インド、内相が陽性で首相も感染?、ボリウッドの帝王も(32)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年8月18日】8月3日5時、予定通りわが居住エリア(オディシャ州プリー=Odisha・Puri=CTロード)周辺のロックダウン(都市封鎖)が解除された。休業中の当ホテルに仮住まいしていた、甥ファミリーも、グランドバザール(Grand Bazaar)のジャガンナート寺院(Jagannath Mandir)の裏手にある彼らの居住エリアに戻った。

1970年代、ヒンディー映画界・ボリウッドで、一世を風靡したスーパースター、アミタブ・バッチャン(通称Big B)も、コロナに感染した。個人資産4億ドル(約400億円)と言われるムンバイの豪邸は封じ込めゾーンに。同業の子息、嫁、孫娘まで感染した。

すでに、このエリアの封鎖は解除されていたのだが、避難所のわがホテル周辺が密閉されたため、帰れずとどまる羽目を余儀なくされたのだ。まずは誰一人として感染することなく、無事住み慣れた我が家に戻れてほっとした。

メインロードのバイクや車の往来も増えたが、現実には州のロックダウンは依然続行中なので、コロナ前のような混雑振りからはほど遠い。

東インドに感染拡大していることはすでにお伝えしたとおりで、5日現在、アンドラプラデシュ州(Andhra Pradesh、17万6000人)が首都デリー(Delhi、13万9000人、4位のカルナータカ州=Karnataka=14万6000人に次ぐ5位)を追い越し、タミルナドゥ州(Tamil Nadu、26万8000人)に次いで、3位に踊り出た。ワーストは変わらず、マハラシュトラ州(Maharashtra、45万8000人)である。

次は、ビハール(Bihar、感染者6万2031人中死者349人)、オディシャ(感染者3万9018人中死者225人、プリー地方の実質陽性者は334人)とも言われているし、9月末に当州の感染者数は6万人を越す予想が出ている。

今現在、当州の実質陽性者数は、デリーの1万4000人とほとんど変わらない。デリーは、公表データだけ見ると、回復者数が高くて(12万5000人)、その意味でもそろそろ頭打ちで、今後は都市部から地方の蔓延が懸念される。

さて、日本でも報道されたと思うが、全土の感染者数が200万人近い勢いで拡大する中(191万人中回復者数128万人、死者数3万9795人)、アミット・シャー(Amit Anilchandra Shah、1964年生まれ)内相の陽性が発覚、モディ(Narendra Damodardas Modi、1950年生まれ)首相とは、首相がグジャラート州(Gujarat)首相だった時代からの緊密な関係で、濃厚接触者としての二次感染が懸念されている。イギリス、ブラジルに次ぐ国のトップ感染もありうる事態になったわけで、メディアがこぞってトップで取り上げた。

第2次モディ内閣の内務大臣を務めるアミット・シャー。インド人民党(BJP)の前総裁で、最高戦略責任者として、総選挙で党を圧倒的勝利に導いた。首相のなくてはならぬ右腕、陽性発覚による感染対策本部長の欠員は痛い。

個人的には、首相はヨガ信奉者で毎日実践しているし、感染に強い免疫力ができているはずなので、大丈夫と想像するが、こればかりはなんともいえない。しかし、感染対策の指揮を取っていた側近、なくてはならぬ右腕の陽性発覚は、寝耳に水のことで、さすがの鉄腕首相もぎくりとしたことだろう。

ヒンディ映画界・ボリウッド(Bollywood)の帝王、ベテランスーパースターのアミタブ・バッチャン(Amitabh Bachchan、1942年生まれ)も感染して、いまだに入院中だし、移動する機会の多いセレブリティの罹患も今後、増えそうだ。

●コロナ余話/空港の検疫局でPCRから抗原検査へ

常時、帰国者の空港での検査体験動画をチェックしている私だが、7月30日から、これまでの鼻孔に綿棒を突っ込んでのPCR検査から、唾液採取の抗原検査に変わり、時間短縮でその日のうちに結果が通達されることになったのを知った。

朗報だが、政府が無料で用意してくれる、結果が出るまでの2夜のホテル代が浮かない顛末になったわけで、自費で丸々14泊分アレンジしなければならなくなった。

しかも、インドの場合、臨時便は、デリー発羽田着の日本航空便(往路のみ)、羽田周辺で自主隔離のためのホテルを当たらなければならなくなったので、成田周辺ばかり調べていた私は拍子抜け。

有名なホテルチェーンがいくつかあるようだが、これから帰国者が増えてくると、空室があるのかと心配になる。唾液で調べられるようになったのは、検査される側としてもうれしいが、マレーシア在住のミュージシャン、ガクト(GACKT)が出している動画によると、空港での検査手順がお粗末で、延々6時間以上も待たされたそうだ。

待機場所も、トイレもないような、椅子がばらばら置かれただけの場所で、座れない人たちは、ショーウインドウのへりに腰掛ける羽目に陥らされたようだ。しかも、ソーシャル・ディスタンスがとられておらず、密になっていたとか。

ちょうど検査法が変わった当日に着いたせいもあったと思うが、事務局は対応に追われて大変だと一応ねぎらいながらも、不手際に対する苦情を洩らしていた。私が帰るころには、改善されていることを祈るばかりだ。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

8月13日現在、インドの感染者数は239万6637人、死亡者数が4万7033人、回復者が169万5982人、アメリカ、ブラジルに次いで3位になっています。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています)