シネパトスで女性映画の名手成瀬巳喜男、仏誌が4巨匠に

【銀座新聞ニュース=2012年5月20日】銀座シネパトス(中央区銀座4-8-7先、三原橋地下街、03-3561-4660)は5月27日から7月13日まで「庶民の哀歓を描きつづけた名匠・成瀬巳喜男」を開催する。

銀座シネパトスが2009年から開催している「日本映画レトロスペクティブ」シリーズのひとつで、今回は「女性映画の名手」といわれ、フランスの映画誌「カイエ・デュ・シネマ」に小津安二郎(おづ・やすじろう、1903-1963)、溝口健二(みぞぐち・けんじ、1898-1956)、黒沢明(くろさわ・あきら、1910-1998)に次ぐ日本の「第4の巨匠」と評された映画監督の成瀬巳喜男(なるせ・みきお、1905-1969)の作品24本を特集上映する。

ウイキペディアなどによると、成瀬巳喜男は1905年8月20日東京府(現東京都)四谷生まれ、工手学校(現工学院大学)を中退し、1920年に松竹蒲田撮影所に入社、小道具係、助監督を経て1930年に「チャンバラ夫婦」で監督デビューした。最初はドタバタ喜劇を手がけていたが、1931年に「腰弁頑張れ」で注目を集める。

しかし、監督に昇格しても個室も与えられず、大部屋暮らしが続き、1934年にPCL(東宝の前身)に移籍し、1935年に初トーキー映画「乙女ごころ三人姉妹」を監督、「妻よ薔薇(ばら)のやうに」で「キネマ旬報」ベスト1に選ばれ、「キミコ(Kimiko)」という英題で1937年にニューヨークで封切られ、アメリカで興行上映された初の日本映画となった。「妻よ薔薇のやうに」の主演女優の千葉早智子(ちば・さちこ、1911-1993)と1937年に結婚するが、1940年に離婚した。

1937年に「雪崩」で黒沢明が助監督を務めた。戦争直後は民主主義路線映画の監督を余儀なくされ、東宝争議によって東宝撮影所の機能が麻痺したため、山本嘉次郎(やまもと・かじろう、1902-1974)、黒沢明らと共に東宝を離れ、「映画芸術協会」を設立、フリーの立場で東宝、新東宝、松竹、大映などで監督し、1955年に東宝に復帰後、「浮雲」を監督し、成瀬の最高傑作とされている。

純文学作品から大衆作品まで幅広いジャンルにわたる文芸映画を中心に、人間の細やかな情感を何気ないやりとりで描いた。遺作は1967年の「乱れ雲」で直腸がんにより死去した。生誕100周年にあたる2005年にDVDボックスのリリースや関連書籍の出版、各地の名画座での特集上映などが行われた。

上映される作品と日程は以下の通り(カッコ内は公開年、主な出演者、色彩、上映時間)。
5月27日から5月30日が「稲妻」(1952年、高峰秀子=たかみね・ひでこ、1924-2010=、白黒、88分、ニュープリント)と「めし」(1951年、上原謙=うえはら・けん、1909-1991=、白黒、97分)。

5月31日から6月3日が「流れる」(1956年、山田五十鈴=やまだ・いすず=さん、白黒、116分)と「晩菊」(1954年、杉村春子=すぎむら・はるこ、1906-1997=、白黒、101分)。

6月4日と6月7日が「浮雲」(1955年、高峰秀子、白黒、123分)と「夫婦」(1953年、上原謙、白黒、86分)。

6月8日から6月11日が「あらくれ」(1957年、高峰秀子、白黒、120分)と「妻の心」(1956年、高峰秀子、白黒、98分)。

6月12日から6月15日が「おかあさん」(1952年、田中絹代=たなか・きぬよ、1909-1977=、白黒、98分)と「妻」(1953年、上原謙、白黒、96分)。

6月16日と6月19日が「女が階段を上る時」(1960年、高峰秀子、白黒、111分)と「女の座」(1962年、高峰秀子、白黒、111分)。

6月20日から6月23日が「山の音」(1954年、原節子=はら・せつこ=さん、白黒、94分)と「驟雨」(1956年、原節子さん、白黒、90分)。

6月24日から6月27日が「いわし雲」(1958年、淡島千景=あわしま・ちかげ、1924-2012=、カラー、129分)と「杏っこ」(1958年、香川京子=かがわ・きょうこ=さん、白黒、109分)。

6月28日から7月1日が「ひき逃げ」(1966年、高峰秀子、白黒、94分)と「女の歴史」(1963年、高峰秀子、白黒、126分)。

7月2日から7月5日が「娘・妻・母」(1960年、原節子さん、カラー、122分)と「夜の流れ」(1960年、司葉子=つかさ・ようこ=さん、カラー、111分)。

7月6日から7月9日が「乱れる」(1964年、高峰秀子、白黒、98分)と「放浪記」(1962年、高峰秀子、白黒、123分)。

7月10日から7月13日が「乱れ雲」(1967年、加山雄三=かやま・ゆうぞう=さん、カラー、107分)と「女の中にいる他人」(1966年、小林桂樹=こばやし・けいじゅ、1923-2010=、白黒、101分)。

料金は一般1300円、シニア1000円。トークイベント付は前売りが1300円、当日が1500円、ぴあリザーブシート座席指定券が1700円。