蔦屋書店で駒嶺ちひろ展、再構成したキャラクターで多様性描く

【銀座新聞ニュース=2023年9月4日】書店やレンタル店、フランチャイズ事業などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(渋谷区南平台町16-17、渋谷ガーデンタワー)グループの銀座蔦屋書店(中央区銀座6-10-1、GINZA SIX、03-3575-7755)は9月29日までアートウォールで駒嶺ちひろさんによる個展「はらわたのいどころ」を開いている。

銀座蔦屋書店で9月29日まで開かれているで駒嶺ちひろさんの個展「はらわたのいどころ」に出品される「Shape of men No.42 オタク」(キャンバスに膠、ジェッソ、油彩、2023年)。

美術家、画家の駒嶺(こまみね)ちひろさんはキャラクターのぬいぐるみを解体し、新たなかたちとして再び縫い合わせ、それをモチーフとして平面に描くという表現行為を重ねることで、価値観の異なる人間のありようを描き出している。異様にも映る作品の姿は、よく見ると見知ったキャラクターが再構成されたものであり、そのいびつさによって、ひとつの物語に対して起きる、それぞれの価値観の多様さを表現している。

また、既成のキャラクターのぬいぐるみに糸を通し、リアルなヒトガタを作るドローイングを行った後、それをモチーフに油絵具でキャンバスに描くという技法を用いて、創作物と現実との関係性をテーマにした肖像画を描く「Shape of men(シェイプ・オブ・マン)」シリーズを制作している。

今回は、「はらわたのいどころ」と題して、「怒り」という感情に焦点が当てられている。これは、怒りを感じる臓器が、肉体的に、また精神的にどこに存在するかを探る試みで、ひとそれぞれの怒りを感じるポイントの違いを明らかにする行為という。今回の展示では、新作をふくむ平面作品と、その元となった立体作品23点を展示する。

銀座蔦屋書店で9月29日まで個展を開く駒嶺ちひろさん。

駒嶺ちひろさんはタイトルについて、「腸(はらわた)が煮え繰り返る」と「虫の居所が悪い」を掛け合わせて作った造語という。どちらも腹が立つ際の勘所に関係する言葉で、今回展示する「Shape of men」シリーズの目的である「価値観ごとに異なる人々の肖像を描く」というテーマを掘り下げるキーワードでもあるとしている。

駒嶺ちひろさんは「精神的なはらわたはどこにあるのか、他人と自分の考え方の違いに触れることで腹を立てたり納得したり、居心地が悪くなったりする際に感じる自身の勘所を、身体から拡張された自らの肖像の内臓として考える試み」と説明している。

駒嶺ちひろさんは1993年岩手県生まれ、2017年に愛知県立芸術大学美術学部油画専攻を卒業、2020年に東北芸術工科大学大学院工学研究科芸術文化専攻芸術総合領域を修了、2021年に「muni Art Award(ムニ・アートアワード)2021」で池永康晟(やすなり)さん、井浦歳和(としかず)さんの審査員賞、2023年に「オオサカアートフェスティバル2023」で入選している。

開場時間は10時30分から21時。入場は無料。一部の作品については、アートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術手帖」で9月4日12時から販売する。