見渡せ、なかなかいい雰囲気だ。昨春訪れた時は、1階の座敷だったが、4月下旬にもかかわらず、八重桜がまだ咲き残り、はらはらとピンクの花びらが散りこぼれる風情を楽しみつつ、福井名物のおろし蕎麦と、木の芽屋特製でんがくに舌鼓を打ったものだ。

しばらくしてようやく、料理が運ばれてきた。ゆず蕎麦からは、ゆずのいい香りがぷんと漂ってくる。大根の辛味がぴりっとくるおろし入りつゆに、たっぷりのかつお節の乗ったこしの強い風味豊かな石挽そば、甘味噌漬けの豆腐やこんにゃくも天下一品、初トライしたチーズでんがくもいけた。

腹ごしらえしたあとは、若狭湾に面する小浜市に向かう。人口約3万人の小さな港町には、国宝(明通寺)や国指定の重要文化財(お堂や仏像)が多く、「小京都」や「海のある奈良」の異名でも知られ、温泉もいいとかで、いつか訪ねてみたいと思っていた私は、格好の機会を得て感謝した。

今宵の宿は「ホテルせくみ屋」(福井県小浜市小浜白鬚113、0770-52-0020)だ。料理と天然温泉が売りの3ツ星ホテル(地上10階76室)で、宿泊歴のある次弟によると、小浜では有名らしい。チェックインの15時までにはまだ間があるので、長弟がネットで調べて途上猛暑にはもってこいの滝見物をすることにした。

1時間後、三方五湖(みかたごこ)レインボーライン(詳細は末尾1)の入口にある道の駅三方五湖で休憩、階段をあがった見晴らしのいい高台テラスから夏日に霞む5つの美しい湖、三方湖、水月湖(すいげつこ)、菅湖(すがこ)、久々子湖(くぐしこ)、日向湖(ひるがこ)が見渡せた(青色の濃度も水深・水質も様々、若狭湾国定公園内・国の名勝、ラムサール条約指定湿地)。

そこから車で20分程で瓜割の滝(うりわりのたき、詳細は末尾2)に到着、名前の由来は瓜が割れるほど冷たい、名水百選の透明でおいしい水が汲める浄水道が入口にあった。杉が鬱蒼(うっそう)と茂った山道を登っていくと、右手に天徳寺、奥に清流が現れた。滝といっても、規模の小さいものだったが、避暑にはもってこい、木に覆われた清流は冷たく、次弟は足を浸し始めた。触ると、水はひんやり冷たく、人心地つく思いだ。

小浜駅から徒歩10分、商店街を抜けた通り右手に建つ、料理と天然温泉が売りの「せくみ屋」正面玄関。2008年アメリカ総選挙でバラック・オバマが民主党候補として立候補して以来、地名との符合が話題になり、大統領に当選後は小浜の知名度もぐんとアップ、その名残りのオバマ元大統領の張り子像が玄関に、また等身大写真が今もロビーに飾られている。

何せ、冷房車の旅といえども、暑い。誰彼ともなく、暑い、暑いのぼやきが漏れていたから、滝への立ち寄りは大正解だった。出口に近い奥手に立派な鯉が泳ぐ池もあり、猛暑の中、格好の涼を得て車に戻った。

ちょうどいい時刻に、小浜駅を経由して、夕雅と旬彩の宿「ホテルせくみ屋」に到着、次弟がチェックイン手続きを済ませ(1泊2食付き税抜2万円、盆・正月以外の平常時は1万2000円)、8階の部屋に収まった。私と次弟はシングルと聞いていたが、用意された部屋はツインの広々としたもので、バルコニーからは素朴な家並みの向こうに小浜湾(日本海)が見下ろせる。久々に贅沢なホテルに泊まり、ご機嫌。

一服したあと、ホテル周辺の探索に乗り出す。夕食の18時30分までまだ2時間近くあるので、隙間時間を利用しての1人観光だ。歴史保存地区の町並み、格子戸・瓦屋根の旧家通り(小浜西組、詳細は末尾3)を過ぎて、海に出て、端まで歩いてみた。人魚の像が両側に2つあるマーメイドテラス(命名は人魚の肉を食べて800歳まで長生きした八百比丘尼に由来)から左脇の駐車場を横切って遊歩道に歩を進める。

桟橋に太公望が三々五々群れて、釣り糸を垂れている。そのうち家族連れ客の父親らしき人物がフグを釣り上げ、大喜びしていた。小さな浜に海水浴客はそんなに多くないが、突き当たりの崖までの間に公園広場もあり、海が好きな私にはいい散歩になった。

時計を見ると、18時10分、急いで宿に戻り、フリーWiFiでインド在住の息子に国際電話したあと、内線で催促されて15分遅れで2階の和式ダイニングルームに降りていくと、若狭の海の旬の素材を活かした豪勢な馳走が並べられていた。

みんなが部屋で休憩したり、天然温泉に浸かってのんびりしているのをしり目に、暑さのなごる中、海岸の端まで歩いてきたと言うと、呆れとも感嘆ともつかぬ反応を返された。歩くのが好きだからともごもごと弁明、皆ひと風呂浴びて浴衣姿のところ1人だけラフな旅装を解かず、しかし、健啖家の私は、痩せの大食いで、ご馳走に取り掛かった。

宿から5分で、昔の城下町の名残りの商家や茶屋街が軒を並べる一角に。白壁に格子戸、瓦屋根が風情を醸す西組伝統的建造物群保存地区だ。

和のオードブル、フグをはじめ刺身盛り合わせ、カレイの姿焼き、茶碗蒸し、フライドチキン、すき焼き、タコ入り釜飯、マンゴープリンのデザートまで盛りだくさん、瓶ビールで乾杯し、舌鼓を打った。

部屋に戻って、さっと内湯を浴びた後、1階の露天風呂(星空の湯)へ。あと30分で終い湯、ぎりぎりだ。お湯は熱かった。露天風呂といっても、高い天井がぶち抜いてあるだけで、竹の植え込みはあるが、雰囲気はイマイチ。こんなもんかと、熱いので、ナトリウム塩化物強塩泉との触れ込みの(関節痛や筋肉痛・神経痛に効く)、隣の若狭町・三方温泉から引いてきたという天然風呂を早々に引き上げた(結局4階の大浴場はパス)。

部屋に戻り、バルコニーに出て、漁火の灯る夜の海を愛でる。夕日もきれいだったが、灯りの乏しいこぢんまりとした港の夜景も乙なもの、小浜にはいつかは来たいと思っていたが、海のほかは何もない素朴さ、穴場的雰囲気が気に入った。格子戸の町家通り(西組)も風情があったし、奥の路地には国宝級のお寺や重要文化財指定の仏像が保存されたお堂がたくさんあるようだ。

福井県人ながら、初めて小浜を訪ねた私は近場とはいえ、すっかり旅気分に浸っていた。福井市内のホテルが空いておらず、次弟が探し回ってたまたま空いていたのが小浜のせくみ屋だったというが、おかげで旅情を味わえた。

明日は、遊覧船で海蝕洞・蘇洞門(そとも、詳細は末尾3)巡りをすることになっている。楽しみに、湯で温まった体をふかふかのベッドに横たえた。

せくみ屋の8階ツイン室のバルコニーから見下ろす小浜湾の夕暮れは美しかった。

※注釈(ウィキペディアから一部抜粋)
1.三方五湖レインボーラインは、福井県三方郡美浜町笹田から同県三方上中郡若狭町田井に至る、延長15.1822キロメートル、幅員6.9メートルから108.6メートル。かつては有料道路(道路運送法上の一般自動車道)だった。

2.瓜割の滝は、福井県三方上中郡若狭町の若狭瓜破名水公園にある湧水から生ずる滝で、1985年に名水百選に選ばれるとともに、輝きと優しさに出会えるまち若狭町として水の郷百選を代表する名水である。湧水の流量は1日当たり4500トン。水温が11.7度Cと冷たく、その冷たさで瓜が自然に割れたとの故事から「瓜割の滝」と呼ばれる。

泰澄大師(たいちょうたいし、682-767)が開いた天徳寺(真言宗)の境内奥の森中にある。滝周辺は元々「水の森」と呼ばれる修験者の修行地で、また朝廷の雨乞いを司る祈祷所だったとされる。

また、水中には紅藻(こうそう)植物のベニマダラが繁殖しており、「福井県のすぐれた自然」に選定され、県内で最大のベニマダラ繁殖地とされている。この繁茂により水中の石が赤く染まっており、「赤い石」という名物になっている。2015年3月、環境省名水百選選抜総選挙で「おいしさが素晴らしい名水部門」第2位の得票数を得た。

3.小浜西組(おばまにしぐみ)は、福井県小浜市西部に位置する、小浜市小浜西組伝統的建造物群保存地区の通称である。福井県小浜市の西部に展開する町並みで、丹後街道を中心に商家町・茶屋町・寺町で構成されている。近世城下町の街路や地割りをよく留めているとして、2008年6月9日に選定された。

4.蘇洞門(そとも)は、福井県小浜市東の内外海(うちとみ)半島にある、日本海に面した海岸景勝地。全長は6キロメートルに及び、一帯には洞門、瀑布、断崖が見られる。1934(昭和9)年に「若狭蘇洞門」という名称で国の名勝に指定された。1955年に指定された若狭湾国定公園に含まれる。

花崗岩の柱状節理が主に波に侵食されて形成されたものである。海蝕洞の大門(おおもん)、小門(こもん)をはじめ、夫婦亀岩、獅子岩、唐船島などの見所があり、遊覧船が運航されている。

(「インド発コロナ観戦記」は、92回から「インドからの帰国記」にしています。インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いてきましたが、92回からはインドからの「帰国記」として随時、掲載します。

モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。また、息子の「Rapper Big Deal」はラッパーとしては、インドを代表するスターです。

2023年8月30日現在(CoronaBoardによる)、世界の感染者数は6億9007万8604人(前日比6217人増)、死亡者数が690万5587人(26人増)、回復者数は6億2033万1669人(2912人増)。インドは感染者数が4499万7033人、死亡者数が53万1929人、回復者数が4446万358-2920人、アメリカに次いで2位になっています。

ちなみにアメリカの感染者数は1億0799万9006人(6217人増)、死亡者数が117万3448人(26人増)、回復者数は1億0591万8972人(2912人増)。日本は5月8日以降は1医療機関あたりの全国平均になっています。編集注は筆者と関係ありません)