インド、新規1日8万5000人超に、休業のホテルで野菜栽培(36)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年9月8日】感染拡大に歯止めがかからず、うなぎ上りのインドだ。昨日8月28日は1日の感染者数が8万5000人超と(世界1位)、またもや最多記録を更新した。本日、全土の感染者数は350万人弱だが、新規感染者数を加えると、既に突破している。

8月22日からのガネーシャ祭では、夜になっても、車やバイクの往来が途絶えなかった。

この調子でいくと、年末には1000万人台もありえ、世界ワーストになるのも、時間の問題になってきた。近々、ブラジルを抜いてワースト2位に躍り出ることは間違いない。

とはいえ、人口比率からいえば、感染者数は欧米に比べ、ずっと少なく、回復率が高く致死率が低いのが唯一の救いだ。当オディシヤ(Odisha)も本日9万5000人弱、予測通り8月末には10万人突破は確実だ。

ひとつには、全土の検査能力が92万回と高まっていることも挙げられ、他には州間移動がフリーパスになったこと、あとは8月22日からのガネーシャ祭で人の往来が増えたことが、近々(きんきん)の急増に繋がっているようだ。

当地でも、お祭り以来、往来が増え、車や人の行き来が盛んになりだした。祭り前の2倍くらいの人出があり、懸念されるが、5カ月も自粛を強いられたら、誰だって羽目を外したくなるもので、その気持ちはわからなくもない。特に賑やかなことが好きな国民性だけに、長いロックダウン(都市封鎖)に食傷して、ガネーシャ祭を口実に一気に噴き出したということで、お上だって止められない。

田舎で畑作りを学んだという甥が植えたゴーヤ。私は青汁ジュースにして、飲むのが定番。苦いが、ヨガでは万病に効く健康ドリンクだ。

とはいえ、おとといの夕刻、浜に出たとき、クリケットに興じる子どもたちや、海辺で群れる人が多めなことに、神経を尖らせざるを得ない当方だった。

物乞いの子どもが寄ってきたときは、素早く逃げたか、この時間帯に浜に出るのはやめようと、我が身を戒めた次第だった。

年内帰国の希望は捨てたわけでないが、見通しが立たない今、やや諦めの境地、無理をせず、流れに任せようとの気持ちに変わっている。

●コロナ余話/食糧危機に備え、自給自足の試み

休業要請中のホテルの敷地を利用して、畑作りを始めた。以前から、トマトや、バナナ、パパイヤなどは自生し、収穫を楽しんできたが、近年は枯れたり、サイクロンでの倒木で、市販野菜やフルーツで賄っていたのだ。

年初に甥がほうれん草を自生させ、久々に有機野菜を味わったことに味を占め、コロナ下の今こそ、自給自足だと思いたち、甥に来たる食糧危機に備えての野菜栽培を指示、早速動いてくれたのだ。

インドでは、カリーの中身に使われるオクラ。私は茹でて、カツオじょう油でいただく。粘りがあって精がつく健康にもいい野菜だ。

トマトやナス、ゴーヤ、オクラなどのほかに、マッシュルーム栽培にも成功、自家製キノコは超美味で、フライドライス(チャーハン)やカツレツ(コロッケ)、マッシュドポテトの具材に大活躍、缶詰と違ってフレッシュで、ユーチュ-ブ(YouTube)動画で栽培法を学び、トライしたという甥を絶賛した次第だ。

枯れてしまったバナナも、復活できないかとそそのかしている。ちなみに、自家製バナナは、陽の温みのこもったふっくらとした芳醇さ、ほっぺたが落ちるおいしさだ。

現地語て「トゥルシー」と言われるセイントバジル(ヒンドゥ教では聖なる植物)は、鉢植えにして、ハーブティーや、パスタ、ピザに少量使って重宝している。

●身辺こぼれ話/裕次郎映画にハマる

ステイホームの気晴らしに日本の往年の名画やドラマを堪能していることは、お伝えした通り。ユーチュ-ブ(YouTube)にアップされた動画で、これまでインド滞在で見逃した伝説のトレンディドラマ、「東京ラブストーリー」(1991年フジテレビ系)も全編観たし、倉本聰(くらもと・そう)脚本の名ドラマ「前略おふくろ様」(1975年から1977年、日本テレビ系)も、1・2共に堪能した。

何を隠そう、私は、グループサウンズ・テンプターズのボーカル時代からのショーケン(萩原健一=はぎわら・けんいち、1950-2019=、同ドラマで主演)のファンで、故人を偲ぶ意味でも、感慨深かった。

最近、観たのは、石原裕次郎(いしはら・ゆうじろう、1934-1987)&北原三枝(きたはら・みえ、現石原まき子)、往年の名コンビ主演の、「陽の当たる坂道」(1958年、日活)。石坂洋次郎(いしざか・ようじろう、1900-1986)原作だけに、超面白く、裕次郎のやんちゃな感じが魅力的で、清潔感のある理知的かつ可愛らしい当時のスーパースター・北原三枝(後の裕次郎の妻)のドル箱ペアはサイコーだった。

私は裕次郎全盛時代とは少しずれるのだが、大衆が熱狂した理由がかいま見えた思いだった。北原三枝の、今でも通用するモダンさ、小柄ながらスタイルの良さ、にも感激した。

併せて、細切れでアップされていたドラマ「弟」(2004年、テレビ朝日系、石原慎太郎=いしはら・しんたろう=原作の他界した弟・裕次郎を偲んだドキュメンタリー)も楽しんだ。中年以降の石原夫妻を演じるのは、三浦友和(みうら・ともかず)と松坂慶子(まつざか・けいこ)である。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

9月4日現在、インドの感染者数は393万6747人、死亡者数が6万8472人、回復者が303万7151人、アメリカ、ブラジルに次いで3位になっています。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています)