日本橋三越で天女像をプロジェクションで色変化、天野敏之が開発

【銀座新聞ニュース=2016年12月11日】日本橋三越本店(中央区日本橋室町1-4-1、03-3241-3311)は12月12日から29日まで本館1階中央ホールで「天女像」のプロジェクションマッピングを実施する。

日本橋三越で天女像をプロジェクションで色変化、天野敏之が開発

日本橋三越で天女像をプロジェクションで色変化、天野敏之が開発

本館1階中央ホールにある高さ11メートルの「天女(まごころ)像」を、音楽に合わせて、天女像全体がさまざまな色に変化し、「天女を囲む瑞雲(ずいうん)がたなびくような演出や、あたかも炎の中に立っているかのような色彩、雷雲(らいうん)に包まれているような光など」、特別なインスタレーションを楽しめるようにする。

富士通の子会社、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL、神奈川県川崎市中原区小杉町1-403、武蔵小杉タワープレイス、044-739-1511)と凸版印刷(千代田区神田和泉町1、03-3835-5111)、国立大学法人の「和歌山大学」(和歌山県和歌山市栄谷930、073-457-7007)システム工学部「天野研究室」の准教授、天野敏之(あまの・としゆき)さんが開発した質感表現を操作する技術を応用することにより実現した。

富士通SSLなどによると、従来のプロジェクションマッピング技法では、事前に対象物を3次元のデータとしてコンピュータが扱える形にモデリングする必要があるため、三越の天女像のように、複雑で大きな対象物では、技術や費用対効果の面などで実現が困難だったという。

それに対して、2012年10月から和歌山大学准教授を務める天野敏之さんが開発した技術は、対象物をリアルタイムにカメラで捉えることで、形状に関係なくプロジェクタから適切な色をマッピングすることができるという。これにより、豊かな質感表現操作が可能となり、空間全体をアート作品へと昇華する演出を行うことができるとしている。

今回はその実証実験で、天女像へさまざまな質感を感じさせる色彩を投影することで、光り輝く様子を、音楽に合わせリアルタイムに表現する。富士通SSLと凸版印刷は、それぞれの市場でインスタレーションによる演出ビジネスを2016年度内にはじめるとしている。

「天女像」(木彫、彩色)は本館1階中央ホールから、吹き抜けの5階に届くようにそびえる11メートルの壮大な天女の像で、完成したのは1960年。像は、三越のお客に対する基本理念「まごころ」を表現した像として「まごころ像」と呼ばれ、日本橋三越本店の象徴ともいえる存在として知られている。

三越が彫刻家の佐藤玄々(さとう・げんげん、1888-1963)に発注し、京都の妙心寺内にあるアトリエで、多くの弟子とともに構想、下絵、原形、試作を繰り返して、完成までに約10年の歳月をかけたとされている。1960年4月19日に除幕式が行われ、「天から舞い降りた天女が忽然(こつぜん)と現れる」という演出のもと、像全体を被っていた純白の布が落ちると、期せずして大きなどよめきがおこったという。

ウイキペディアによると、除幕式には社長(当時)の岩瀬英一郎(いわせ・えいいちろう、1894-1963)、作家の武者小路実篤(むしゃのこうじ・さねあつ、1885-1976)らのあいさつに続いて登壇した佐藤玄々は「私が佐藤であります」とひと言っただけで降壇した。このひと言は参列者に感銘を与えたという。

公開後、装飾過剰で量感にもとづく立体感が足りないとの批判もあがった。しかし、本像は日本古来の神道美術に見られる木彫彩色像に範を取り、「まごころ」の副題も日本民族固有の「大和心」を意味している。これに安土桃山時代から江戸時代にかけて宮彫り大工に引き継がれた木彫彩色技術を組み合わせることで、佐藤玄々は現代に日本の神話彫刻を復活させようとしたとされている。

2000年に修復工事が行われ、日本橋三越では「瑞雲(ずいうん)に包まれた天女が花芯に降り立つ瞬間の姿」は、今なお健在としている。

演出時間は各日16時、17時、18時に約3分間実施し、12日は12時も行う。また、29日に開かれる「第32回 三越の第九」(12時30分と14時30分)の演奏前にも演出を実施する。