インド、9月から封鎖解除、地下鉄再開、スポーツ、娯楽等も100人まで可能に(37)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年9月15日】8月29日、中央政府からアンロックダウン(都市封鎖解除)の指針が発表された。それによると、9月7日からメトロの営業再開、21日からはスポーツ、宗教、娯楽関係の集会は100人までなら許されることになった。

夜のルーフで月見中、地上の民家で刈った芝を焼いているのを目撃、煌々と照る銀月と、野焼きの橙の対照が美しく、見とれた。

また、全州とも、中央政府の許可なしには、封鎖(containment)ゾーン以外はロックダウン(都市封鎖)を継続できなくなった。つまり、グリーンゾーンの当地プリー(Puri)は、5カ月に及ぶ長すぎたロックダウンが解除されるということだが(レッドゾーン5地域での週末ロックダウンや夜間外出禁止令も1日から解除)、州全体で感染者数は既に10万人を突破しただけに、手放しで喜べない。

全土370万人近く、感染拡大に歯止めがかかったわけでなく、地方に蔓延中て、南隣のアンドラプラデシュ州(Andhra Pradesh、43万5000人)は、タミルナドゥ州((Tamil Nadu、42万8000人)を抜いてワースト2位に躍り出たばかり(1位は依然マハラシュトラ州=Maharashtra、州都は巨大港湾都市ムンバイ=Mumbai=で79万3000人)。

一説には、9月末にピークに達するとの見方もあるし、当州ワーストのガンジャム(Ganjam)地方は制御されつつあるとの朗報も伝わっているが、終息が未だ定かでない中、100人規模の集会を許可するのは、感染拡大に無用な拍車をかけそうで、案ぜられる。

それはさておき、9月に入り、めっきり秋の兆し、涼しくなって、海の色も清涼感のある爽やかさ、夕刻屋上に上ると、高い空に淡い満月、その周りを悠々と番(つがい)の鳶(とび)が舞っていた。

観光客がいなくなって、ひとけのほとんどない海は、ゴミも減って美しさを取り戻した。蝶やトンボが舞って、サンダル履きの素足に砂浜が熱く、潮に浸すと、ひんやり心地よかった。

気持ちよさそうに旋回してるのを見上げていると、こっちまで伸びやかな気持ちになって、羽があって自由に羽ばたける鳥はいいなぁと、人間が鳥に憧れた気持ちがひしひしと実感できた。

「コロナ囚人」の枷(かせ)から解放されて、渡り鳥になって母国まで飛び帰りたいとの思いが募り、帰巣本能が疼いた。

●身辺こぼれ話/移住地への愛に目覚める

インド在住の知人が、所用で当州都からコルカタ(Kolkata、西ベンガル州=West Bengal=の州都)まで飛んだ。折しもコロナ真っ盛り、道中の無事を懸念していたが、案ずるより産むが易し、空港の検温もすぐ済んだし、機内は空いていて快適、現地では、予約したホテルが超快適でサービス抜群、それもそのはず、普段なら3倍以上はする4つ星ホテル、コロナ禍で大幅ディスカウントしていたのだった。

しかも、いつもなら混沌としたカオスに満ちた喧騒の都会が、交通渋滞や大気汚染が解消され、爽やか快適、これがあの阿鼻叫喚のコルカタかと、180度の変わりざまにびっくりしたそうだ。

というわけで、いつになく、快適な旅を終えて帰ってきた知人は、ひどくご機嫌だった。コロナも、悪い側面ばかりではない。

屋上から見下ろした椰子と海の楽園、わが移住地プリー。コロナ禍で、ロストパラダイスが蘇った。

現に、当地も大気汚染や混雑が解消され、空気が清浄になって、椰子や海が生き生きしている。

昔の平和と静けさに満ちた楽園時代を彷彿させる変わりざま、失楽園の嘆かわしい変貌ぶりに嘆息していたのは、ついこの間のことだったのに。コロナが世界を変えた。地球環境という側面から見れば、間違いなくいい方向に変わっているのだろう。

蘇った楽園、移住地への今さらながらの愛情の目覚めに、一番驚いているのは何より私自身だ。

屋上から遠目に俯瞰(ふかん)していると、椰子林が潮風に放射状の葉を巨大なヒトデのように蠢かせ、その向こうにミルクブルーの海原、目にしみる純白の波、緑の合間を縫って開けるモザイクのような町並み、寺院の尖塔、風に乗って運ばれてくる祈りの唱歌、まさしくここが熱帯の楽園で、その昔この地にユートピアを夢見て移住を決意した我が原点に立ち帰る思いだった。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

9月9日現在、インドの感染者数は437万0128人、死亡者数が7万3890人、回復者が339万8844人、ついにブラジルを抜いて、アメリカに次いで、2位になっています。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています)

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