丸善丸の内で横尾英子「昭和天皇実録」と「平成歌会始集」展

【銀座新聞ニュース=2019年3月25日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・丸の内本店(千代田区丸の内1-6-4、丸の内オアゾ内、03-5288-8881)は3月27日から4月2日まで4階ギャラリーで横尾英子さんによる「昭和天皇実録完結」と「平成歌会始全歌集」刊行記念展を開く。

丸善・丸の内本店で3月27日から4月2日まで開かれる横尾英子さんの「昭和天皇実録完結」と「平成歌会始全歌集」刊行記念展に出品される作品。

日本画家の横尾英子(よこお・えいこ)さんが、1990年から宮内庁書陵部が編集をはじめ、2014年8月に完成、今上天皇、皇后に奉呈された「昭和天皇実録」(東京書籍、税別1890円、60巻)が東京書籍から刊行され、全19冊(18冊、索引1冊)の帯画を全面的に担当し、4月12日に装丁挿画を手がけた「平成歌会始全歌集」(東京書籍、税別1700円)が刊行されるのを記念して、実録や歌集の作品を中心に、新作や未発表作品約40点を展示する。

ウイキペディアなどによると、天皇実録は明治以後、第121代の孝明天皇(こうめい・てんのう、1831-1867)から代々の天皇について宮内省で作られており、この事業は現在の宮内庁にも継承されている。「孝明天皇紀」と「明治天皇紀」は完成後にその存在が公にされたが、大正天皇(たいしょう・てんのう、1879-1926)に関する「大正天皇実録」(全85巻)は1927(昭和2)年から1937(昭和12)年にかけて編さんされていたものの、長らく公表されず宮内庁において情報公開の対象外とされていた。

このため「大正天皇の健康問題が関わっているのではないか」などのさまざまな憶測が唱えられ、2001年になって、情報公開・個人情報保護審査会が非公開を不当とする判断を下し、宮内庁も編さんの事実を認めた。このため、2002年、2003年および2008年に第48巻以降、また第1巻から47巻までが2011年に一部黒塗りで公開された。

「昭和天皇実録(61巻、1万2137ページ)」も宮内庁によって1990年から編さんが進められ、24年後の2014年に編さんが完了し、同年8月21日に今上天皇に奉呈されたことが宮内庁より公表され、2015年より5年間かけて順次刊行されることとなった。2015年3月から2018年3月までに東京書籍で刊行されている(全18冊で、別巻・総索引は2019年3月刊予定)。

また、「昭和天皇実録」が黒塗りなしで公刊されているのに対し、「大正天皇実録」について、NHKが同じ基準で公開するよう宮内庁へ申請し、その結果、2015年6月27日に黒塗りされた部分の約8割が公開され、非公開部分は全体の0.5%になった。2016年12月より、ゆまに書房で補訂版(岩壁義光=いわかべ・よしみつ=さんが補訂、全6巻・別巻1、2021年12月完結予定)が刊行されている。

宮内庁によると、「歌会」は人が集まって共通の題で歌を詠み、その歌を披講する会を「歌会」といい、すでに奈良時代に行われていたことは「万葉集」によって知ることができる。この中で、天皇がお催しになる歌会を「歌御会(うたごかい)」という。宮中では年中行事としての歌会などのほかに、毎月の月次歌会(つきなみのうたかい)が催されるようにもなり、これらの中で、天皇が年の始めの歌会として催す歌御会を「歌御会始(うたごかいはじめ)」と呼んでいる、

「歌会始」(歌御会始)の起源は,必ずしも明らかではないものの、鎌倉時代中期、亀山天皇(かめやま・てんのう、1249-1305)の1267(文永4)年1月15日に宮中で歌御会が行われており(「外記日記」が「内裏御会始」と明記)、以後、年の始めの歌御会として位置づけられている。

歌御会始は、江戸時代を通じほぼ毎年催され、明治維新後も1869(明治2)年1月に明治天皇(めいじ・てんのう、1852-1912)より即位後、最初の会が開かれ、以後、改革しながら今日まで連綿と続けられている。1874(明治7)年には一般の詠進が認められ、皇族、貴顕(きけん、身分が高く、名声のある人)、側近などだけでなく、国民も宮中の歌会に参加できるようになった。

1879(明治12)年には一般の詠進歌のうち、特に優れたものを「選歌」とし,歌御会始で披講された。1882(明治15)年から、御製を始め選歌までが新聞に発表され、1884(明治17)年から官報に掲載された。

1926(大正15)年に「皇室儀制令」が制定され、その附式に歌会始の式次第が定められ。これにより、古くから「歌御会始」といわれていたものが、以後は「歌会始」とした。しかし、同年12月に大正天皇(たいしょう・てんのう、1879-1926)崩御のため1927(昭和2)年には歌会始は行われなかったので、実際に歌会始と呼ばれたのは1928(昭和3)年からとなった。

大東亜戦争後は、宮内省に置かれていた「御歌所(おうたどころ)」が廃止され、在野の歌人に選歌が委嘱(いしょく)された。また、広く一般の詠進を求めるため、題は平易なものとされた。預選者は式場への参入が認められ、天皇、皇后の拝謁や選者との懇談の機会が設けられるようになった。

召人(めしうど)は広く各分野で活躍、貢献している人が選ばれ、陪聴者の範囲や人数を拡大し、テレビの中継放送も導入されて、さらに多く人が歌会始に親しむことができるようになった。毎年1月の歌会始の儀では,天皇、皇后の前で、一般から詠進して選に預かった歌、選者の歌、召人の歌、皇族の歌、皇后の御歌(みうた)と続き、最後に天皇の御製(ぎょせい)が披講(ひこう)される。

「平成歌会始全歌集」は新年を祝う宮中の伝統行事「歌会始」が2019年1月16日でもって平成最後となり、今上天皇と皇后が平成時代の歌会始で詠んだすべての和歌をとおして、両陛下の気持ち、国民への思いをたどっている。

横尾英子さんは1960年東京都生まれ、1983年に東京芸術大学美術学部絵画科日本画専攻を卒業、院展に初入選、1985年に同大学大学院美術学部を修了、院展出品作をそごう美術館が買い上げ、1987年に春の院展出品作を外務省が買い上げ(1990年も)、1990年に有芽の会「全国更生保護婦人連盟賞」作品を法務省買い上げ、2001年から銀座で個展、2015年に「昭和天皇実録」の1巻から4巻の帯の原画を担当している。

開場時間は9時から21時(最終日は16時)で、入場は無料。