丸善日本橋で伊賀焼の谷本洋「作陶40周年」展

【銀座新聞ニュース=2024年3月4日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・日本橋店(中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は3月6日から12日まで3階ギャラリーで「作陶40周年 伊賀 谷本洋陶展『作為と無作為の界』」を開く。

丸善・日本橋店で3月6日から12日まで開かれる「作陶40周年 伊賀 谷本洋陶展」に出品される「伊賀窯変茶わん(「宛」のう冠を外し、下に「皿」を加えた漢字で、ふたのない器を指す)」。

伊賀焼の陶芸家、谷本洋(よう)さんは「古伊賀(こいが)作品と父の谷本光生(こうせい)の作品と『守破離』の精神を踏まえ、自分のスタイルを作ろうと今まで土と火に向かい自分と対峙して」きた。1984年にヨーロッパにわたり、スペイン・バルセロナの造形作家のジョアン・ガルディ・アルティガス(Joan Gardy Artigas)さんの助手を務め、フランス・パリ郊外にアトリエを設け、作陶を始めてから40年が経った。「作陶40周年を迎え少しずつですが、独自の作品が生まれてきた」という作品を展示販売する。

ウイキペディアによると、「伊賀焼」は三重県伊賀市にて焼かれている陶器で、伊賀焼に使われる古琵琶湖地層の土は細かな気孔が多く、熱を蓄えることに優れており、中世に生産された「蹲(うずくまる)」でも知られている。

5世紀前後の発祥とされる伊賀焼の郷・伊賀市には、2021年時点に約50軒の窯元があり、中世の時代には伊賀市の槙山(まきやま)に近い五位ノ木窯跡(ごいのき・ようあと)などで周辺の豊富な陶土と薪の燃料を利用し、信楽焼に似た擂鉢(すりばち)や甕(かめ)、壺などが焼かれた。

その後、17世紀初めの桃山時代(1573年から1603年)には、伊賀国領主であった筒井定次(さだつぐ、1562-1615)や伊勢津藩の初代藩主、藤堂高虎(1556-1630)、2代目藩主、藤堂高次(1602-1676)の時代にお庭焼として武将茶人の古田織部(おりべ、1543-1615)らの指導によって、槙山の西光寺窯や丸柱の堂谷窯において、豪放で力強く破格な美意識を持った茶陶の水指や花入が焼かれた。

この時代の伊賀焼は「古伊賀(こいが)」といわれ、ヘラ工具を使用した波状の文様や格子状の押し型文様の他、ゆがみ、緑色のビードロ、灰かぶりや焦げ、鉄釉(てつゆう)を垂らすといった作為性の強い意匠が特徴とされている。

同じく出品される「伊賀耳付花入」。

伊勢津藩の3代目藩主の藤堂高久(1638-1703)が伊賀陶土の乱掘を防ぐ制度を設けた際、多くの陶工が信楽(しがらき、滋賀県甲賀郡)に移り、一時衰退するが、18世紀に入って藤堂高嶷(たかさと、1746-1806)が作陶を奨励したことで「再興伊賀」の時代を迎える。再興伊賀は施釉陶(せゆうとう、素地が土で成形後、素焼きした後、釉薬を掛けて焼成したもの)の日常雑器が中心となり、雪平鍋、土瓶、土鍋などが全国に広まった。明治期以降は、伊賀陶土の特性を生かした耐熱食器の生産が主流となり、産地としての基盤が固められた。1982年11月に国から伝統的工芸品の指定を受けている。

伊賀焼振興協同組合によると、中世の時代、伊賀焼は信楽焼と同じ擂鉢や甕、壺などが焼かれていたが、桃山時代になると伊賀焼は信楽焼と明らかに区別される作品が焼かれた。この時代の伊賀焼の茶陶の水指や花入の特徴として意識的に「ゆがみ」や「へこみ」を作り、ヘラ工具で波状の線を描き、「焦げ」や「緑色のビードロ」を付け、左右に一対の耳と呼ばれる装飾が施されることがあり、個性的な造形をしている。一方、信楽焼には、こういった作為性や装飾性が少なく単純な造形のため、「伊賀に耳あり、信楽に耳なし」といわれた。

谷本洋さんは1958年三重県上野市生まれ、1981年に京都府立陶工訓練校を修了、1982年に京都府立工業試験場を修了、伊賀焼三田窯にて父の谷本光生さん(1916年生まれ)のもと作陶生活に入る。1984年にフランスにわたり、パリにてデッサン・油絵を学び、スペインの造形作家のジョアン・ガルディ・アルティガス(Joan Gardy Artigas)さんの助手を務め、フランス・パリ郊外にアトリエを設け、作陶を始め、1988年に独立し、谷本洋陶房を開く。

1992年にスペイン・バルセロナのアルティガス財団に滞在して、作陶し、1995年にスペイン・カタロニア政府の援助のもと、アルティガス財団にてスペイン陶芸家を対象にセミナーを開き、同時に個展を開く。その後、毎年、バルセロナにて制作する。

1999年に英国ロンドンで個展、2002年に作陶20周年記念で、全国の百貨店にて個展を巡回、2003年にバルセロナのアルチガス財団に滞在し、作陶、2004年にアメリカ・ニューヨークにて個展、2008年にスペイン・バルセロナ陶磁器博物館にて講演会、バルセロナのアルチガス財団にて個展、2010年にパリにて個展を開く。

2012年から2013年に作陶30周年記念で日本橋三越本店を皮切りに全国百貨店で巡回、2014年に英国にて伊賀焼のセミナーとワークショップ、2017年と2018年にフランスにて伊賀焼のセミナーとワークショップ、2018年から2019年にかけて還暦記念として全国の百貨店にて個展を巡回している。現在、三重県伊賀市の工房「スタジオ 音土」(三重県伊賀市予野3616)にて作陶している。

開場時間は9時30分から20時30分(最終日は15時)。